月に叢雲花に風

つきねこ

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月に叢雲花に風2

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私の通っている高校は、県下の普通科としては、トップの成績の学校だ。
田舎の事だから、都会みたいにバカ高いレベルの私立はない。
同じ校内に更に上の国際科学科という、本当のトップの科が2クラスある事を考えると、この校内には、県内で一番賢いはずの生徒が勢揃いのはず。

しかし、結局、中学では優秀と言われていた成績の人間でも、より集まれば皆が優秀になる訳ではなく、その中のトップとドベが出来てくるだけ。

中学までは、勉強せずともトップを取れたというような子ども達が、いざ、ちょっと大きな生簀に移っただけで、自分の能力が、そうでもない、事に気がつかされる。

まさに、そこに私はハマっている。

もともと勉強はたまたま出来ただけで、先生に勧められるまま、こんなとこに紛れ込んだものだから、
入学最初のテストで、間違いに気付かされ、呆然とした。

私は、ここじゃないんちゃう?

しかし、やっぱりそれはただ呆然なだけで、それ以降も、悔しさをバネに!とか別に努力する意欲が湧いたわけでもなく。

唯一好きな生物と、本好きのおかげでほぼ勘で解ける国語意外は、恐ろしい成績の状況だ。
英語に至っては中学時代には見たこともないような点数を叩き出している。
それでも、1年の間は、先々の受験を考えて、ある程度の勉強もしてはいた。
その年の大晦日までは。

その日で、本厄をぬけるという大晦日に、父親が、大事故を起こしてしまい、そのまま、
帰らぬ人に…はならなかったが、
そのまま、寝たきりの人になった。

脊椎損傷とかで、今も首から下は動かない。ただ、意識は1ヶ月ほどで奇跡的に戻り、今では会話も出来るようになった。
嬉しい、と思う。
良かった、とも思う。
難しいのは、お父さんの世話のため、母親もずっと病院に泊まり込みをしているということ。
ナースコールさえ押せない父なので、母が仕事をやめて、泊まり込んでいるのだ。
もちろん、そうなると我が家の収入はゼロだ。
保険金が死亡と同等おりたので、当面の生活は大丈夫ではある。
ただ、大して勉強も好きじゃないのに、しかも、この成績じゃ私立の大学になってしまうだろうに、
行く意味はあるのか?というのが、今の私の心の問題だ。

結局、私は、優秀の皮が剥がれた今、お金を払ってもらってまで勉強させてもらうような勇気も自信もないのだ。

いや、もっと愚痴っぽく言うならば。
別に勉強の出来る人間でありたいと思った事なんて一度もなかったのに、あなたは出来る!と勝手にもてはやされ、なんとなく、その言葉に乗せられて、いざ出て行ってみれば、そんなでもなかった、というこの状況に、多少なりとも私のプライドは傷ついたというだけなのかもしれない。

なんだろ?別に好きでもない相手に、ちょっと話しかけてみたら、興味ないですって振られた、みたいな?ちょっと違うか…

なんにせよ、
今、高校2年、春、どうしたもんかと悩みつつ。
とりあえず、卒業だけはしなさいという母からの言葉はこなそうと、
毎日のルーティンはこなしているのだ。

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