「吸血鬼に襲われたら焼肉屋に逃げ込め！！」

読み切り

「東京ヴァンパイア鬼ごっこ」

　ある夜、東京の迷宮のような路地裏で、私は運命的な出会いを果たす。その相手は、人間とは思えない速さで動く謎の存在――吸血鬼だった。しかし、この吸血鬼、意外にも人間の血を求めるよりは、何か異なる遊びを提案してきた。

「お前と鬼ごっこをしよう。朝までに俺を逃れられたら、お前の勝ちだ」

　私は、途方に暮れながらも、この不条理な状況に挑む決意を固める。吸血鬼の弱点は日光。だから朝まで生き延びれば勝ち。そう自分に言い聞かせ、夜の都市を駆け巡る。しかし、彼がどれだけ巧みに逃げようと、吸血鬼はいつも一歩先を行く。そしてついに、私は角を曲がったところで吸血鬼に捕まってしまう。

「次の鬼はお前だ」

　と吸血鬼は宣言する。一瞬のうちに、私は吸血鬼へと変わり果て、今度は私が新たな獲物を追う立場となる。この瞬間、私は悟る。自分がこのゲームから抜け出しても、世界のどこか別の場所でまた新たな「鬼」と「鬼ごっこ」が始まる。この永遠に終わらない追いかけっこは、まるで地獄そのもののようだ。