悪役令嬢になりました。

黒田悠月

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だって定番なんだもの。

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しばらくすると、鏡の中には少しばかり不揃いな短い髪の私がいた。

前髪もちょっとだけ切ってみたところ切りすぎた。

けどその分幼くなったというか、少年っぽくなった気がする。


床に髪が落ちて散らばっているのを着ていたドレスを脱いで寄せて纏めた。
床には結構な埃が積もっていたのかドレスは茶色く色付いたけど、まあ、教会で着せられたドレスだからよしとする。

とはいえドレスがそのまま捨てられていたら宿の人間に不審に思われるかも知れない。
かといってそのまま袋や鞄に放り込むのも躊躇われる。

そこで集めた髪がこぼれないように気をつけながらナイフで適当に髪の入った部分だけ切り取った。
風呂敷のように中に髪を包んで丸めて端を括る。

それを服やらを買った袋に入れておく。

後でどこかに捨ててしまおう。
残った布は何かに使えるかも知れないのでとっておく。布巾やタオルがわりにでもするとしよう。


さて、私の格好だけど。
着ていたドレスを脱いだのだからもちろん下着姿である。

私はブラジャー(というより胸帯とでもいうべきものだが)も取り去り上半身マッパになると、服とともに買っておいたサラシに似た長い布をぐるぐるときつく胸に巻いた。

そうすると私の推定Bカップの胸は悲しいほどにペッタンコになる。

BよりもAよりかも知れない。
悲しいが今は都合がいい。

綿の肌着を着てわざと大きいサイズを選んで購入した麻のシャツを羽織る。
下には暗いカーキのズボンを履く。
こちらも少し大きめサイズなので腰で紐をしっかりと結び足首は軽く折る。

大きめサイズを選んだのは身体のラインを出さないためだ。

そこに帽子を被ると、私は水魔法で目の前に等身大の姿見を作り出した。


歪に歪む鏡の中には、少女にも少年にも見える微妙なラインの姿があった。

(……ううむ)

服装のおかげで一応は少年よりだろうか。
幼くなったこともあわせて12、3才の思春期入りたてな少年。
前髪は切って正解だった模様。
年よりも幼く見えるおかげで女顔や線の細さも誤魔化せている気がする。

これなら声も変声期前ということでイケルか。


ふふ。
どうせそれなりに変装は必要なのだからやってみたかったのです。

男装令嬢。

漫画や小説なんかでは定番だったじゃない?

教会への怒りと勢いに任せてバサッと髪切っちゃったけどなんとかなって良かった。

どうみても男の格好した女子だったら逆に目立つよね。
ということを髪を切ってる途中で思い当たった。
いや、考えなしというかアホですね。

しかも男装令嬢というよりはなよっとした貧弱そうな坊主といった感じか。

(ま、でもこれで教会に捕まり難くなったよね?)

うん。
まさか教会も貴族の令嬢が髪切って男装するとは思うまい。

そんなの物語や劇の中だけだよね。
普通は。


でも仕方ないじゃないか。
やりたかったんだもん。

逃走中に何してんだとは突っ込まないでほしい。
シリアスにばっかりしてたら精神が持たない。
いつでも何事にも遊び心と心の余裕は必要だよね?

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