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ヤルジの町に戻る前に武器屋に寄ることにした。
ヤルジの町には回復ポーションや解毒薬等ダンジョンに必須なアイテム類は多いが武器や防具はあまりないと聞いたからだ。まあダンジョンに入ろうという冒険者ならすでに武器や防具は揃えていて当然だからだろう。
カティの使用するナイフと薄手の胸当て、籠手はすでにリューレルートで購入済みなので、今回買うのはフラウの分。
さすがに幼児向けサイズの鎧だのはないので、見るのはナイフか短剣。短剣と言ってもフラウが持てば立派な大剣だが、フラウの力ならば振り回すこともできるだろう。
(フラウどんなのがいい?)
幼児に持たせる剣を買うとはさすがにおおっぴらには言えないので、頭の中でこっそりと訪ねる。
〈大きくてかっこいいのがいいです〉
何だろう。
フラウは妙に好戦的というか、ちょっと怖いというか。
『重さはあってもいいけど、あんまりでかくはない方がいいかもな。どっちかってーと、細身なのがいいだろ』
ううむ、とカティは唸りながら壁に掛けられた剣を見て回る。
「あ、あれはどうでしょうか!かっこいいです!」
言って走り出したフラウの背を追いかける。
フラウが「これです!」と指し示したのは変わった形の、剣?
細身の柄の先にギザギザの刃がいくつも連なっている。
『変わった武器だな』
「おっ、嬢ちゃんいい趣味だな」
佑樹の声に重なるようにして店の店主が笑いながら話しかけてくる。厳つい筋肉の塊みたいなおやじだ。
「そいつは魔族がたまに使う蛇咬剣って武器でな、剣っていうより刃を繋いだ鞭だ。扱いは難しいが、威力はある。だが、使うのはそっちの坊主か?」
「あー、まあ」
「なら止めといた方がいいかもな。扱いきれん」
「そんなに難しいんですか?」
「ああ。こいつは十五個の刃を魔石鋼糸で繋ぎ合わせてある。この糸を伸ばせば鞭のように、縮めれば剣、というかノコギリのような切り方になるんだが、まあ剣として使える。だが見た目よりも重いしコツが必要な上、何より魔力操作で糸を操るんで魔力が低いと全く役にたたんという代物だよ」
ずいぶん前に魔族領で面白いと思って仕入れてきたんだが、使える人間がいないからずっと売れ残っているのだと店主は苦笑いした。
〈フラウこれがいいです!大丈夫です!魔力もあるし、使えると思うのです〉
「ええと、ちなみにいくらですか?」
「金貨10枚だが、このまま置いといても売れる気のせんものだからなぁ。買ってくれるなら金貨8枚に負けとくよ」
(高い)
『まあ、珍しい武器ならこんなもんかもな』
現在カティの懐は金貨6枚と銀貨が少し。
金貨2枚分足りない。
「すみません、持ち合わせが・・・」
「はは、まあ大金だからな。こっちの短剣とかはどうだ?これなら金貨2枚で使い勝手もいい」
そう言って店主が出してきたのはシンプルな造りの細身の短剣。
カティは悪くないように思ったのだが。
〈フラウあれが良かったです〉
しゅんとした声に、カティは貧乏でごめんねって気分になる。
だがさすがに金貨10枚のものを6枚には負けてくれないだろう。
どうしたものかと思っていると佑樹が『なあ、まだオークの爪とか皮とか売ってなかったよな?』と言いだした。
あれか、とカティも思う。
フラウが討伐したオーク。肉はいくらか料理に使ったが、それ以外はまだアイテムボックスに入れたままだ。
オークは高くはないはずだが、あれならかなりの大きさだったから、なんとか金貨2枚にはなるかもしれない。
しかも、魔石があったのだった。
魔石とは魔物の核。人間でいう心臓のようなものだが、案外脆く討伐した際にキズが付いたり割れたりする。
そうなると使い物にならないが、綺麗な状態のものは加工されて様々な用途に使われるのだ。
蛇咬剣に使われている鋼糸もそうだし、魔力を溜め込む性質があるので魔剣と呼ばれる魔法を纏った武器や騎手や貴族が使う鎧に埋め込まれていたりする。
「すみません、ちょっと後でもう一度来ますっ」
カティは店を飛び出して、ギルドへと向かう。
冒険者の中には容量の小さいアイテムボックスを持っている者はいることをドズに聞いているので、ギルドでだけは出してもいいかということにした。
討伐した魔物を鞄には入れられないから。
ただし、容量は最小サイズということにするが。
カティはギルドに飛び込むと買取カウンターに一直線に向かった。
「買取をお願いします!」
甘いと言いたければ言え。
カティはどうもフラウの、と言うか子供のおねだりに弱いらしかった。
ヤルジの町には回復ポーションや解毒薬等ダンジョンに必須なアイテム類は多いが武器や防具はあまりないと聞いたからだ。まあダンジョンに入ろうという冒険者ならすでに武器や防具は揃えていて当然だからだろう。
カティの使用するナイフと薄手の胸当て、籠手はすでにリューレルートで購入済みなので、今回買うのはフラウの分。
さすがに幼児向けサイズの鎧だのはないので、見るのはナイフか短剣。短剣と言ってもフラウが持てば立派な大剣だが、フラウの力ならば振り回すこともできるだろう。
(フラウどんなのがいい?)
幼児に持たせる剣を買うとはさすがにおおっぴらには言えないので、頭の中でこっそりと訪ねる。
〈大きくてかっこいいのがいいです〉
何だろう。
フラウは妙に好戦的というか、ちょっと怖いというか。
『重さはあってもいいけど、あんまりでかくはない方がいいかもな。どっちかってーと、細身なのがいいだろ』
ううむ、とカティは唸りながら壁に掛けられた剣を見て回る。
「あ、あれはどうでしょうか!かっこいいです!」
言って走り出したフラウの背を追いかける。
フラウが「これです!」と指し示したのは変わった形の、剣?
細身の柄の先にギザギザの刃がいくつも連なっている。
『変わった武器だな』
「おっ、嬢ちゃんいい趣味だな」
佑樹の声に重なるようにして店の店主が笑いながら話しかけてくる。厳つい筋肉の塊みたいなおやじだ。
「そいつは魔族がたまに使う蛇咬剣って武器でな、剣っていうより刃を繋いだ鞭だ。扱いは難しいが、威力はある。だが、使うのはそっちの坊主か?」
「あー、まあ」
「なら止めといた方がいいかもな。扱いきれん」
「そんなに難しいんですか?」
「ああ。こいつは十五個の刃を魔石鋼糸で繋ぎ合わせてある。この糸を伸ばせば鞭のように、縮めれば剣、というかノコギリのような切り方になるんだが、まあ剣として使える。だが見た目よりも重いしコツが必要な上、何より魔力操作で糸を操るんで魔力が低いと全く役にたたんという代物だよ」
ずいぶん前に魔族領で面白いと思って仕入れてきたんだが、使える人間がいないからずっと売れ残っているのだと店主は苦笑いした。
〈フラウこれがいいです!大丈夫です!魔力もあるし、使えると思うのです〉
「ええと、ちなみにいくらですか?」
「金貨10枚だが、このまま置いといても売れる気のせんものだからなぁ。買ってくれるなら金貨8枚に負けとくよ」
(高い)
『まあ、珍しい武器ならこんなもんかもな』
現在カティの懐は金貨6枚と銀貨が少し。
金貨2枚分足りない。
「すみません、持ち合わせが・・・」
「はは、まあ大金だからな。こっちの短剣とかはどうだ?これなら金貨2枚で使い勝手もいい」
そう言って店主が出してきたのはシンプルな造りの細身の短剣。
カティは悪くないように思ったのだが。
〈フラウあれが良かったです〉
しゅんとした声に、カティは貧乏でごめんねって気分になる。
だがさすがに金貨10枚のものを6枚には負けてくれないだろう。
どうしたものかと思っていると佑樹が『なあ、まだオークの爪とか皮とか売ってなかったよな?』と言いだした。
あれか、とカティも思う。
フラウが討伐したオーク。肉はいくらか料理に使ったが、それ以外はまだアイテムボックスに入れたままだ。
オークは高くはないはずだが、あれならかなりの大きさだったから、なんとか金貨2枚にはなるかもしれない。
しかも、魔石があったのだった。
魔石とは魔物の核。人間でいう心臓のようなものだが、案外脆く討伐した際にキズが付いたり割れたりする。
そうなると使い物にならないが、綺麗な状態のものは加工されて様々な用途に使われるのだ。
蛇咬剣に使われている鋼糸もそうだし、魔力を溜め込む性質があるので魔剣と呼ばれる魔法を纏った武器や騎手や貴族が使う鎧に埋め込まれていたりする。
「すみません、ちょっと後でもう一度来ますっ」
カティは店を飛び出して、ギルドへと向かう。
冒険者の中には容量の小さいアイテムボックスを持っている者はいることをドズに聞いているので、ギルドでだけは出してもいいかということにした。
討伐した魔物を鞄には入れられないから。
ただし、容量は最小サイズということにするが。
カティはギルドに飛び込むと買取カウンターに一直線に向かった。
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