上 下
31 / 39

「高橋さん、なーんか女を見る目がアレじゃあありません?」

しおりを挟む
「ちょっと聞いてよ姫華さんっ!!」

ある出勤日の昼休み。

怒りに震える舞ちゃんが私にずいっと詰め寄った。

「どうしたの?相澤がなんかやらかした?」

女心に理解がなく、女性の地雷ばかりを踏む相澤はちょいちょい女性社員の地雷を踏み、こんな感じで教育係の私の元にクレームが来ることもあるのだ。

「違うの!高橋さんのこと!」

「ほぇ?高橋?」

舞ちゃんの口から高橋敢の名前が出てきて、私は思わず呆気にとられた。

というか、舞ちゃんとあいつに接点なんかあったっけ。

「高橋さん、なーんか女を見る目がアレじゃあありません?」

「確かに、馴れ馴れしい男であることに違いはないわ。

それに社交辞令のつもりなのかは知らないけど、こっちが引いてても飲みに誘ってきたりとかあるし・・・」

この間の再会を思い出す。

こちらは早く話を切り上げて去りたいと思っていたのに、肩を掴んで引き止めてきたしね。

「さっきすれ違ったんだけど・・・私を上から下までジロジロ見てきて。

うわっ・・・何コイツ・・・って思って早いとこ離れようとしたの。

そしたら、色々話しかけてきて。

どこの部署かとか、彼氏はいるのかとか。

それがちょっと気持ち悪くて。

お顔や出で立ちは素敵な男性だけに、なんだか残念な感じというか・・・」

私はふと、ある男性の姿が思い浮かぶ。

「イケメン版浅井太郎的な?」

とポロッと口から零れれば、

「それよっ!!」

と真剣に目を見開く舞ちゃん。

高橋の奴、何やってんのよ。

今の時代、それは立派なセクハラなんだから。

しかし、その程度のことをセクハラだから不愉快だなんて騒ぐと女が大袈裟に騒いでいるという印象を持たれかねない。

それが前世の世界でもこのゲームの世界でも根付いている問題である。

前世の経験も含めて、どれだけ女性側がセクハラに我慢しているか。

職場の人間関係にヒビを入れないように、多少不愉快な発言でも笑って流したり、パーソナルスペースに入られて鳥肌が立つほどぞわっとしても顔に出さないようにしたり。

極めつけは、自分に好意を持ったり性的対象として接してくる男性にハッキリと線引きしてしまうと、今後仕事がやりづらくなったり、自分の勘違いであった場合に【自意識過剰女】になってしまうのだ。

そんな気持ちから、男性のそういった気持ちに気が付かないフリをして優しく接していると、相手はそれが【OKサイン】だと受け取ってしまうことがある。

そして【OKサイン】だと思って一線を越えようとしてくる男性を拒絶してしまうと、『そんなつもりはない』だとか『自意識過剰』だとか『冗談も通じないのか』『お前みたいな容姿の劣った女を相手にするわけがない』などという非難の言葉が女性を突き刺す。

でも、せっかくこの世界に転生できたのだ。

モヤモヤした気持ちに蓋をしたくはない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

優秀すぎた俺が隠居生活を決め込んだ結果。〜鍛治とポーション作りを始めたら、思っていたのとは違う方向に注目を集めてしまっていたらしい〜

カミキリ虫
ファンタジー
冒険者になり、その優秀さを遺憾無く発揮していた主人公、エディ。 それ故に、完全に俗世では浮いてしまっていた。 やることなすこと、注目の的になり、まるで彼を中心に世界が回っているかのようだった。 そんな彼は休養を兼ねて、昔住んでいた山奥の家に帰ることにした。 しばらく畑で作物でも作りながら、一人でゆっくりと生活しよう。 ……そう思っていても、彼のことを知っている者達が放っておくはずわけも無い。 次から次にやってくる、一癖も二癖も強い少女たち。翻弄される主人公。それきっかけで、他にやるべきことも見えた。 その結果、さらに彼を注目されることになり、そんな日々も悪くはないと、そう思うのだった。

教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮
ファンタジー
 子爵家の長男であるレアンデル=アリウスは、剣は得意だが魔法が大の苦手。  生まれ持った火の紋章の加護により得意になるはずの火魔法も上手く使えない。  そのせいで通っている学園でも同級生にバカにされる日々を送っていた。  そんなある日、レアンデルは森の中で龍と出会う。  その龍はあらゆる知識を修め、龍の世界でも教鞭を執るほどの教え好き。  レアンデルの秘められた力に気付いた龍は自らの知識や経験を叩きこむ。  レアンデルの成長と出会いの物語。  紋章とは。龍とは。そして秘められた力とは――

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。 やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。 人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。 当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。 脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。

貴族の家に転生した俺は、やり過ぎチートで異世界を自由に生きる

フリウス
ファンタジー
幼い頃からファンタジー好きな夢幻才斗(むげんさいと)。 自室でのゲーム中に突然死した才斗だが、才斗大好き女神:レアオルによって、自分が管理している異世界に転生する。 だが、事前に二人で相談して身につけたチートは…一言で言えば普通の神が裸足で逃げ出すような「やり過ぎチート」だった!? 伯爵家の三男に転生した才斗=ウェルガは、今日も気ままに非常識で遊び倒し、剣と魔法の異世界を楽しんでいる…。 アホみたいに異世界転生作品を読んでいたら、自分でも作りたくなって勢いで書いちゃいましたww ご都合主義やらなにやら色々ありますが、主人公最強物が書きたかったので…興味がある方は是非♪ それと、作者の都合上、かなり更新が不安定になります。あしからず。 ちなみにミスって各話が1100~1500字と短めです。なのでなかなか主人公は大人になれません。 現在、最低でも月1~2月(ふたつき)に1話更新中…

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

処理中です...