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第95話 どうにもこうにも後味が悪い 

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「すまん。俺が調子に乗って社長に暴露しまくったからだ」
 ユキが首の後ろをさすりながら、申し訳なさそうに言う。
「いいえ。田上課長が仮にあの時暴露しなくても、星崎の悪行はもうあちこちに知れ渡っています。だから橋本社長の耳に入るのは時間の問題です。それがちょっと早くなっただけです」
 これは事実だ。個人的な恋愛感情に溺れてユキを擁護しているのではない。
「レイナのシュレッダー事件も、鈴木の解雇も、人件費の異常なつり上げも、関係業者はすでに知っています。多分、もう他のゼネコンの耳にも入っているかと」
「……まあ、十中八九そうだろうな」
「でしょう? なのでどっちにしろ、うちの会社は苦境に立たされることになるんです。だからどうか気にしないで下さい」
 佐野は気丈に話す。しかし頭の片隅で、平日の昼間、自分の部屋で求人情報誌を熟読している己の姿がハッキリと浮かぶ。
  不吉な予感。正月にはふさわしくないイメージ画
像だ。
 けれど今ごちゃごちゃ考えてもどうにもならない。また、社長や取締役達へ電話して相談する気も全く起きない。彼らは完全に星崎側の人間だからだ。そうでなければ鈴木の解雇をあっさり承認するはずがない。
「とりあえず、お昼ご飯、買いに行きましょう」
 佐野は、表情を曇らせているユキへ努めて明るい口調で言う。
「うん」
 促されるままユキは腰を上げる。
 星崎をレイナもろともとっちめたはずなのに、どうにも後味が悪い二人であった。
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