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セカンドキャリアは温泉リゾート

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 朱莉は、疲れた体を引きずるようにして古びた商店街を歩いていた。勤めていた会社が不正経理問題で突然破産し、職を失ってしまった彼女は、どうすることもできず途方に暮れていた。

 手元にあるお金は...146円。小学生でもこれより金を持っているだろう。

 ふと、幼い頃の思い出がよみがえった。あの頃、彼女といつも一緒に遊んでいた幼馴染の悠斗。彼はどこにいるのだろうか、とぼんやり考えながら歩いていると、スマホが鳴った。

「もしもし、朱莉?」

「悠斗?どうして?」

「噂で聞いたんだ、会社のこと。それで、もし暇なら俺の家を手伝ってくれないかと思ってさ」

 朱莉は一瞬、何を言っているのか理解できなかった。悠斗の家と言えば、あの温泉リゾートのことだ。

「温泉リゾートのこと?」

「そうだよ、親父が突然倒れてさ、俺が跡を継ぐことになったんだ。色々手伝ってくれる人が必要なんだ。おまえ昔から要領よかったじゃん」

 ◇

 朱莉は悠斗の誘いを受け、彼の実家である「湯楽の里」へと足を運んだ。そこは古き良き日本の情緒あふれる温泉リゾートで、長年地域の人々に愛されてきた場所だ。しかし、経営は決して順調とは言えず、現代化の波に乗り遅れた感じがあった。

「朱莉、来てくれてありがとう!」

 悠斗が笑顔で迎えてくれた。彼は以前と変わらない笑顔を見せながらも、どこか責任感のある表情をしていた。

「悠斗、久しぶりね。大変そうだけど、大丈夫?」

「うん、なんとかやってるよ。でも、朱莉が手伝ってくれるなら心強いよ」

 二人は早速、温泉の清掃や接客、さらにはイベント企画など、様々な仕事を一緒にこなしていった。朱莉は久しぶりに働く喜びを感じ、また悠斗との時間を楽しむようになっていった。

 ◇

 ある日、朱莉は温泉の大浴場でお客様と話していた。

「この温泉、本当に気持ちいいですね。こんな素敵な場所を守るのは大変でしょう?」

「そうですね。でも、皆さんが喜んでくれるなら頑張れます」

 その時、悠斗がやってきて、にっこりと微笑んだ。

「朱莉、ありがとう。本当に助かってるよ」

 その夜、二人は湯上がりのビールを飲みながら語り合った。仕事の話、昔の思い出、そしてこれからの夢。自然と二人の距離は縮まっていった。

「朱莉、実は前から言いたかったことがあるんだ」

 悠斗の真剣な表情に、朱莉の心臓はドキドキと高鳴った。

「何?」

「ずっと、お前のことが好きだったんだ。子供の頃から、ずっと」

 朱莉は驚きの表情を浮かべたが、同時に嬉しさがこみ上げてきた。

「悠斗、私も。私もずっと、あなたのことが好きだった」

 その瞬間、二人の間にあった壁が一気に崩れ去った。温泉の湯煙の中で、二人は初めてのキスを交わした。
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