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光の回廊へ

2 信者の妄信

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 アッシュは、光の回廊の信者との会話のため、市場の一角にある小さな広場に足を運んだ。そこは、信者たちが集まり、日々の活動や信仰について語り合う場所として知られていた。空気は穏やかで、人々の間には和やかな雰囲気が漂っている。

「あなたもジャガン教祖の教えに導かれたのですね?」

 と、突然声をかけてきたのは、光の回廊の信者と思しき若い女性だった。彼女の目には、信仰に対する純粋な熱意が宿っている。

 アッシュは、彼女が自分を信者だと勘違いしていることに気づきつつも、この機会を利用して情報を得ることにした。

「そうですね。ジャガン教祖の教えには、本当に心を打たれます」と、適当に返事をした。

「本当にそうですよね!ジャガン教祖の言葉は、私たちの魂を照らす光。教祖との一対一の対話を通して、私は自分自身の罪と向き合い、真の救済を見出すことができました」

 と、信者の女性は目を輝かせながら語り続けた。

 アッシュは、彼女の言葉から感じ取れる熱意と信仰心を認めつつも、内心では冷静に分析していた。この信者は、教祖ジャガンに対する過度な依存と、個人の判断力が低下している兆候を示している。彼女の言葉の中には、自己の思考よりも教祖の言葉を優先する傾向が明確に見て取れた。

 アッシュは、会話を続けながら、女性の言葉の裏に隠された意味や、彼女がどのようにしてこの信仰に深く傾倒するに至ったのかを探る。

「それは素晴らしい体験ですね。でも、教祖との対話を経て、ご自分の考えや意見を持つことも大切だと思いませんか?」と、探りを入れるように尋ねた。

 信者の女性は一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、すぐに笑顔を取り戻し、

「ジャガン教祖の教えこそが真理です。私たちには、その指導に従うことが最善です」と、より一層の確信を持って答えた。

 このやりとりから、アッシュは「光の回廊」が信者に与える影響の深刻さを改めて認識した。信者たちは、教祖ジャガンの教えに完全に依存し、自己の判断力を失いつつある。アッシュは、この女性との会話を通じて得た情報をもとに、さらなる調査と対策を講じる必要があると感じた。

 ◇

 女性信者は、アッシュとの会話を終えると、ある建物へと足を進めた。そこには、ジャガン教祖が信者たちを前にして説教を行う大広間があった。中央には、高い椅子に腰掛けるジャガン教祖の姿がある。彼の目は、黒い帯のようなもので隠されており、その存在感は一層神秘的なものとなっていた。

 女性信者は、ジャガン教祖の前に膝をつき、頭を垂れた。

「教祖様、私は再びあなたのもとを訪れました。教えてください、私にできることは何ですか?」

 ジャガン教祖は、その場にいる全ての信者に聞こえるように、深い声で語り始めた。

「我が子よ、君が真の救済を求めるならば、心を完全に開き、私の言葉に従うことだ。疑いは闇であり、信仰こそが光である」

 教祖の言葉は、説得力と威厳に満ちていて、聞くものを魅了する力があった。彼は、目を隠す黒い帯の下からでも、信者たちの心を見透かすかのような雰囲気を漂わせていた。

 女性信者は、「はい、教祖様。私はあなたの言葉に従います」と、深い信仰心を示し、ジャガン教祖の教えをさらに深く受け入れることを誓った。

 ジャガン教祖は、女性信者を伴い、施設の深奥にある一室へと足を進めた。

 この部屋は、教祖と信者が一対一の対話を交わすための場所であり、その神秘的な雰囲気は、一歩足を踏み入れるだけで外界の喧騒から完全に隔絶されていることを感じさせた。

 部屋の中は薄暗く、角々に配置されたろうそくの炎が、壁に掛けられた神秘的な文言が書かれた古めかしい絵画を照らし出し、その輪郭を不気味に浮かび上がらせていた。部屋の中心には、小さなテーブルが置かれ、その上には怪しげな模様が描かれた布が広げられていた。

 空気は、焚かれたお香によって重く、甘く、そしてどこか不穏な香りで満たされていた。その香りは、心地よさと同時に、不安や緊張を掻き立てるようなものであった。

 ジャガン教祖は、女性信者に向かって、その深い声で静かに語りかけた。

「ここは、私たちの心が一つになる場所だ。お前の疑問や恐れ、すべてをここで打ち明けるのだ。ここでは、真実のみが存在する」
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