どんな選択肢を選んでも失敗エンドを迎える現代学園物乙女ゲームのヒロインになりましたが、ハッピーエンドを目指したいと思います!

春音優月

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3話 完全に詰んでる

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 二十七才にもなって、親に八つ当たりとか。
 情けないにもほどがある。
 
 ベッドの上でゴロゴロしながらSNSを眺めていると、キラキラした報告ばかりで余計に気分が重くなった。
 
『元気な女の子が生まれました』
『退職して、ずっと夢だったネイリストになりました』
 
 大学を卒業して四年。
 数少ない友達や、友達と呼べるか分からない同級生たちは、みんな自分の足でちゃんと立って歩いてる。
 
 結婚して子どもを生んだり、仕事で昇進したり、転職して夢を叶えたり。
 
 一方私は、職ナシ。彼氏ナシ、子ナシ。
 親に迷惑をかけるだけの厄介者。
 完全に詰んでるよね。
 ゲームみたいに、もう一回人生をやり直せたらな……。
 
 気晴らしにゲームをやってみても、また「俺は好きじゃない」とフラれてしまった。本当に情けないよね、ゲームにまで見捨てられるなんて。
 
 何もかも上手くいかない。
 自分の不甲斐なさに嫌気が差すのと同時に、だんだんムカついてきた。何で楽しむためのゲームでまで、ストレス溜めなきゃいけないの?
 
 苛立ちに任せ、ゲームを購入した通販サイトで低評価をつけた。
 
『☆1  バッドエンドしかありません。お金を返してほしい』
 
 それだけでは腹の虫がおさまらず、お気持ち表明メールをしたためる。
 
 乙女ゲームなのにバッドエンドしかないのなら事前に告知してほしかったこと、もしもバグでハッピーエンドにならないのなら何らかの対応をしてほしいこと、無職でゲームソフトを買うのは厳しい出費だったこと。
 
 後半は、どう考えても私の自業自得なような気もするけども。イライラして書き殴ったものを見直しもしないで、ゲーム会社に送りつけた。
 
 ◇
 
 それから一週間が過ぎ、相変わらず私は無職生活を送っていた。ちなみに、再就職の面接は当然のように落ちた。
 
 ボーッとスマホを眺めて時間を無駄にしていると、新着メールが届く。
 
『花井杏様
先日は貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました』
 
 メールを開封したら、この前私が長文で抗議メールを送ったゲーム会社からだった。
 
『つきましては、弊社開発中のゲームソフトのデバッグをお願い出来ないでしょうか。
花井様の鋭い考察や着眼点の素晴らしさを見込み、ぜひお仕事をお願いしたいと思いました』
「お仕事……。へ? え? お仕事?」
 
 どうせ定型コピペなんだろうなと流し読みしていたのに、信じられないようなことが書いてあって、目を疑ってしまう。
 
「どういうこと?」
 
 適当に読んでいたメールをもう一度じっくり読むと、ざっくりとした仕事の説明が書かれていた。
 
 仕事内容は、ゲームのデバッグ。
 つまり、発売前のゲームを実際にプレイして、不具合がないか、誤字脱字がないかなどを確認するお仕事。
 
 仕事は住み込みで、最短で一年~最長で二年。
 報酬もしっかり書かれていて、私の年齢にしてはかなり良い方だった。
 
 なんか、……すっごく、あやしいな。
 怒りの長文メールを送りつけたオタクをスカウトする?

 それに、ゲームのデバッグはやったことないけど、こんなにもらえるものなのかな。しかも、ゲームのデバッグで住み込みって。これって、もしかして詐欺なのかな。
 
 ツッコミどころだらけだったけど、もし本当に大好きなゲームの制作に関われるのなら最高だよね。ゲームのデバッグなら人と接することも少ないだろうから、コミュ障の私にもピッタリな仕事だし。
 
 悩んだ末、『もう少し詳しくお話を伺えませんか』と返信することにした。
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