かなり遅れたクリスマス～最悪な出逢いから始まる、人生の大逆転と恋の予感の物語

第１５９話 最悪な場数を踏みすぎると、こうなる

　その経緯は、こうだ。　
　受注した工事物件を管理する立場の星崎は、社長への点数稼ぎで実行不可能な施工スケジュールを組み、それを部下へ丸投げした。
　資材の発注にかかる期間も、施工に要する日数も無視し、通常でも一か月は必要なところを半月で完成させる工事工程表を作成したのだ。
　もちろん、実状を知らない発注者はとても喜んだ。社長も鼻高々で、星崎を誉めそやす。
　だが、それを押しつけられた部下はたまったものではない。当然のごとく突貫工事となり、星崎以外の工事部員は他の現場を担当しながら、その現場を手伝うはめとなった。
　しかも星崎は施工に一切関与せず、自分のことを棚に上げ、少しでも工程表通りに進んでいないと知れば部下を怒鳴り、暴力をふるった。
　もちろん佐野達も数え切れないくらい廃材や工具を投げつけられ、鈴木に至っては星崎に意見して激怒させ、口の中を切るほど殴られた。
　佐野は、そんな修羅場極まりない突貫工事の場数を踏んでいるので、今回の急な工期短縮に対して冷静でいられた。それを乗り越えられる自信すらあった。
　冷ややかな目で見られているものの、罵詈雑言や暴力がない分、作業に集中できるからだ。