39 / 39
「もうここには二度と来たくない…かもしれない」
しおりを挟む
「そう…ですね。
変な話をしてすみませんね…」
シュンとしているが、酷いことをして別れたくせに未だに忘れられないって自分に酔っているのか?
尋常じゃないくらいの怒りが沸いてくる。
確かに子供の頃や若い頃は、経験値や想像力が乏しく、時にとんでもない方法で人を傷付けてしまうことは多々ある。
姫華だって、妊娠させられて逃げられているのだ。
確かに妊娠は女性側だけの責任じゃない。
けれども、男性に責任がないわけじゃないし、逃げるなんてもってのほかだ。
姫華がされた仕打ちを思うと、頬が赤くなり、頭に血が昇るのを感じる。
胸糞だと顔をしかめるのを堪え、
「レシートは必要ありません」
と時計屋さんの顔も見ず、言葉も聞かないようにと歩くパンプスの音が鈍臭い。
否、不快な言葉を言われても聞こえないようにわざと音を立てて歩いているのだ。
時計店から出ると、落ちかけた太陽の眩しさと夜を孕んだ雲の暗さ。
「もうここには二度と来たくない…かもしれない」
時計店さんの話にもやっとして感情的になりかけてから、他の時計店の方が高かったり店員さんの感じが悪かったらどうしよう、と思い、慌てて【かもしれない】を付けた。
美容院予約アプリのレビューで、正直イマイチだったけれど他の美容院がもっとイマイチだった場合、また行くかもしれないと悪い内容のレビューを書くのを躊躇っている時の気持ちに似てる。
そう、一度自分の外側に出してしまった言葉というのは二度と取り消せないのだから。
そして、夕方の生暖かいような冷たいような空気の中歩いていると、だんだん怒りが落ち着いてきた。
「よくある世間話のひとつじゃん。
いちいち腹立ててバカバカしいっ」
私の独り言と頬の熱は、夕方の街に掻き消されていった。
変な話をしてすみませんね…」
シュンとしているが、酷いことをして別れたくせに未だに忘れられないって自分に酔っているのか?
尋常じゃないくらいの怒りが沸いてくる。
確かに子供の頃や若い頃は、経験値や想像力が乏しく、時にとんでもない方法で人を傷付けてしまうことは多々ある。
姫華だって、妊娠させられて逃げられているのだ。
確かに妊娠は女性側だけの責任じゃない。
けれども、男性に責任がないわけじゃないし、逃げるなんてもってのほかだ。
姫華がされた仕打ちを思うと、頬が赤くなり、頭に血が昇るのを感じる。
胸糞だと顔をしかめるのを堪え、
「レシートは必要ありません」
と時計屋さんの顔も見ず、言葉も聞かないようにと歩くパンプスの音が鈍臭い。
否、不快な言葉を言われても聞こえないようにわざと音を立てて歩いているのだ。
時計店から出ると、落ちかけた太陽の眩しさと夜を孕んだ雲の暗さ。
「もうここには二度と来たくない…かもしれない」
時計店さんの話にもやっとして感情的になりかけてから、他の時計店の方が高かったり店員さんの感じが悪かったらどうしよう、と思い、慌てて【かもしれない】を付けた。
美容院予約アプリのレビューで、正直イマイチだったけれど他の美容院がもっとイマイチだった場合、また行くかもしれないと悪い内容のレビューを書くのを躊躇っている時の気持ちに似てる。
そう、一度自分の外側に出してしまった言葉というのは二度と取り消せないのだから。
そして、夕方の生暖かいような冷たいような空気の中歩いていると、だんだん怒りが落ち着いてきた。
「よくある世間話のひとつじゃん。
いちいち腹立ててバカバカしいっ」
私の独り言と頬の熱は、夕方の街に掻き消されていった。
11
お気に入りに追加
19
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
暇だったので、なんとなくダンジョン行ってみた
himahima
ファンタジー
勢いで会社を辞めたおばさんは暇だった。
なんもかんも嫌になって仕事を辞めたが、目標も気力もない自堕落な生活をおくっていた。
ある日、テレビに映る探検者なるキラキラした若者達を観てなんとなく近所のダンジョンに行ったことから、第二の人生がはじまる。
★初めてのファンタジー投稿です。
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!
ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました
。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。
令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。
そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。
ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。
前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。
神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。
どうやら、食料事情がよくないらしい。
俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと!
そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。
これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。
しかし、それが意味するところは……。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
そろそろ、私の世界の人を異世界転生させるのやめてもらえない?
安心院水主
ファンタジー
「もう我慢の限界!」
ついに、日本の神様が切れた!
勝手に自分の国の人を何人も異世界に連れて行かれ、因果律の修正に追われる毎日。優しい神様もついに堪忍袋の緒が切れた!
「なんで、世界作りに失敗した世界の尻拭いを私達がしなければならないのだ!もういい、だったら私がその世界を滅ぼしてやる!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる