どんな選択肢を選んでも失敗エンドを迎える現代学園物乙女ゲームのヒロインになりましたが、ハッピーエンドを目指したいと思います!

春音優月

文字の大きさ
上 下
3 / 44

3話 完全に詰んでる

しおりを挟む
 二十七才にもなって、親に八つ当たりとか。
 情けないにもほどがある。
 
 ベッドの上でゴロゴロしながらSNSを眺めていると、キラキラした報告ばかりで余計に気分が重くなった。
 
『元気な女の子が生まれました』
『退職して、ずっと夢だったネイリストになりました』
 
 大学を卒業して四年。
 数少ない友達や、友達と呼べるか分からない同級生たちは、みんな自分の足でちゃんと立って歩いてる。
 
 結婚して子どもを生んだり、仕事で昇進したり、転職して夢を叶えたり。
 
 一方私は、職ナシ。彼氏ナシ、子ナシ。
 親に迷惑をかけるだけの厄介者。
 完全に詰んでるよね。
 ゲームみたいに、もう一回人生をやり直せたらな……。
 
 気晴らしにゲームをやってみても、また「俺は好きじゃない」とフラれてしまった。本当に情けないよね、ゲームにまで見捨てられるなんて。
 
 何もかも上手くいかない。
 自分の不甲斐なさに嫌気が差すのと同時に、だんだんムカついてきた。何で楽しむためのゲームでまで、ストレス溜めなきゃいけないの?
 
 苛立ちに任せ、ゲームを購入した通販サイトで低評価をつけた。
 
『☆1  バッドエンドしかありません。お金を返してほしい』
 
 それだけでは腹の虫がおさまらず、お気持ち表明メールをしたためる。
 
 乙女ゲームなのにバッドエンドしかないのなら事前に告知してほしかったこと、もしもバグでハッピーエンドにならないのなら何らかの対応をしてほしいこと、無職でゲームソフトを買うのは厳しい出費だったこと。
 
 後半は、どう考えても私の自業自得なような気もするけども。イライラして書き殴ったものを見直しもしないで、ゲーム会社に送りつけた。
 
 ◇
 
 それから一週間が過ぎ、相変わらず私は無職生活を送っていた。ちなみに、再就職の面接は当然のように落ちた。
 
 ボーッとスマホを眺めて時間を無駄にしていると、新着メールが届く。
 
『花井杏様
先日は貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました』
 
 メールを開封したら、この前私が長文で抗議メールを送ったゲーム会社からだった。
 
『つきましては、弊社開発中のゲームソフトのデバッグをお願い出来ないでしょうか。
花井様の鋭い考察や着眼点の素晴らしさを見込み、ぜひお仕事をお願いしたいと思いました』
「お仕事……。へ? え? お仕事?」
 
 どうせ定型コピペなんだろうなと流し読みしていたのに、信じられないようなことが書いてあって、目を疑ってしまう。
 
「どういうこと?」
 
 適当に読んでいたメールをもう一度じっくり読むと、ざっくりとした仕事の説明が書かれていた。
 
 仕事内容は、ゲームのデバッグ。
 つまり、発売前のゲームを実際にプレイして、不具合がないか、誤字脱字がないかなどを確認するお仕事。
 
 仕事は住み込みで、最短で一年~最長で二年。
 報酬もしっかり書かれていて、私の年齢にしてはかなり良い方だった。
 
 なんか、……すっごく、あやしいな。
 怒りの長文メールを送りつけたオタクをスカウトする?

 それに、ゲームのデバッグはやったことないけど、こんなにもらえるものなのかな。しかも、ゲームのデバッグで住み込みって。これって、もしかして詐欺なのかな。
 
 ツッコミどころだらけだったけど、もし本当に大好きなゲームの制作に関われるのなら最高だよね。ゲームのデバッグなら人と接することも少ないだろうから、コミュ障の私にもピッタリな仕事だし。
 
 悩んだ末、『もう少し詳しくお話を伺えませんか』と返信することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。

まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」 そう言われたので、その通りにしたまでですが何か? 自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。 ☆★ 感想を下さった方ありがとうございますm(__)m とても、嬉しいです。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...