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第253話 そう言っておいたほうが、丸くおさまる
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「わあ、ありがとうございます! 嬉しいです」
佐野は心境が穏やかではないながらも、破顔でオーナーに礼を言う。
「いえいえ。私もこの件については少しばかりお手伝いをさせていただきましたので」
オーナーは微妙な笑顔で返す。
だが佐野は、その中途半端な表情の理由をここに来るまでの道中でユキから聞いているので、逆にその気づかいに感謝する。
「ああ! クッキーはこちらで作ったと聞いております」
とにかくここでの話は全てきれいに終らせようと、佐野はにこやかに言葉を羅列する。
「メッセージ付きの力作ゆえ、もったいなくて、まだ食べておりませんが」
なのでこれも当然のごとく大嘘だ。
想定外の内容と小汚い文字に気が動転し、食べるという概念すら起きなかったのだが、そう言っておいたほうが各方面において丸くおさまるからだ。
「ケイ。実はな、包装紙もオーナーから譲ってもらったんだよ」
虚実入り交じった佐野の言葉に笑いを噛み殺しながらユキが言う。
「え」
佐野の脳裏に、金ラメの地にピンクのハート模様の悪趣味な包装紙が浮かぶ。
「俺がオーナーに、キャラメル・フェアリーや花壇で廃棄する予定の包装紙があったら分けて欲しいって頼んだんだ。ほら、車の中で言っただろ? クリスマスプレゼントとしてケイに送りたいからって」
ならば間違いなく花壇だろう。佐野はかように予想する。
あのような熱苦しい模様の包装紙で、ゲイバーならではのジョークグッズを包み、クリスマスやカウントダウンパーティーをさぞかし盛り上げたに違いない――と。
佐野は心境が穏やかではないながらも、破顔でオーナーに礼を言う。
「いえいえ。私もこの件については少しばかりお手伝いをさせていただきましたので」
オーナーは微妙な笑顔で返す。
だが佐野は、その中途半端な表情の理由をここに来るまでの道中でユキから聞いているので、逆にその気づかいに感謝する。
「ああ! クッキーはこちらで作ったと聞いております」
とにかくここでの話は全てきれいに終らせようと、佐野はにこやかに言葉を羅列する。
「メッセージ付きの力作ゆえ、もったいなくて、まだ食べておりませんが」
なのでこれも当然のごとく大嘘だ。
想定外の内容と小汚い文字に気が動転し、食べるという概念すら起きなかったのだが、そう言っておいたほうが各方面において丸くおさまるからだ。
「ケイ。実はな、包装紙もオーナーから譲ってもらったんだよ」
虚実入り交じった佐野の言葉に笑いを噛み殺しながらユキが言う。
「え」
佐野の脳裏に、金ラメの地にピンクのハート模様の悪趣味な包装紙が浮かぶ。
「俺がオーナーに、キャラメル・フェアリーや花壇で廃棄する予定の包装紙があったら分けて欲しいって頼んだんだ。ほら、車の中で言っただろ? クリスマスプレゼントとしてケイに送りたいからって」
ならば間違いなく花壇だろう。佐野はかように予想する。
あのような熱苦しい模様の包装紙で、ゲイバーならではのジョークグッズを包み、クリスマスやカウントダウンパーティーをさぞかし盛り上げたに違いない――と。
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