もしもいつも通りの明日が来なかったとしても

春音優月

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Stage2 始動

story27 能力開花

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「やめてーっ!!」
 
 お腹の底から声を出すと、最初に不思議な力を使った時と同じように、体の内側から燃えるように熱くなる。そして、リンレイの動きはピタリと止まった。
 
 ———生きたいと強く願った時、または誰かを守りたいと思った時。能力者たちは進化を超えて、超進化するという。
 
 御堂先生の説を裏付けるかのように、私の能力が開花していく……ように感じた。
 
 その証拠に、黄 玲雷を止めることが出来た。力を発動することが出来たんだ!
 止まったように見えるけど、きっとまたスロー再生モードになっただけ。早くしないと……!
 
 片足を引きずりながらブレットに駆け寄り、リンレイから引き離す。でも、私が次の行動に移るより前に、リンレイは動き始めてしまった。
 
 そんな......、たった数秒だけ?
 この前はもう少し長かったのに。
 
 とにかくリンレイを止めなきゃ。あ、でも、足に力が入らないよ……。
 
 動けるはずの片足さえも力が入らず、ヘナヘナとその場にへたりこんでしまう。
 
「はぁ、はぁ......。うぅっ......」
 
 足が痛い。呼吸が苦しい。
 急に力を使ったから? 訓練もされてないのに、やっぱりまずかったかな。でも、さっき力を使わなかったら、ブレットが死んでたかもしれないもの。
 
「ふうん、敵の動きを止める能力? 良い能力持ってるじゃない。
だけど、正直やっかいね。やっぱり今のうちに始末しておいた方が良さそう」
 
 黄 玲雷に髪をつかまれ、無理やり彼女の方を向かされる。それから彼女は私の胸元をめがけ、素早く小型の刀を降り下ろす。殺される......!
 
 あれ......? 死を覚悟して目を閉じたけれど、いつまでたっても小刀が降り下ろされない。
 
 おそるおそる目を開くと、身震いがするくらいの美貌に妖艶な笑みを浮かべる黄 玲雷と目が合う。
 
「ふふ......。冗談よ、ただのお遊び。本気にしないで」
 
「何言ってるの? あなたは、私とブレットを殺そうとしたんだよ? 本気だったでしょ? 冗談ですむわけがない」
 
 クスクス笑っている黄 玲雷に正直ホッとしたけれど、遊びだったと言われて簡単に引き下がることなんて出来るわけない。
 
「そんなに怖い顔しないで。せっかくの可愛い顔が台無しよ?
私たちこれから仲間になるんだから、仲良くしましょう? ね、美菜」
 
 仲良くできるわけないと言うより前に彼女は黒猫に姿を変え、夜の闇に紛れるように消えていった。
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