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全身の悪寒と目から涙が溢れそうになるのを感じる。
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今夜は小林のささやかな歓迎会ということで、私と相澤、舞ちゃんと小林の4人で飲みに行くことになった。
とはいえ、ダイエット継続中なので私はウーロンハイとシーザーサラダである。
乾杯、とグラスがぶつかり合う音がして・・・喉が何度が鳴った後、グラスに残るのは氷だけ。
ふぃー、とため息をつけば、
「城之内さんおっさんみたいですね!」
と向かいに座る相澤が嬉しそうに言う。
「浅井と一緒にしないで頂戴!」
と彼を睨み付け、脚を蹴る。
昼間の浅井の訪問を思い出し、ビールを飲んでいないのに苦い顔になった。
あの後なかなか自分の部署へ帰らず、憤怒のダマミが浅井を回収しに来たのだ。
ああやってのらりくらりと仕事をしない人なのよね。
「そういえば」
隣に座る舞ちゃんを見ながら私は苦笑いした。
「舞ちゃんが浅井に対して冷たくてビックリしたわ」
彼女はニッコリ笑って
「私は姫華さんの“浅井おじさん”にもすごくビックリしたけどね」
「あれは、相澤につられて言っちゃったの」
「そうだと思った!でも姫華さん、新人くん達を褒めているようで、浅井への嫌味も言っててさすがだなって感じ」
やっぱりバレてたかぁ。
「そういえば城之内さん、宇都宮さんがおじさんに絡まれてる時に相澤先輩をけしかけてましたよね?
宇都宮さんが嫌そうにしているのを察してすぐ行動しててすごいです」
なんて小林からも褒められて、顔から火が出そう。
頬を手で煽ぎながら、
「あの人は今まで結構やらかしてるのよ。
それに、女性にはセクハラ、男性にはパワハラ気味だし。
小林くんも気を付けて」
と告げれば、
「確かに、あの人の俺を見る目が険しかったんですよね。
人間って、理屈抜きで『こいつ何だか気に入らないな』って思われることもありますよね。
それだけの理由で、どうしてここまで酷いことができるんだろう?って思った時もありました。
・・・とりあえず気を付けますね」
と返ってきたので、ゲームの印象通りの人だなぁ・・・と彼の唇の左下のホクロを眺める。
彼はすごく魅力的なので、良くも悪くも激しい感情を抱かれやすい。
そして、そんな自分を俯瞰しているような台詞を言うシーンが物悲しくも美しいのだ。
とりあえず、主人公が小林ルートに入らなければ、浅井太郎はそこまであからさまな嫌がらせはしないだろう。
主人公が彼に興味を持たないようにしようか。
でもどうやって?
そもそも、私が城之内姫華に転生しているくらいなのだ。
主人公が転生者である可能性や、そんな主人公が卑眼蚊を嫌悪し、陥れる可能性も無きにしも非ず。
そう考えると、私が今やっていることは果たして意味のあることなのだろうか?
今はこんな風に仲良くしてくれている相澤や舞ちゃんも、主人公が私の悪口を吹聴すればすぐに離れていくのではないか?
一気に肝が冷え、全身の悪寒と目から涙が溢れそうになるのを感じる。
「・・・姫華さん?どうしたの?」
舞ちゃんが何かに察したのか、心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「ごめん、久々に飲酒したせいで弱くなったみたい。
悪いけど先に帰るね」
「城之内さん、送っていきますよ」
いつもなら受け入れている相澤の申し出も、今日は受け入れられない。
「大丈夫。ありがとう」
今は彼らといるのが何となく怖いのだ。
こんなに親しくしていても、主人公の匙加減でどうとでもなってしまいそうなお邪魔お局というポジションに立っている事実がこの上なく恐ろしい。
悪寒に震えた手でスプリングコートとバッグを掴むと、足早に店を後にした。
とはいえ、ダイエット継続中なので私はウーロンハイとシーザーサラダである。
乾杯、とグラスがぶつかり合う音がして・・・喉が何度が鳴った後、グラスに残るのは氷だけ。
ふぃー、とため息をつけば、
「城之内さんおっさんみたいですね!」
と向かいに座る相澤が嬉しそうに言う。
「浅井と一緒にしないで頂戴!」
と彼を睨み付け、脚を蹴る。
昼間の浅井の訪問を思い出し、ビールを飲んでいないのに苦い顔になった。
あの後なかなか自分の部署へ帰らず、憤怒のダマミが浅井を回収しに来たのだ。
ああやってのらりくらりと仕事をしない人なのよね。
「そういえば」
隣に座る舞ちゃんを見ながら私は苦笑いした。
「舞ちゃんが浅井に対して冷たくてビックリしたわ」
彼女はニッコリ笑って
「私は姫華さんの“浅井おじさん”にもすごくビックリしたけどね」
「あれは、相澤につられて言っちゃったの」
「そうだと思った!でも姫華さん、新人くん達を褒めているようで、浅井への嫌味も言っててさすがだなって感じ」
やっぱりバレてたかぁ。
「そういえば城之内さん、宇都宮さんがおじさんに絡まれてる時に相澤先輩をけしかけてましたよね?
宇都宮さんが嫌そうにしているのを察してすぐ行動しててすごいです」
なんて小林からも褒められて、顔から火が出そう。
頬を手で煽ぎながら、
「あの人は今まで結構やらかしてるのよ。
それに、女性にはセクハラ、男性にはパワハラ気味だし。
小林くんも気を付けて」
と告げれば、
「確かに、あの人の俺を見る目が険しかったんですよね。
人間って、理屈抜きで『こいつ何だか気に入らないな』って思われることもありますよね。
それだけの理由で、どうしてここまで酷いことができるんだろう?って思った時もありました。
・・・とりあえず気を付けますね」
と返ってきたので、ゲームの印象通りの人だなぁ・・・と彼の唇の左下のホクロを眺める。
彼はすごく魅力的なので、良くも悪くも激しい感情を抱かれやすい。
そして、そんな自分を俯瞰しているような台詞を言うシーンが物悲しくも美しいのだ。
とりあえず、主人公が小林ルートに入らなければ、浅井太郎はそこまであからさまな嫌がらせはしないだろう。
主人公が彼に興味を持たないようにしようか。
でもどうやって?
そもそも、私が城之内姫華に転生しているくらいなのだ。
主人公が転生者である可能性や、そんな主人公が卑眼蚊を嫌悪し、陥れる可能性も無きにしも非ず。
そう考えると、私が今やっていることは果たして意味のあることなのだろうか?
今はこんな風に仲良くしてくれている相澤や舞ちゃんも、主人公が私の悪口を吹聴すればすぐに離れていくのではないか?
一気に肝が冷え、全身の悪寒と目から涙が溢れそうになるのを感じる。
「・・・姫華さん?どうしたの?」
舞ちゃんが何かに察したのか、心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「ごめん、久々に飲酒したせいで弱くなったみたい。
悪いけど先に帰るね」
「城之内さん、送っていきますよ」
いつもなら受け入れている相澤の申し出も、今日は受け入れられない。
「大丈夫。ありがとう」
今は彼らといるのが何となく怖いのだ。
こんなに親しくしていても、主人公の匙加減でどうとでもなってしまいそうなお邪魔お局というポジションに立っている事実がこの上なく恐ろしい。
悪寒に震えた手でスプリングコートとバッグを掴むと、足早に店を後にした。
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