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第一章 異世界にこんにちは
3.妖精だ!
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3.妖精だ!
村人たちと俺は睨み合いはしばらく続いていたが、その膠着状態を解いたのは先ほど俺に声をかけてきたイケメンだった。
白髪のおじいさんと一言二言話をしてから、イケメンは俺の手足を縛る縄をほどいてくれた。
良かったよ~。さっきから手の痺れも無くなってきてて、自分の手じゃない程になってたから、これ以上縛られてたら、手が使い物にならなくなってたかもしれない。
「ありがとうございます。え~、僕は鈴木一郎と言います。日本でサラリーマンをしていたんですが、ここにはなんで呼ばれたんでしょうか?」
と、俺は手を擦って血の巡りを良くしながら言った。
言葉が通じないとは分っていたが、取りあえず自己紹介しときたいし、今の状況は知りたいよね。
ゆっくりと言葉を紡いだけれど、やっぱり通じてる様子はなかった。
「 ******、*****? 」
ああ~。やっぱり分んないや。
さっきの水が魔法の水で言葉が分かる、ってことにならないかな~なんて期待してたんだけど、そうはうまくいかなかったみたいだ。
イケメンがじっと俺の顔を覗き込んでくる。
や、ちょっと恥ずかしいんですけど。
言葉が通じないもどかしさと、日本人特有のシャイな部分が俺を俯かせた。
そうして、再び膠着状態に陥ろうとしていた時のことだった。
俺の頭の上から、やや甲高い幼い子どもの声が聞こえた。
『そんちょがおしごとしたらおかしくれるってゆうからきたよ。』
子どもとかさっきまで居なかったよな。
ってか、言葉が分かる!
なんで?
『ねえ、これがおしごとのひと?かみがくろいね。でもまものじゃないね?オウラがまぶしいよ。だあれ?』
うっそ!妖精だ!
フェラリオだ!
中野ブロードウェイとかアキバで売られているようなフィギュアじゃない、本物の生きてる妖精だ。
動いてるよ。スゲー。そんでもって飛んでるよ。
十五センチくらいの身長で、羽を羽ばたかせている。絵本とかでも見た妖精そっくりだ。
というかあのアニメにも出てたフェラリオそっくりだ。
髪はアニメみたいにピンク色で、目の色は同じくピンクだ。
服は残念、レオタードじゃない。普通のミニスカートだ。
あ、パンツ見えそう。
呆然と妖精を目で追っていたら、頭の上に来てピョンピョンしだした。
イテテって。髪を引っ張るのやめてほしい。禿るから!
『ねえ。だあれ?』
「あ、鈴木、鈴木一郎。君は?」
『あたしはね、ファンファンだよ。みんなファンてよぶよ。すずきすずきいちろ』
「あ、違う。鈴木一郎というんだ。友人はイチローって呼ぶから、そう呼んでくれるかい。」
『いいよ。イチローはどこからきたの?どうしてここにいるの?』
「さあ。それは俺も知りたい。地球の日本という所からなんだけどね。どうしてここにいるのかは俺も何が何だかわからないんだよ。この人たちに聞こうにも、言葉が通じないから困ってたんだ。通訳してくれるのかい?」
『ふ~ん。いいよ。たのみきいてあげる。』
「まず、ここは何処の何という所なのか、俺はなぜここにいるのか、それを知りたい。」
そこから、ファンを通して情報の交換が始まった。
白髪の老人は村長さんでアスクレという名前で、イケメン君はその孫でカイトリルという名前との事。
主にこの二人が俺とのやり取りをしてくれるようだ。
ファンを介してのやり取りだからかなり時間はかかったが、意思疎通ができるのでよしとしよう。
ということで、そこで分かったことは九つ。
1.ここはシュウキュウ大陸の一つアコウフックという国でこの村は赤の地と呼ばれるところ
2.シュウキュウ大陸には十数の小国家と大国の三国があり、現在大国同士が争っている
3.戦力不足の時には時々異世界から戦士を召還することもあるが、近頃は召喚していないのに色々なところで異世界の人や物や獣が落ちてきている
人間は異界人、それ以外は異界モノと呼ばれている
4.直近では人型の魔物ような異界モノが村人を襲って何人も殺されたが、聖水をかけて退治できた
5.落ちてくる魔物のようなモノは、体のどこかが黒い色をしている事が多い
6.元からの脅威としては、陸地には大型の牙がある獣や空を飛ぶ竜が、海には大型の海竜がいるが聖水は効かない
7.言葉を喋る事が出来るのは、人とフェーと呼ばれる妖精だけで人口の比率は50対1くらいの割合
フェーにはオウラという魔力があるため、人間が話せない動物や虫とも喋る事が出来る
ただし、話すときは体の一部を接触させるか一メートル以内にいないとだめ
8.人間にはオウラを持つものが少ないので、いわゆる魔法使いはほんの少数しかいない
この村にはもちろん魔法使いはいない
9.神は複数いて時々人間の前に姿を見せて願いを叶えてくれるが、近頃は願いが届かないことが多く、魔物のようなモノが跋扈するため聖水を司祭が生成しなくてはならないが、聖水のもとになる湖はこの村から遠い所にある(ファンの言う遠いの基準は不明)
こんなものだろうか。
ところどころ話が飛んだから、頭の整理をするために後で纏めてメモしとこ。
そう言えば俺の鞄はあるのかなぁ。
あったらいいけど、あの白い光の空間で持ってたっけか。
う~ん。思い出せん。
それにしても、オウラっていう魔法か。便利だな。それと、魔法使いもいるんだな~。
会ってみたいけど、この村には居ないって言ってたよな。残念だ。
それにしても魔物のようなモノは体のどこかが黒いか。
彼らは俺のことも、髪が黒いからきっとそうだと思って、小川の近くで倒れていたのを見つけて厳重に縛ってこの神殿に連れてきたという。そこで司祭に聖水をかけてもらったが、聖水をかけて死ななかったので、目が覚めたから聖水を飲ませた、ということらしかった。それで、聖水を飲んでも死ななかったから、魔物のようなモノではないと警戒を解いたそうだ。
ジュースよりかなり薄めの甘い水だったからゴクゴク飲めて良かったけど、もしも苦かったら吐き出してたんじゃないか。その時はどうしたんだろう。
怖いから聞くのやめよ。
まあ、体のどこかが黒いモノが魔物のようなモノだと言われていたのなら、彼らが疑ってもしょうがないとは納得した。縛ったのも分らなくもない。
でも、目が覚めていきなり引叩かなくても良かったんじゃないか。
と思っていたら、弟が魔物のようなモノに襲われたことがあったから、怒りが湧いてきたんだと言われたので、しょうがないか、と諦めもついた。
通訳してもらって、そっぽ向きながらでも謝ってくれたから良しとしよう。
さて。
これからどうしようか。
俺にとっては右も左もわからないこの異世界。
多分、元の世界には戻れないだろう。あれだけの地震だったから、吉祥寺は壊滅状態なんじゃないだろうか。友人達は無事でいるだろうか。知る術はないけれど、どうか無事でいて欲しい。
この現状を認識して、先どうやって生きていけばいいのか、未来のビジョンが見えて来ず、俺は途方にくれるしかなかった。
村人たちと俺は睨み合いはしばらく続いていたが、その膠着状態を解いたのは先ほど俺に声をかけてきたイケメンだった。
白髪のおじいさんと一言二言話をしてから、イケメンは俺の手足を縛る縄をほどいてくれた。
良かったよ~。さっきから手の痺れも無くなってきてて、自分の手じゃない程になってたから、これ以上縛られてたら、手が使い物にならなくなってたかもしれない。
「ありがとうございます。え~、僕は鈴木一郎と言います。日本でサラリーマンをしていたんですが、ここにはなんで呼ばれたんでしょうか?」
と、俺は手を擦って血の巡りを良くしながら言った。
言葉が通じないとは分っていたが、取りあえず自己紹介しときたいし、今の状況は知りたいよね。
ゆっくりと言葉を紡いだけれど、やっぱり通じてる様子はなかった。
「 ******、*****? 」
ああ~。やっぱり分んないや。
さっきの水が魔法の水で言葉が分かる、ってことにならないかな~なんて期待してたんだけど、そうはうまくいかなかったみたいだ。
イケメンがじっと俺の顔を覗き込んでくる。
や、ちょっと恥ずかしいんですけど。
言葉が通じないもどかしさと、日本人特有のシャイな部分が俺を俯かせた。
そうして、再び膠着状態に陥ろうとしていた時のことだった。
俺の頭の上から、やや甲高い幼い子どもの声が聞こえた。
『そんちょがおしごとしたらおかしくれるってゆうからきたよ。』
子どもとかさっきまで居なかったよな。
ってか、言葉が分かる!
なんで?
『ねえ、これがおしごとのひと?かみがくろいね。でもまものじゃないね?オウラがまぶしいよ。だあれ?』
うっそ!妖精だ!
フェラリオだ!
中野ブロードウェイとかアキバで売られているようなフィギュアじゃない、本物の生きてる妖精だ。
動いてるよ。スゲー。そんでもって飛んでるよ。
十五センチくらいの身長で、羽を羽ばたかせている。絵本とかでも見た妖精そっくりだ。
というかあのアニメにも出てたフェラリオそっくりだ。
髪はアニメみたいにピンク色で、目の色は同じくピンクだ。
服は残念、レオタードじゃない。普通のミニスカートだ。
あ、パンツ見えそう。
呆然と妖精を目で追っていたら、頭の上に来てピョンピョンしだした。
イテテって。髪を引っ張るのやめてほしい。禿るから!
『ねえ。だあれ?』
「あ、鈴木、鈴木一郎。君は?」
『あたしはね、ファンファンだよ。みんなファンてよぶよ。すずきすずきいちろ』
「あ、違う。鈴木一郎というんだ。友人はイチローって呼ぶから、そう呼んでくれるかい。」
『いいよ。イチローはどこからきたの?どうしてここにいるの?』
「さあ。それは俺も知りたい。地球の日本という所からなんだけどね。どうしてここにいるのかは俺も何が何だかわからないんだよ。この人たちに聞こうにも、言葉が通じないから困ってたんだ。通訳してくれるのかい?」
『ふ~ん。いいよ。たのみきいてあげる。』
「まず、ここは何処の何という所なのか、俺はなぜここにいるのか、それを知りたい。」
そこから、ファンを通して情報の交換が始まった。
白髪の老人は村長さんでアスクレという名前で、イケメン君はその孫でカイトリルという名前との事。
主にこの二人が俺とのやり取りをしてくれるようだ。
ファンを介してのやり取りだからかなり時間はかかったが、意思疎通ができるのでよしとしよう。
ということで、そこで分かったことは九つ。
1.ここはシュウキュウ大陸の一つアコウフックという国でこの村は赤の地と呼ばれるところ
2.シュウキュウ大陸には十数の小国家と大国の三国があり、現在大国同士が争っている
3.戦力不足の時には時々異世界から戦士を召還することもあるが、近頃は召喚していないのに色々なところで異世界の人や物や獣が落ちてきている
人間は異界人、それ以外は異界モノと呼ばれている
4.直近では人型の魔物ような異界モノが村人を襲って何人も殺されたが、聖水をかけて退治できた
5.落ちてくる魔物のようなモノは、体のどこかが黒い色をしている事が多い
6.元からの脅威としては、陸地には大型の牙がある獣や空を飛ぶ竜が、海には大型の海竜がいるが聖水は効かない
7.言葉を喋る事が出来るのは、人とフェーと呼ばれる妖精だけで人口の比率は50対1くらいの割合
フェーにはオウラという魔力があるため、人間が話せない動物や虫とも喋る事が出来る
ただし、話すときは体の一部を接触させるか一メートル以内にいないとだめ
8.人間にはオウラを持つものが少ないので、いわゆる魔法使いはほんの少数しかいない
この村にはもちろん魔法使いはいない
9.神は複数いて時々人間の前に姿を見せて願いを叶えてくれるが、近頃は願いが届かないことが多く、魔物のようなモノが跋扈するため聖水を司祭が生成しなくてはならないが、聖水のもとになる湖はこの村から遠い所にある(ファンの言う遠いの基準は不明)
こんなものだろうか。
ところどころ話が飛んだから、頭の整理をするために後で纏めてメモしとこ。
そう言えば俺の鞄はあるのかなぁ。
あったらいいけど、あの白い光の空間で持ってたっけか。
う~ん。思い出せん。
それにしても、オウラっていう魔法か。便利だな。それと、魔法使いもいるんだな~。
会ってみたいけど、この村には居ないって言ってたよな。残念だ。
それにしても魔物のようなモノは体のどこかが黒いか。
彼らは俺のことも、髪が黒いからきっとそうだと思って、小川の近くで倒れていたのを見つけて厳重に縛ってこの神殿に連れてきたという。そこで司祭に聖水をかけてもらったが、聖水をかけて死ななかったので、目が覚めたから聖水を飲ませた、ということらしかった。それで、聖水を飲んでも死ななかったから、魔物のようなモノではないと警戒を解いたそうだ。
ジュースよりかなり薄めの甘い水だったからゴクゴク飲めて良かったけど、もしも苦かったら吐き出してたんじゃないか。その時はどうしたんだろう。
怖いから聞くのやめよ。
まあ、体のどこかが黒いモノが魔物のようなモノだと言われていたのなら、彼らが疑ってもしょうがないとは納得した。縛ったのも分らなくもない。
でも、目が覚めていきなり引叩かなくても良かったんじゃないか。
と思っていたら、弟が魔物のようなモノに襲われたことがあったから、怒りが湧いてきたんだと言われたので、しょうがないか、と諦めもついた。
通訳してもらって、そっぽ向きながらでも謝ってくれたから良しとしよう。
さて。
これからどうしようか。
俺にとっては右も左もわからないこの異世界。
多分、元の世界には戻れないだろう。あれだけの地震だったから、吉祥寺は壊滅状態なんじゃないだろうか。友人達は無事でいるだろうか。知る術はないけれど、どうか無事でいて欲しい。
この現状を認識して、先どうやって生きていけばいいのか、未来のビジョンが見えて来ず、俺は途方にくれるしかなかった。
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