君に伝えたい言葉

マキノトシヒメ

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美鈴編

六月

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 今日は大輔さんと裕美さんの結婚式です。
 準備をして家で待っていると、翔太が迎えに来てくれました。
 一人で駅に行く時は別にどうってことないんだけど、翔太と二人で駅前に来ると、やっぱり去年の夏の事を思い出すのよね。
 こういう時、つまり翔太と二人きりになる状況があるときは、お父さんは決まって茶々を入れてくるんだけど、あれでも牽制しているつもりかしら。どう聞いても、あたしたちがもっと進展するような事にしか聞こえないのよね。ちゃんと婚約もしたんだし、両家の関係も良好なんだから、これ以上って言ったら結婚式になるとか、籍を入れるような状況に…なるわけなんだけどねえ?
 お母さんが言うには、あれで邪魔しているつもりだということなんだとか。だけど、あからさまにそういう考えが見えたら、あたしに嫌われるかもしれないから、本人は上手いこと立ち回ってるつもりなんだって。

 大輔さんと裕美さんの披露宴会場は、前もって聞いてはいたけど、ガーデン形式なんだって。うちを出る時はなんかちょっと天気がどんよりしかけていて、大丈夫なのかなと思っていたんだけど、向こうに近づくに連れて段々雲が切れてきて、会場に入る頃には、この季節にまあよくも晴れましたねって天気に。
「あたしは晴れ女なの」って裕美さんは言ってたけど、すごいわ。晴れ女ってのがそうなんだとしても、結婚式の披露宴なんて人生の節目でこれだけチャレンジできるとは。
 でも雨になったらなったで、自分らも楽しんで、出席者にも楽しんでもらえるような事は考えてあったと聞いた時は、さすがだなと思いました。
 そんな風に、天気にも恵まれてというか、祝辞でどなたかが言っておられたように天にも祝福されてという感じが実感できるような、本当に素晴らしい披露宴でした。

 披露宴が終わったあと、四人で食事会をする約束をしていたんだけど、いくらなんでもすぐには無理で、予定の時間には三時間くらい空いちゃう。
 それで駅前のシアターで映画を観ようとしたら、都合のいい時間のが「ファンキーキャップ」って、うわー懐かしい。まだこのシリーズやってたんだ。
 あたしが小学生の時に始まったアニメなんだけど、当時友達とごっこ遊びやったなあ。
 これは俄然見たくなっちゃって、翔太を強引に連れ込んだんだけど、意外と面白かったみたい。

 食事会と言っても、場所は居酒屋。気取らないでいい場所でということで、それには大いに賛成。
「大輔さん、裕美さん、結婚おめでとう」
 大輔さんと裕美さんは、まだこの後もあるので、アルコールなしの乾杯。
「それで?」
 と、いきなり裕美さん。視線はあたしたちの手元に送っている。
 大輔さんは、それにちょっと頓珍漢なことを言ったのですが、裕美さんが言うのは。
「あなたはホントそういうの疎いんだから」
 呼称がもう「あなた」になってる。

 ここでの時間もすごく楽しいもので、二時間なんてあっという間に過ぎちゃった。でもラストオーダーになったとき、悪ノリでつい「米を喰え?」なんて言っちゃったもんだから、また裕美さんが笑っちゃって、そこで終わりという事に。

 二人とはそこで別れて、翔太といっしょに今日泊まるホテルに入る。さすがに部屋は別々だけどね。
 今日の事を思うといろんなことを考えるけど、いい気持ちになる。ウキウキすることもある。
 あたしたちの結婚式も、来てくれた人に同じように感じてもらえるようにできるかしら。
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