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翔太編
三月
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三月には、桃の節句があり、その祝事関連以外に、お雛様の供養も少なかからず依頼がある。雛人形の供養に関しては、近隣の神社仏閣ではあまりやっているところがない。うちの神社は規模こそ小さいが、歴史は古く、様々な事に従事している。人形に限らず、供養ごとは色々なものがある。さすがに、自動車の供養相談が来たときには、驚きはしたが、そこはそれ、松蔭さまのこと。あっという間に段取りをつけてしまった。あの人の懐の深さと広さは計り知れない。
ところで、三月といえば、事務方であるこちらにとっては決算期でもある。
宗教法人であっても、何でもかんでも非課税などではなく、申告を正しく行なわないで、なあなあで続けてしまうと、最悪法人資格の取り消しを受けることもあり、そうなると何年も遡って課税されることもある。細かい事までは知らないが、追徴課税が億単位になった話も聞いたことがある。
税金は、払う能力がないとしても、破産はできない事になっている。他のことで破産したとしても、税金の支払い義務は免除されない。
脱税行為がなく、正当な業務下であると認められれば、猶予制度や補助を受けることもできるが、支払いそのものからは逃れられない。
そういう事態にならないようにするのが、俺たち事務方の役目で、経費に関して厳しい目になるのは、この神社のことを思えばこそである。
その中に、物品販売の売り上げがある。宗教に直接に関係していない、神社の名前をつけたキーホルダー等のグッズや、菓子類である。うちでは、名前が入っているからって、ご利益がどうとかは一切何も謳っていない。ご利益については、正規に祈祷をあげたものだけと公表している。ただ、神社にお越しいただいた方が、そういったグッズ等にもご利益的に思っていただけることには、特に言及はしていない。
上塚岡神社おこし&クッキーは、20年以上に渡って売られている、超ロングセラー商品である。
おこしとクッキーの二種類の商品があるのではなく、一箱の中におこしとクッキーが入っている。
過去に一度、それぞれ単品の商品化もしたことがあるそうだが、それらはほとんど売れず、売れるのは二種類が1セットになっているいつもの物ばかりだったそうで、今ではそれだけしか売っていない。サイズも一種類だけで、量的には大人の人なら、お茶うけにしたらゆっくりでも、1時間もしたら一箱食べきってしまうんじゃないだろうかというくらい。
おこしもクッキーも、別に特徴があるものではなくて、いかにもおこしと言ったらこういう感じ、クッキーと言えばこういうもの、といった内容なのだが、なぜか近隣の神社と特に関係のないご家庭にも評判が良く、お寺やキリスト教会の人も買いに来たりすることまである。波はあるものの、売り上げは好調なのである。
製造自体も難しいことは一切なく、町内の菓子舗に製造を委託している。
ここでやっと本題に入るが、先月言った例のアレとは、これの売れ残りなのだ。
賞味期限が迫ったものは、売っているのが神社であるというイメージ上、値引き販売したりはせず、自分たちのお茶受けやおやつ用に供される。勿論これも、社内消費用の経費になるわけで、課税に関わってくる。
この菓子は委託生産で、かつ、ここでしか売らないものであるから、売れ残った場合でも返品はしない。完全買取りになっているので最後は自家消費するわけである。
で、美鈴はそれを活用したのでありました。
俺の方もいっそのことホワイトデーにその再利用でお返しをしようとかと画策もしていたのだが、今月は売れ行きが好調で、先月分は完売となった。
今月の自家消費は規定分だけで余分はなく、おやつだけでなくなってしまった次第である。
なので、ホワイトデーの美鈴へのプレゼントには、某有名店のマカロンを買った。喜んでくれたようで、これはこれでよかったのだが、なんか微妙に負けた気がするのは気のせいだろうか。
ところで、三月といえば、事務方であるこちらにとっては決算期でもある。
宗教法人であっても、何でもかんでも非課税などではなく、申告を正しく行なわないで、なあなあで続けてしまうと、最悪法人資格の取り消しを受けることもあり、そうなると何年も遡って課税されることもある。細かい事までは知らないが、追徴課税が億単位になった話も聞いたことがある。
税金は、払う能力がないとしても、破産はできない事になっている。他のことで破産したとしても、税金の支払い義務は免除されない。
脱税行為がなく、正当な業務下であると認められれば、猶予制度や補助を受けることもできるが、支払いそのものからは逃れられない。
そういう事態にならないようにするのが、俺たち事務方の役目で、経費に関して厳しい目になるのは、この神社のことを思えばこそである。
その中に、物品販売の売り上げがある。宗教に直接に関係していない、神社の名前をつけたキーホルダー等のグッズや、菓子類である。うちでは、名前が入っているからって、ご利益がどうとかは一切何も謳っていない。ご利益については、正規に祈祷をあげたものだけと公表している。ただ、神社にお越しいただいた方が、そういったグッズ等にもご利益的に思っていただけることには、特に言及はしていない。
上塚岡神社おこし&クッキーは、20年以上に渡って売られている、超ロングセラー商品である。
おこしとクッキーの二種類の商品があるのではなく、一箱の中におこしとクッキーが入っている。
過去に一度、それぞれ単品の商品化もしたことがあるそうだが、それらはほとんど売れず、売れるのは二種類が1セットになっているいつもの物ばかりだったそうで、今ではそれだけしか売っていない。サイズも一種類だけで、量的には大人の人なら、お茶うけにしたらゆっくりでも、1時間もしたら一箱食べきってしまうんじゃないだろうかというくらい。
おこしもクッキーも、別に特徴があるものではなくて、いかにもおこしと言ったらこういう感じ、クッキーと言えばこういうもの、といった内容なのだが、なぜか近隣の神社と特に関係のないご家庭にも評判が良く、お寺やキリスト教会の人も買いに来たりすることまである。波はあるものの、売り上げは好調なのである。
製造自体も難しいことは一切なく、町内の菓子舗に製造を委託している。
ここでやっと本題に入るが、先月言った例のアレとは、これの売れ残りなのだ。
賞味期限が迫ったものは、売っているのが神社であるというイメージ上、値引き販売したりはせず、自分たちのお茶受けやおやつ用に供される。勿論これも、社内消費用の経費になるわけで、課税に関わってくる。
この菓子は委託生産で、かつ、ここでしか売らないものであるから、売れ残った場合でも返品はしない。完全買取りになっているので最後は自家消費するわけである。
で、美鈴はそれを活用したのでありました。
俺の方もいっそのことホワイトデーにその再利用でお返しをしようとかと画策もしていたのだが、今月は売れ行きが好調で、先月分は完売となった。
今月の自家消費は規定分だけで余分はなく、おやつだけでなくなってしまった次第である。
なので、ホワイトデーの美鈴へのプレゼントには、某有名店のマカロンを買った。喜んでくれたようで、これはこれでよかったのだが、なんか微妙に負けた気がするのは気のせいだろうか。
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