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スローライフ始めます?
その5
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「……な、なっ」
少年の顔がみるみる真っ赤になるのに、私は首を傾げた。
何故に赤くなる。
「あら、マイロード。稚児にするのですか?」
「…………」
ちご?
稚児?
今度は私は顔を赤くする番だった。
「ち、ちっがーう!そんなんじゃなくって!!」
んなわけないっつーの!
私、自慢じゃないけどキスもまだだよ?
男女関係ったら魔力の受け渡しで手を握ったくらいだっつーのっっ!?
焦った私は少年の顔を挟んだままブンブンと両手を振り回した。
一緒に少年の顔もぐにゃぐにゃと揺れる。
「はあ、はあ、そういうんじゃなくてっ。その、行くとこないならうち来る?みたいな?メイド……じゃない。使用人にでもしてあげてもいいかなー?くらいのノリで」
ヤバい。
心臓バックンバックンいってるし。
私は息を切らしながら必死に弁解した。
だって恥ずかし過ぎる!!
「ふざけるなっ!」
怒気に満ちた声とともに、手首を強い力で握られた。
「……っ」
魔族といっても、身体能力そのものは人間とろくに変わらない。
私にしても純粋な腕力そのものは18才の女のものだ。
12、3の少年とはいえ男。
18にしては小柄な女子の私。
本気を出されたら力では負けるらしいというのを知った。
「マイロード!」
「『ルーシア』やめなさい」
今にも射殺さんとばかりの目で少年を見る『ルーシア』をとりあえず止めた。
うちの子にするかどうかはともかく、情報をまだ何も聞き出していないのだ。
それに、せっかく助けたしね。
「少年。命の恩人に対して暴力はよろしくないと思うよ?」
「嘘をつくなっ!魔族がっ!?そんなわけ」
「だったらなんで少年は生きてるの?」
私がそう言うと、少年は呆けたような顔をした。腕の力も少し緩んだので、そのうちに手を抜け出させる。
ちょっとヒリヒリするな。
「私が見つけた時、少年は怪我をしてた。あのままだったら確実に血を失い過ぎて死んでたよ」
「……それは」
少年は目にうろたえて、視線を彷徨わせた。
その目が自身の胸から腹へと這う。
傷は消えているけど切れて破れた騎士服はそのままで、そこには大量の血の痕もばっちりついたまま。
「……本当に、おまえが助けてくれたのか?」
「逆に聞くけど他に誰がいるの?」
この場にいるのは少年と私と『ルーシア』だけ。
少年を襲っていた傭兵たちがわざわざ少年を治してから姿を消した、なんてのは不自然すぎる。
「それと私はユナって言うの。おまえじゃないわ」
「だったら俺だって……」
「ん?」
「--クルドだ。俺の名前」
「そう。クルド」
私はクルドとまっすぐに視線を合わせた。
「私は見ての通り魔族だけど、別に人間や人間の国をどうこうしようとは思っていないのよ。ちょっと訳ありでね。国から逃げてきたの」
逃げてきた、という私の言葉に大きく紫陽花色の瞳を見張るクルド。
やっぱりキレイ。
澄んだ瞳の色に何故か胸がドキドキした。
おかしいな、私は決して年下趣味なわけではないはずなのだけど。
あんまりキレイな色だから。
うん、きっとだからだ。
「あなたを助けたのはこれから人間の中で生きていくために情報がほしかったから。私、ほとんど魔族領から出たことがないのよ」
「逃げたってなんで」
「まあ色々あるのよ。色々とね。……って言うか聞いてくれる?」
ついでだ。
ちょっとばかりグチらせてもらってもいいかしら?
少年の顔がみるみる真っ赤になるのに、私は首を傾げた。
何故に赤くなる。
「あら、マイロード。稚児にするのですか?」
「…………」
ちご?
稚児?
今度は私は顔を赤くする番だった。
「ち、ちっがーう!そんなんじゃなくって!!」
んなわけないっつーの!
私、自慢じゃないけどキスもまだだよ?
男女関係ったら魔力の受け渡しで手を握ったくらいだっつーのっっ!?
焦った私は少年の顔を挟んだままブンブンと両手を振り回した。
一緒に少年の顔もぐにゃぐにゃと揺れる。
「はあ、はあ、そういうんじゃなくてっ。その、行くとこないならうち来る?みたいな?メイド……じゃない。使用人にでもしてあげてもいいかなー?くらいのノリで」
ヤバい。
心臓バックンバックンいってるし。
私は息を切らしながら必死に弁解した。
だって恥ずかし過ぎる!!
「ふざけるなっ!」
怒気に満ちた声とともに、手首を強い力で握られた。
「……っ」
魔族といっても、身体能力そのものは人間とろくに変わらない。
私にしても純粋な腕力そのものは18才の女のものだ。
12、3の少年とはいえ男。
18にしては小柄な女子の私。
本気を出されたら力では負けるらしいというのを知った。
「マイロード!」
「『ルーシア』やめなさい」
今にも射殺さんとばかりの目で少年を見る『ルーシア』をとりあえず止めた。
うちの子にするかどうかはともかく、情報をまだ何も聞き出していないのだ。
それに、せっかく助けたしね。
「少年。命の恩人に対して暴力はよろしくないと思うよ?」
「嘘をつくなっ!魔族がっ!?そんなわけ」
「だったらなんで少年は生きてるの?」
私がそう言うと、少年は呆けたような顔をした。腕の力も少し緩んだので、そのうちに手を抜け出させる。
ちょっとヒリヒリするな。
「私が見つけた時、少年は怪我をしてた。あのままだったら確実に血を失い過ぎて死んでたよ」
「……それは」
少年は目にうろたえて、視線を彷徨わせた。
その目が自身の胸から腹へと這う。
傷は消えているけど切れて破れた騎士服はそのままで、そこには大量の血の痕もばっちりついたまま。
「……本当に、おまえが助けてくれたのか?」
「逆に聞くけど他に誰がいるの?」
この場にいるのは少年と私と『ルーシア』だけ。
少年を襲っていた傭兵たちがわざわざ少年を治してから姿を消した、なんてのは不自然すぎる。
「それと私はユナって言うの。おまえじゃないわ」
「だったら俺だって……」
「ん?」
「--クルドだ。俺の名前」
「そう。クルド」
私はクルドとまっすぐに視線を合わせた。
「私は見ての通り魔族だけど、別に人間や人間の国をどうこうしようとは思っていないのよ。ちょっと訳ありでね。国から逃げてきたの」
逃げてきた、という私の言葉に大きく紫陽花色の瞳を見張るクルド。
やっぱりキレイ。
澄んだ瞳の色に何故か胸がドキドキした。
おかしいな、私は決して年下趣味なわけではないはずなのだけど。
あんまりキレイな色だから。
うん、きっとだからだ。
「あなたを助けたのはこれから人間の中で生きていくために情報がほしかったから。私、ほとんど魔族領から出たことがないのよ」
「逃げたってなんで」
「まあ色々あるのよ。色々とね。……って言うか聞いてくれる?」
ついでだ。
ちょっとばかりグチらせてもらってもいいかしら?
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