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「いい加減ひとり立ちしろっ」

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「宇都宮、小林の教育係を頼む」

おっ、舞ちゃんかぁ。

舞ちゃんはイケメン耐性があるほうだし、そろそろ新人教育を任されても良い年頃でもある。

それに、お局になりたいなら後輩を育てることも立派な仕事だしね。

「畏まりました。では小林くん、私が教育係の宇都宮舞です」

「宇都宮…舞さん、ですね。お世話になります」

小林は穏やかな笑みを浮かべながら、しっかりと舞ちゃんの目を見て挨拶する。

まるで綻びかけた花のように柔らかながらも芯を感じるその佇まいに見惚れてしまう。

まだ若いのにこうやって照れずに綺麗な女性の名前を呼べるなんて流石である。

「城之内さんが教育係に選ばれなくて良かったですよ~」

相澤がコソッと私に耳打ちした。

「なによ」

もっと小林凖を見ていたかったのに。

「だって、自分はあと5年くらいは城之内さんに教育係していてもらいたいですから!」

「いい加減ひとり立ちしろっ」

ポカッ、と相澤の頭にげんこつを食らわせる。

確かに城之内姫華は仕事ができるし、彼女に転生した私も、シナリオとシナリオの間に存在するミニゲーム(商品の発注や取引先との付き合い)の内容を覚えていたので、それを即仕事に活かしているおかげで仕事ができる古株という評価は変わらない。

だけど、私のスキルをあてにしているこの野郎にはクッソ腹が立った。

ちなみに、風の噂によると小林凖の他部署の同期であり攻略対象の遠藤  一繁は浅井  太郎が教育係なのだとか。

そして、同部署であり浅井の先輩ダマミこと阿玉  ミチ子が教育係を代われと浅井に凄んだらしいが、いくら先輩のダマミでも契約社員が教育係になるのは如何なものかと一蹴されたとか。

まぁダマミは更年期だの膝が痛いだのと言ってよく病院を口実に休むので、信用がなかったんだろうなぁ。

だからって浅井が適任とは言い難いけれど。

遠藤一繁は名前こそ日本人だが、黒髪に浅黒い肌、その中に光る緑色の瞳が異国情緒を漂わせるハーフだ。

早く本物を拝みたい気持ちと、浅井太郎に会いたくない気持ちが入り交じる。

性格は真面目だけど恋愛に関しては外国人らしい大胆さがあり、そのギャップにやられたプレイヤーは少なくない。

また、普段のスーツと美しい肢体が覗く民族衣装のギャップも良かったようだ。

そして、石油王の血筋で外国にある実家は大金持ち、豪奢な異国のドレスなどをプレゼントをしてくるエキゾチック大富豪なところも他のキャラクターにはない魅力だ。

小林と違って圧倒的人気はなかったが、コアなファンがおり、彼をイメージしたピルケースや天然石ブレスレットなどがハンドメイド売買サイトで沢山出品されては飛ぶように売れていったのであった。

「浮世離れしたイケメンも良いよなぁ」

なんて考えていたら、私あての電話が掛かってきて現実に引き戻された。
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