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闇ギルド調査

5 決行当日

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 当日の朝、イグナイトはノイマンに指示を出した。

「ノイマン、お前は会合場所の館に潜入し、我々闇ギルドのメンバーを手引きしろ」

 ノイマンはイグナイトの言葉に頷き、彼の指示に従うことを示した。

 同時に、イグナイトは館の周辺に火薬と油を載せた荷馬車をいくつか配置させた。これらの荷馬車は、一見するとただの移動手段に過ぎないが、その中には爆発を引き起こすための道具が詰め込まれていた。

 会合が始まると同時に、イグナイトは遠距離から極小の火球を投げ、荷馬車に火をつけた。火球の炎は荷馬車に瞬時に燃え移り、火薬と油が燃え上がり、巨大な爆発を引き起こした。

 館は一瞬で炎に包まれ、中にいた伯爵たちは逃げ場を失い、その場で命を落とした。その一方で、ノイマンは事前に指示されていた通り、安全な場所に身を隠していた。

 爆発の後、イグナイトはノイマンにすべての罪を着せ、彼を犯人として世間に晒す計画を進行させた。そして、自身は闇に消え、ほとぼりが冷めるのを待つことに…なるはずだった。

 しかし、計画は途中で頓挫した。イグナイトが遠距離から投げた極小の火球が途中で突如として消えたのだ。

「何だ?」イグナイトの声に驚きが混じった。

「なぜ火球が...」

 彼が再び火球を作り出そうとしても、何度試しても火球は途中で消えてしまう。彼の奇跡が突如として機能しなくなった理由は、彼自身にも分からなかった。

 イグナイトがノイマンに語った奇跡の制限は偽りだった。彼の火球は連続で作れるが、その回数には1日24回という制限があったのだ。

「なぜ? なぜ火球が消える...問題はないはずだ」

 彼の声は震え、動揺が隠せなかった。何度試しても、火球は途中で消え、荷馬車に火をつけることができなかった。

 その時、突然彼の視界が暗くなり、意識が飛んだ。何者かに後頭部を強く打たれ、気絶してしまったのだ。

 彼が目を覚ましたとき、ノイマンの冷静な声が耳に響いた。

「計画は中止だ。お前の計画だけは」

 その言葉を聞いて、イグナイトは驚きの表情を浮かべた。ノイマンが彼を拉致し、自身の計画を進行させていることを示唆するその言葉は、彼にとって全く予想外の事態だった。ノイマンは冷静さを保ちながら、自身の計画を冷徹に進めていた。

 ノイマンはイグナイトを郊外の廃屋に連れてきていた。彼はイグナイトの両手両足を厳重に縛り、さらに水を張った深い樽の中に沈めていた。

 イグナイトがその状況を知覚すると、彼は必死に抵抗しようとした。しかし、縛られて動けない彼はただ樽の中で暴れることしかできなかった。

「落ち着け、イグナイト」

 ノイマンの声は冷たく、容赦なかった。

「無駄な抵抗はやめろ」

 それでもイグナイトは抵抗を続けた。すると、ノイマンは無言で彼の頬を強く打った。その一撃により、イグナイトは一瞬で静かになった。

 ノイマンの冷徹な態度と行動は、彼がこれから何をしようとしているのかを明らかにしていた。彼はイグナイトを完全に制御下に置き、自身の計画を遂行するつもりだったのだ。

「奇跡を使えば、樽の水は突沸し、お前の顔は焼け爛れるだろう」とノイマンは冷静に告げた。その声には冷酷さが滲んでいた。

 彼はイグナイトの目の前にあるものを出した。それはイグナイトたちが用意していた馬車に載っていた油の瓶だった。

 イグナイトはその瓶を見て、ノイマンが考えていることを察した。彼の顔色が一瞬で青ざめ、身体が震え始めた。

 ノイマンは奇跡によってイグナイトの思考を共有していた。彼の恐怖、彼が何を考え、何を感じているのかを全て知っていた。その事実にイグナイトは、さらに恐怖に打ち震えた。

「仲間たちは私を探すだろう!」イグナイトが叫んだ。しかし、ノイマンは冷静に彼を見つめ、言った。

「俺が闇ギルドの仲間たちに計画は失敗したと伝えた。彼らはお前を探すことなど考えていない」

 ノイマンの冷たい言葉に、イグナイトは絶望的な表情を浮かべた。ノイマンはイグナイトの絶望の感情を共有し、彼の尋問を始めた。

「闇ギルドの構成、メンバー、活動内容...すべてを教えろ」

 イグナイトが答えるたびに、ノイマンは事務的に報告書に書き留めた。ノイマンの奇跡は、考えるだけで秘密を暴く凶悪なものだった。イグナイトはその事実に恐怖し、絶望した。

 そして、ノイマンは最後に一つ、重要な質問を投げかけた。

「"テンセイシャ"という人間を知っているか?」

 その名前は最近、奇跡の保有者が増えているという噂と共に囁かれていた。テンセイシャという人間が、その増加の原因であるというのだ。

 しかし、イグナイトは首を振った。

「知らない...そんな人間を知らない」

 ノイマンはその言葉に偽りがないことを感じ取り、少しガッカリした表情を浮かべた。彼が求めていた情報は、イグナイトからは得られなかったのだ。

 それでも、彼は冷静さを保ち続けた。そして、イグナイトの始末をするために、手に持っていた油の瓶を彼の顔に向けてそそいだ。

 ノイマンは慈悲のない目で、手に持ったろうそくの火をイグナイトに向けた。

「油で焼け死ぬか、樽の中に入って溺死するか、選べ」

 その冷酷な選択に、イグナイトは絶望した。彼にはどちらを選んでも、結果は死だけだった。


「なぜだ...なぜ...」彼の声は絶望に満ち、身体は震えていた。

「これで終わりだ、イグナイト」

 ノイマンは冷たい声で告げた。

「お前はもう逃げることも、抵抗することもできない」

 ノイマンの言葉に、イグナイトは絶望的な表情を浮かべた。彼の奇跡が機能しないこと、そしてノイマンの冷徹な態度と行動、すべてが彼の絶望を深めた。

「いや...いやだ...」彼は弱々しく叫んだ。しかし、その声も徐々に小さくなり、最後はただ無言で身を震わせるだけだった。

 そして、彼は絶望から逃れるために、最後の手段を選んだ。彼は自身の舌を噛み切り、その場で絶命した。

 ノイマンは、イグナイトの死体を冷静に見つめた。彼の顔色は一切変わらず、淡々とした態度を保ち続けた。彼の視線は、イグナイトの血で滲んだ舌に留まった。

「自分で命を絶つとは...意外だったな」

 ノイマンはつぶやいた。それは、イグナイトが自身で絶命を選んだことに対する驚きか、または彼の絶望の深さを評価した言葉だったのか。

 ノイマンは報告書を折りたたみ、ポケットにしまった。そして、彼はイグナイトの死体を始末するために、持っていた油の瓶を開けた。彼は彼の死体を樽から出して油をそそぎ、火をつけた。炎はたちまちイグナイトの身体を包み込み、彼の存在を焼き尽くした。

 その光景を見つめたノイマンの瞳は、冷たく、無情だった。彼は炎に焼かれるイグナイトの死体を見つめながら、静かに立ち去った。

 彼の足音は淡々と、冷静に響き、その場所を後にした。それが、ノイマンの冷酷さを象徴するような、無情な足音だった。
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