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カティたちがその町に着いた時、空からは小粒の雨が降り始めていた。
ドワーフの町、セルベア。
人間国家のペルージの中でその町は人間以外の種族がもっとも多い町だと言われている。
大きな身体と生まれもっての鍛冶スキルを種族の血の中に与えられた亜人間と呼ばれる種族。
それがドワーフだ。
ペルージ王都への道程の途中に広がる針葉樹の森。
その地層の下に眠る鋼石という鉱石は、加工しやすく錬成すると非常に硬くかつ魔力伝導率が高い。
セルベアに住むドワーフたちはペルージの国に雇われた鍛冶職人である。
「おっきい人がいっぱいですー!」
ドワーフは身体が大きく怪力だが穏やかな気質を持つ種族であることでも知られている。
石造りの平屋が並ぶ町のあちこちにはその気質を表すような小さな花の咲く花壇がいくつもあり、町の東側からは屋根の煙突から白い煙がたなびいていた。
「この町は区域によって居住区や鍛冶場、商店街や宿街と別れてるの。あの煙が見えてるあたりが鍛冶場。職人の工房が並んでるわ。冒険者が利用するのは主に町の南側と西側ね。南側が宿街、西側が商店街ね」
リリスに説明されながら町の中心を貫く大通りを歩く。
ほぼ正方形に作られた町のまん中には木々の生い茂る噴水公園があるらしく、カティたちはそこで一先ず昼食をとることにした。
公園の側の露店でサンドイッチを買い、ベンチに腰掛けて噴水を眺める。
空は雨が降っているが、公園内は透明のガラスで覆われた植物園のような造りになっているため濡れることはない。
しとしとと降る雨音だけが遠くから聞こえてくる。
『キレイな町だなー』
頭の中でため息を着く佑樹の声にカティも無言で同意した。
「町自体もドワーフの職人たちが造ったものだから、建築技術も凄いのよねー。このガラスのドームだってペルージでもここにしかないらしいわよ」
「しばらく観光したい気分だな」
「残念ながらその時間はないけどね」
明日には町を出て森に入る予定になっている。
普通ならこの町から馬車に乗って森を迂回して進むのだが、カティたちはしばらく森の中を進んで人目がない場所でガルーダに乗せてもらう予定だ。
「さて、食べ終わったら今日の宿を探しに行きましょうか」
くしゃりとサンドイッチの包みを手の中で潰して、リリスが立ち上がる。
「宿で落ち着いたら約束どおりガチャとやらを見せてもらうわよ!」
リリスはカティたちのスキルであるガチャに興味があるらしく、間近で見るのを楽しみにしているようだ。
「わかってるよ」
ガチャポイントも貯まっているので問題はない。
『ま、でも先にステータスの確認からかな』
連日のクエストでバタバタした出発になったため、最低限のレベルの確認くらいしか出来ていない。
とりあえずカティはなんとかレベル20を越えたところだ。
『漫画が出たらいいなー』
(また言ってんのかよ)
呆れ声で突っ込みながらもカティもまた何が出るかと楽しみではある。
前回でのレアガチャでは風切り刀という武器と首から下げた魔力増加(少)のアクセサリーが出たが、ノーマルガチャではビールくらいしか嬉しいものは出ていない。
(・・・うん。漫画もまた読みたいな)
カティはそんなことを思いながら先に行くリリスの背をフラウ、テディと並んで追った。
ドワーフの町、セルベア。
人間国家のペルージの中でその町は人間以外の種族がもっとも多い町だと言われている。
大きな身体と生まれもっての鍛冶スキルを種族の血の中に与えられた亜人間と呼ばれる種族。
それがドワーフだ。
ペルージ王都への道程の途中に広がる針葉樹の森。
その地層の下に眠る鋼石という鉱石は、加工しやすく錬成すると非常に硬くかつ魔力伝導率が高い。
セルベアに住むドワーフたちはペルージの国に雇われた鍛冶職人である。
「おっきい人がいっぱいですー!」
ドワーフは身体が大きく怪力だが穏やかな気質を持つ種族であることでも知られている。
石造りの平屋が並ぶ町のあちこちにはその気質を表すような小さな花の咲く花壇がいくつもあり、町の東側からは屋根の煙突から白い煙がたなびいていた。
「この町は区域によって居住区や鍛冶場、商店街や宿街と別れてるの。あの煙が見えてるあたりが鍛冶場。職人の工房が並んでるわ。冒険者が利用するのは主に町の南側と西側ね。南側が宿街、西側が商店街ね」
リリスに説明されながら町の中心を貫く大通りを歩く。
ほぼ正方形に作られた町のまん中には木々の生い茂る噴水公園があるらしく、カティたちはそこで一先ず昼食をとることにした。
公園の側の露店でサンドイッチを買い、ベンチに腰掛けて噴水を眺める。
空は雨が降っているが、公園内は透明のガラスで覆われた植物園のような造りになっているため濡れることはない。
しとしとと降る雨音だけが遠くから聞こえてくる。
『キレイな町だなー』
頭の中でため息を着く佑樹の声にカティも無言で同意した。
「町自体もドワーフの職人たちが造ったものだから、建築技術も凄いのよねー。このガラスのドームだってペルージでもここにしかないらしいわよ」
「しばらく観光したい気分だな」
「残念ながらその時間はないけどね」
明日には町を出て森に入る予定になっている。
普通ならこの町から馬車に乗って森を迂回して進むのだが、カティたちはしばらく森の中を進んで人目がない場所でガルーダに乗せてもらう予定だ。
「さて、食べ終わったら今日の宿を探しに行きましょうか」
くしゃりとサンドイッチの包みを手の中で潰して、リリスが立ち上がる。
「宿で落ち着いたら約束どおりガチャとやらを見せてもらうわよ!」
リリスはカティたちのスキルであるガチャに興味があるらしく、間近で見るのを楽しみにしているようだ。
「わかってるよ」
ガチャポイントも貯まっているので問題はない。
『ま、でも先にステータスの確認からかな』
連日のクエストでバタバタした出発になったため、最低限のレベルの確認くらいしか出来ていない。
とりあえずカティはなんとかレベル20を越えたところだ。
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(また言ってんのかよ)
呆れ声で突っ込みながらもカティもまた何が出るかと楽しみではある。
前回でのレアガチャでは風切り刀という武器と首から下げた魔力増加(少)のアクセサリーが出たが、ノーマルガチャではビールくらいしか嬉しいものは出ていない。
(・・・うん。漫画もまた読みたいな)
カティはそんなことを思いながら先に行くリリスの背をフラウ、テディと並んで追った。
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