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ガタガタと身に覚えのない震動が身体を小刻みに揺らしている。
馬車のものとも、ガルーダの背で受けるそれとも微妙に違う。
身体に感じる節々の痛み。
二度寝をした後のようやく気だるさがある。
カティはゆっくりと目を開けた。
低い飴色の天井に低い位置に付けられた窓。
窓の外の景色はあっという間に流れて過ぎ去っていく。
(電車?)
『だな、電車っつーか、汽車だけど』
頭の中に聞こえてくる祐樹の声にボヤけていた意識が覚醒していく。
(・・・え?汽車って魔導列車?)
いつの間に?
カティが覚えているのはペルージからゴルディアに向かう途中の小島までだ。
確か島に降りて魔物が襲ってきて・・・。
戦闘しようとしたもののカティは気分が悪くて。
(戦闘どころか吐いて、動けなくなって)
魔物はフラウたちが殲滅させていたはずだ。
その辺りまでは記憶にある。
が、その辺りから記憶がすっぽり抜けているようだ。
カティは座席の一つに寝かされていた。
個室のようで、向かい合わせに長椅子が設置され、壁側には座った頭の位置に窓がついている。
向かいの座席にはフラウ、クリス、リリスの三人が座っていて、何故か一番窓際で外を覗いているリリスの耳が赤い。
寝かされているカティと同じ座席にはテディが座っていて、カティの頭はその太ももに置かれていた。
ふわふわした毛が頬に触れて少しくすぐったい。
ついでに微妙に獣臭くてカティは違和感を感じた。
なんとなく覚醒仕掛けた頭の中でこれとは違う良い匂いを嗅いでいた気がするのだが。
頬に触れる感触ももっと弾力のある柔らかさで・・・。
「ご主人様、起きたのです?」
「ホントだ。お兄起きたー?」
ごそごそ頭を動きしていたらフラウたちが気付いてそれぞれ声を上げた。
「う、ん、俺いったいどれだけ寝てた?」
起き上がると腹からぐーっと音が鳴った。
ずいぶん長く何も食べていない感じがする。
お腹がペコペコだ。
「んーっと、二日くらい」
「ご主人様島で寝てからずっーと寝てたのです」
「そんなに?」
さすがにびっくりする。
二日って寝すぎっていうかちょっとおかしくないか?
「つ、疲れがたまってたんじゃない?ガルーダにステータスを確認してもらった分には問題はなかったもの」
どことなく刺のある物言いで窓の外を見たままリリスが言う。
(ーー?)
なんか様子が変?
「リリちゃんはずーっと心配してたですよ。さっきまでご主人様を膝枕してたのですよ?」
「っ!だからそれは言っちゃダメって!」
「あ。そうだったのです」
顔を背けたままのリリスのうなじが真っ赤だ。
髪を高い位置で結っているから、白いうなじから首のラインが丸見えで、うっすらと赤く染まっているのがよくわかる。
「・・・そっか、ありがと」
カティもまた頬が熱くなるのを自覚しながら小さく礼を言った。
さっき感じた違和感はそのせいだったのだと思いながら。
あのいい匂いと柔らかい感触はリリスのものだったのだ。
『ちょっとラッキーだったな?』
(べべ別に?)
祐樹の声にそう返して、カティはリリスと同じように窓の外へ視線を反らした。
そうしないと目が自然とリリスの太ももに行ってしまいそうだったから。
馬車のものとも、ガルーダの背で受けるそれとも微妙に違う。
身体に感じる節々の痛み。
二度寝をした後のようやく気だるさがある。
カティはゆっくりと目を開けた。
低い飴色の天井に低い位置に付けられた窓。
窓の外の景色はあっという間に流れて過ぎ去っていく。
(電車?)
『だな、電車っつーか、汽車だけど』
頭の中に聞こえてくる祐樹の声にボヤけていた意識が覚醒していく。
(・・・え?汽車って魔導列車?)
いつの間に?
カティが覚えているのはペルージからゴルディアに向かう途中の小島までだ。
確か島に降りて魔物が襲ってきて・・・。
戦闘しようとしたもののカティは気分が悪くて。
(戦闘どころか吐いて、動けなくなって)
魔物はフラウたちが殲滅させていたはずだ。
その辺りまでは記憶にある。
が、その辺りから記憶がすっぽり抜けているようだ。
カティは座席の一つに寝かされていた。
個室のようで、向かい合わせに長椅子が設置され、壁側には座った頭の位置に窓がついている。
向かいの座席にはフラウ、クリス、リリスの三人が座っていて、何故か一番窓際で外を覗いているリリスの耳が赤い。
寝かされているカティと同じ座席にはテディが座っていて、カティの頭はその太ももに置かれていた。
ふわふわした毛が頬に触れて少しくすぐったい。
ついでに微妙に獣臭くてカティは違和感を感じた。
なんとなく覚醒仕掛けた頭の中でこれとは違う良い匂いを嗅いでいた気がするのだが。
頬に触れる感触ももっと弾力のある柔らかさで・・・。
「ご主人様、起きたのです?」
「ホントだ。お兄起きたー?」
ごそごそ頭を動きしていたらフラウたちが気付いてそれぞれ声を上げた。
「う、ん、俺いったいどれだけ寝てた?」
起き上がると腹からぐーっと音が鳴った。
ずいぶん長く何も食べていない感じがする。
お腹がペコペコだ。
「んーっと、二日くらい」
「ご主人様島で寝てからずっーと寝てたのです」
「そんなに?」
さすがにびっくりする。
二日って寝すぎっていうかちょっとおかしくないか?
「つ、疲れがたまってたんじゃない?ガルーダにステータスを確認してもらった分には問題はなかったもの」
どことなく刺のある物言いで窓の外を見たままリリスが言う。
(ーー?)
なんか様子が変?
「リリちゃんはずーっと心配してたですよ。さっきまでご主人様を膝枕してたのですよ?」
「っ!だからそれは言っちゃダメって!」
「あ。そうだったのです」
顔を背けたままのリリスのうなじが真っ赤だ。
髪を高い位置で結っているから、白いうなじから首のラインが丸見えで、うっすらと赤く染まっているのがよくわかる。
「・・・そっか、ありがと」
カティもまた頬が熱くなるのを自覚しながら小さく礼を言った。
さっき感じた違和感はそのせいだったのだと思いながら。
あのいい匂いと柔らかい感触はリリスのものだったのだ。
『ちょっとラッキーだったな?』
(べべ別に?)
祐樹の声にそう返して、カティはリリスと同じように窓の外へ視線を反らした。
そうしないと目が自然とリリスの太ももに行ってしまいそうだったから。
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