「吸血鬼に襲われたら焼肉屋に逃げ込め！！」

読み切り

流れる水（シャンパンタワー）、銀つまりシルバーアクセサリー（ク〇ムハーツ）を持つ男がいる．．．そうホストクラブ！！！

　東京の深夜、人通りが途絶えた瞬間、私は彼女に遭遇した。彼女は美しく、危険な香りを放つ女性吸血鬼だった。彼女の提案はシンプルで、恐ろしいものだった。

「鬼ごっこをしましょう。あなたが夜明けまで生き延びれば、勝ちです」

　私の心臓はバクバクと高鳴り、頭の中は計画でいっぱいになった。

　吸血鬼の弱点は日光、流れる水、十字架、そして銀。これらを兼ね備えた場所．．．その場所が頭に浮かんだ。煌びやかなホストクラブだ。

　私は足を踏み出し、夜の街を駆け抜けた。時折後ろを振り返ると、彼女が優雅に、しかし確実に距離を詰めてくる。彼女は楽しんでいるようだった。私にとっては生死をかけた逃走だが、彼女にとっては単なる遊びだったのだ。

　ホストクラブ「ネオンの楽園ヘブン」に辿り着いた時、入口で華やかなスーツを着た男性が微笑んで迎えてくれた。

「こんな夜更けに、どうしたの？」

「ちょっと、特別な逃げ場を探しているんです」

　私は息を切らしながら答えた。

　店内には、シャンパンタワーが煌びやかに輝き、壁には十字架の装飾が施されていた。そして、ホストたちは全員、銀のアクセサリーを身につけている。まさに、吸血鬼の弱点を全て兼ね備えた場所だ。

　煌びやかな照明の下、私はホストたちに囲まれていた。彼らの鮮やかなスーツ、洗練された振る舞い、そして何よりも、耳に心地よく響く甘いトーク。これほどまでに心を奪われるとは思わなかった。彼らは私に特別な気分を味わわせてくれる。それは、一時の安らぎであり、夜の恐怖からの逃避でもあった。

　しかし、その時、扉が静かに開いた。入ってきたのは、彼女―夜の支配者、美しき女性吸血鬼だった。

　この店のNo.1ホストのセイジは、女性吸血鬼が入ってくるとすぐに彼女の異質な美しさに気づき、彼女に近づいた。彼の動きは滑らかで、彼の目は彼女を捉え放さない。彼は彼女の前に立ち、エレガントに一礼をし、優雅に言葉を紡ぎ始める。

「こんばんは、この輝かしい夜に私たちのクラブを訪れてくださり、光栄です。セイジと申します」

　セイジの声は、まるで音楽のように彼女の耳に響く。

「あなたのような美しい方をここでお迎えできるなんて、私たちにとっても特別な夜となりそうです」

　女性吸血鬼は、セイジの言葉に少し驚きながらも、彼の誠実さに心を開いた。

「ありがとう、セイジ。こんな場所初めてだわ。まるで、時間が違うように流れるみたいだわ。永遠を生きる吸血鬼の私が時間を感じるなんてね」

　セイジは微笑み、彼女の目を見つめながら答えた。

「そうですね。ここでは、時間が私たちの味方になります。あなたが望むなら、この一瞬を永遠にすることもできる。あなたのために、最高の夜を提供したい。あなたの好きな音楽は何ですか？」

　彼女は思わず微笑み、「クラシックが好きよ。でも、あなたの選ぶ音楽なら何でも聞いてみたい」

　セイジは彼女の言葉に心を動かされ、「では、私の選曲であなたを驚かせてみせます」と言い、彼女を特別な席へと案内した。彼はソフトなクラシック音楽を選び、彼女が心地よく感じるように照明を調整した。

「吸血鬼という存在は、永遠の時間を生きる。そんなあなたにとって、時間とはどのようなものですか？」

　セイジは彼女の目を見つめながら、心からの興味を持って尋ねた。

　女性吸血鬼は、セイジの深い理解と興味に心を打たれた。

「時間は、時には友であり、時には敵。でも、今夜ここにいると、時間が美しいものに感じる。君と過ごす時間は、特別な意味を持つわ」

　セイジは彼女の言葉に感謝し、「あなたと共に過ごす時間を大切にします。私たちの今夜が、美しい記憶となるように」と優しく言った。

　彼らの会話は夜を通して続き、二人の間には深い理解と共感が生まれた。セイジは女性吸血鬼を完全に魅了し、彼女はこの一夜を永遠に心に刻むことになる。