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読み切り
強烈な光と言えば、あそこしかない~ 東京夜譚:推しと吸血鬼のコンサート~
しおりを挟む東京の夜はいつも通り、ネオンの海に溶け込んでいた。しかし、この夜は私にとって特別だった。推しが卒業コンサートを開く夜だ。だが、その特別な夜が、予想外の出来事で始まった。
裏路地を抜け、コンサート会場へと急ぐ途中、奇妙な男に遭遇した。彼の肌は月光に照らされても蒼白く、その目は深く、暗い夜そのものだった。まさかと思ったが、すぐに理解した。吸血鬼だ。
「面白いゲームをしよう」と彼は提案した。
「鬼ごっこだ。私が君を追い、君が逃げる。君が夜明けまで生き延びたら、勝ちだ」
こんなデスゲーム、冗談じゃない。私は推しの卒業コンサートに行くんだ。そんなことより大事なことがある。そう決意し、彼を無視してその場を離れた。吸血鬼の弱点は日光。だが、アイドルコンサートなら、ステージの光はそれに匹敵するほど強い。そう考えると、私の心は少し軽くなった。
コンサートが始まると、私は感動で一杯になった。推しの歌声、ダンス、彼女の存在そのものが、私の心を揺さぶった。隣の客も同じようにサイリウムを振りながら感動しているようだった。
しかし、よく見ると、その客は他ならぬ例の吸血鬼だった。
瞬間、私の心臓は跳ねた。だが、彼は微笑みながら私に囁いた。
「音楽は、魂を震わせる力がある。私の命は永遠だが、推しが歌うのは一瞬だ!」
驚いたことに、彼はコンサートを通じて、一切の悪意を見せず、ただ純粋に音楽を楽しんでいるようだった。コンサートが終わり、会場の光が消えると同時に、彼は私に向かって深々とお辞儀をした。
「今宵は楽しませてもらった。ぶしつけだが、お前が買った卒コン記念Tシャツを譲ってくれないだろうか?貴様を探していて買えなかったのだ」
「は、はい。どうぞ」
「感謝するぞ。人間よ」
そう言って、彼は闇に溶け込んでいった。
私はその場に立ち尽くし、何が起こったのかを理解しようとしたが、結局、全てが夢のように感じられた。だが、一つだけ確かなことがあった。音楽は、人間だけでなく、吸血鬼の心にも、光をもたらす力があるということだ。
それからというもの、私は夜道を歩くたびに、あの吸血鬼の言葉を思い出す。そして、音楽の力を信じ、どんな闇の中でも、光を見出す勇気を持つようになった。
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