君に伝えたい言葉

マキノトシヒメ

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美鈴編

七月

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 あんまり言うような事じゃないんだけど、朝起きたら、とにかくしんどかった。かなり…生理がキツくって…。今までこんなにつらいということなかったんだけどなあ。
 お母さんにも相談したけど、薬を飲んで安静にしているしかないということだった。…実際そうよね。
 病気じゃないと自分には言い聞かせているけど、痛いものは痛いのよ。単純に痛いっていうだけならまだ何とか気持ちで対処しようもあるけど、おなかの中から湧き起こって来る気持ち悪さとか、頭も痛くなったりとか、もう最悪。

 翔太が心配して声をかけてくれたくらいだから、かなり表情とかに出ちゃってるんだろうな。
 翔太には「放っといて」なんて言っちゃったけど。そう言うしかないくらい余裕もなくなってる。
 でも、翔太がそれでもしつこく食い下がって来るような性格でなくてよかった。友達に聞いたことがあるけど、彼氏がそういう時につきまとっていたって。その友達はまだ優しい性格だからか、そこまでひどくない症状だったからなのか、乗り越えたみたいだけど、今のあたしはダメ。そんなことされたら、多分罵倒してしまうと思う。そしてきっとその後で落ち込むことになると思う。

 次の日も全然痛みは治まらなくて、翔太にも一言も返す事が出来なくて、お母さんに準備してもらった、室内での仕事をやるので精いっぱいだった。

 だから、うちに戻って、お父さんに「二日目か」なんて言われたら、冷静に返事ができるわけないでしょう!
 いくら親子と言ったって、何もして欲しくない時はあるの。しかもお父さんに相談できるような事じゃないのに。
 具合が悪くない時だって、お父さんや翔太でも何か言われて普通に返答ができる事じゃないわよ。
 それなのに、さらに何? 観音さまがどうたらこうたら。もう知らないわよ。

 でも、その次の日には、症状は軽くなって、薬も必要じゃなくなった。なんとか一息ってところ。四日目になって、やっと完全復活。
 佐川さんも気がついていたらしいんだけど、あえて何も言わないでいてくれたみたい。まあ、翔太にすらわかるんだから、さすがに佐川さんにはわかるわよね。お気遣い、本当に感謝します。佐川さんからは一言だけアドバイスがあって、休むことも念頭に置いておきなさいってことだった。
 今までは、ちょっと頑張るくらいで生理で休んだことってなかったのよね。多分、翔太には気付かれていなかっただろうし。だから、休むってことが頭になかった。でも確かに、それが選択肢にあるだけで気持ちの余裕はかなり違うわ。
 あ、お母さんも本当はそれを言いたかったのかな。ちょっとでなく、すごいピリピリしてたから、言い出せる感じじゃなかったんだろうなあ。あとでお母さんにも謝らなくちゃ。

 で、す、が、お父さんは許しませんとも。ええ、許しませんともさ。
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