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Stage3 敵か味方か
story39 生きていてほしい
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「よく知らないけどさ、資金だけ手に入れて終わりじゃなくて、その後が肝心なんじゃないの?
やることがいっぱいあるって自分で言ってたのに、村の未来は他のやつに丸投げする気なんだ?」
ネリに対してかける言葉もなく黙っていたけど、その代わりに千明が口を挟んだ。寝ていると思ってたのに、しっかり話は聞いていたみたい。
それはいいんだけど、ネリは真剣に話してるのにそんな茶化すような言い方はないと思う。
「あのね、ネリがどんな気持ちで言ったと思う? 何も知らないのに、そんな言い方はないんじゃない?」
「そうだよ、何も知らない。知ってたら、逆に言えないよ。知らないからこそ言うんじゃん。俺は自分の考えを言っただけ。それ聞いてどう判断するかはネリの自由だし」
「千明の言いたいことも分かるけど、そんなに簡単なことじゃないよ」
「なになに? 簡単なことじゃなかったら、自分の考えを口にしちゃいけないんだ?」
「そういうわけじゃないけど」
妙に煽ってくる千明にちょっとイラッとして真顔になっちゃったけど、千明はそんな私の顔を見て、にっと笑顔を浮かべる。
「生きて帰れるかなんて誰にも分からないけど、俺は誰にも死んでほしくないし、もちろんネリにも死んでほしくない。だからさ、生きてても死んでもどっちでも良いなんて言ってほしくないし、言わせたくないんだよ」
私が言いたくても言えなかったことを、何でもないことのように軽く口にした千明に息をのむ。
みんな生きて帰れるなら、そっちの方がいいに決まってる。でも、そんなに上手くいくはずがないってなんとなく決めつけてしまっていた。それに、ネリの苦しみを知らない私が軽々しく口を挟んでいい問題でもない気がしたんだ。
それなのに、千明は私の越えることのできないハードルを簡単に越えるんだね。
それが良いことなのか悪いことなのかは分からなかったけど、素直に気持ちを言葉にして伝えることが出来る千明を少し羨ましく感じた。
「もし俺が生きてたら、俺にも村の復興を手伝わせてよ。俺一人じゃ何していいか分からないし、ネリが死んでたら困るんだけど」
「……私もっ。私にも手伝わせて」
そんなことを言い出した千明にすかさず便乗すると、ネリの表情が少しだけ和らぐ。
「なるべく死なないように努力する。だから、お前らも死ぬな」
「なるべくじゃ困るんだけどな。まいっか。生きて、みんなで一緒に地球に帰れるようにがんばりますか」
相変わらずヘラヘラしている千明にこくりと頷くと、今まで動いていた車がちょうど止まった。
「ついたぞ」
運転席にいたケニア人がそう言って車を降りると、私たちの前の席に座っていた人たちが降りるのを待ってから、最後尾の私たちも車から降りる。
外は強風、未来は深い闇の中。
これから先何が待っているのかも分からない。それでも、たったひとつの希望まで吹き飛ばされてしまわないように心の中で祈りながら、そっとドアを開けた。
やることがいっぱいあるって自分で言ってたのに、村の未来は他のやつに丸投げする気なんだ?」
ネリに対してかける言葉もなく黙っていたけど、その代わりに千明が口を挟んだ。寝ていると思ってたのに、しっかり話は聞いていたみたい。
それはいいんだけど、ネリは真剣に話してるのにそんな茶化すような言い方はないと思う。
「あのね、ネリがどんな気持ちで言ったと思う? 何も知らないのに、そんな言い方はないんじゃない?」
「そうだよ、何も知らない。知ってたら、逆に言えないよ。知らないからこそ言うんじゃん。俺は自分の考えを言っただけ。それ聞いてどう判断するかはネリの自由だし」
「千明の言いたいことも分かるけど、そんなに簡単なことじゃないよ」
「なになに? 簡単なことじゃなかったら、自分の考えを口にしちゃいけないんだ?」
「そういうわけじゃないけど」
妙に煽ってくる千明にちょっとイラッとして真顔になっちゃったけど、千明はそんな私の顔を見て、にっと笑顔を浮かべる。
「生きて帰れるかなんて誰にも分からないけど、俺は誰にも死んでほしくないし、もちろんネリにも死んでほしくない。だからさ、生きてても死んでもどっちでも良いなんて言ってほしくないし、言わせたくないんだよ」
私が言いたくても言えなかったことを、何でもないことのように軽く口にした千明に息をのむ。
みんな生きて帰れるなら、そっちの方がいいに決まってる。でも、そんなに上手くいくはずがないってなんとなく決めつけてしまっていた。それに、ネリの苦しみを知らない私が軽々しく口を挟んでいい問題でもない気がしたんだ。
それなのに、千明は私の越えることのできないハードルを簡単に越えるんだね。
それが良いことなのか悪いことなのかは分からなかったけど、素直に気持ちを言葉にして伝えることが出来る千明を少し羨ましく感じた。
「もし俺が生きてたら、俺にも村の復興を手伝わせてよ。俺一人じゃ何していいか分からないし、ネリが死んでたら困るんだけど」
「……私もっ。私にも手伝わせて」
そんなことを言い出した千明にすかさず便乗すると、ネリの表情が少しだけ和らぐ。
「なるべく死なないように努力する。だから、お前らも死ぬな」
「なるべくじゃ困るんだけどな。まいっか。生きて、みんなで一緒に地球に帰れるようにがんばりますか」
相変わらずヘラヘラしている千明にこくりと頷くと、今まで動いていた車がちょうど止まった。
「ついたぞ」
運転席にいたケニア人がそう言って車を降りると、私たちの前の席に座っていた人たちが降りるのを待ってから、最後尾の私たちも車から降りる。
外は強風、未来は深い闇の中。
これから先何が待っているのかも分からない。それでも、たったひとつの希望まで吹き飛ばされてしまわないように心の中で祈りながら、そっとドアを開けた。
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