乙女ゲームのお邪魔お局に転生してしまった私。

「誰が彼の教育係に？」

「小林  凖(ヒトシ)と申します。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します」

出たーッ！

次なる攻略対象、小林凖。

彼は、名前こそ「おじいちゃんに付けられたの？」ってくらいシワシワネームではあるが…

緩いウェーブでセミロングの栗色の髪と、切れ長の目、唇の左下のホクロがセクシーな所謂【お色気担当】である。

あまりルックスが好みでないにも関わらず、色気を感じてしまうというプレイヤーが後を経たなかった。

かくいう私もそのプレイヤーの内のひとり。

セクシーな声と有名な声優さんがキャラクターボイスを担当したことと、絵師さんの素晴らしい画力が産み出した最高傑作である。

また、セミロングというヘアスタイルが、ハーフアップやポニーテールなど、彼の魅力を引き出すヘアアレンジを実現させることによって2次元大好きなオタク女子のハートに刺さったのだった。

しかし、彼も市川傑同様モテる。

その上、市川傑のような王子様のようなルックスと社長令息、簡単に自分に靡く女性は軽蔑するという孤高の存在ではなく、どんな女性にもある種の魅力を見出だし、コレクションとばかりに玉石混淆の一大ハーレムを築いてしまうようなタイプなのだ。

女を選り好みするタイプの男よりも、どんな女にもある種の魅力を見出だすことができるタイプの男の方が、女にとっては都合が良い上に、器の大きい男だと感心させられてしまうのが女心というものである。

小林凖ルートはバッドエンドになると、彼のハーレムを離れた場所から悲しそうに見つめ涙するシーンで締め括られる。

また、主人公がハーレムの一員となるエンディングも存在し、ファンを鬱にさせるキャラクターとして畏怖の念を抱かれる存在でもあった。

実物の彼からは本当に薔薇の幻が見えそうなほどの色香であり、どんなイケメンでも冷たくあしらえる舞ちゃんですら頬を紅潮させている。

男性社員ですら美しさに圧倒され、妬み僻みすら抱くことすら忘れているようだ。

「誰が彼の教育係に？」

周囲を見回し、冷静さを取り戻した私は男尊女卑石崎を見る。