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すこーしお話し致しましょうか。
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さて、私とカノンは他の学生たちとは別の馬車に乗り、方向は同じだけど終着地は違う場所に行く。
終着地は他の学生たちが戻る王都のすぐお隣。
敷地そのものが一つの街になっている教会本部。
『リグ・リアータ』
サイズ自体は王都の4分の1程度。
東西南北それぞれに門があり、それぞれに四聖獣の石像と祠が祀られている。
住んでいるのは教会関係者とその家族のみ。
街の中心には高い、ものすごく高い塔がそびえていて、それが教会本部である。
エリカの記憶の中には子供の時から数度、礼拝に訪れたものがあって、それによるととにかく高くて真っ白で窓がない。
え?
んな街やらの説明いらんって?
だよね。
私もそう思う。
ちょっと現実逃避してました。
だって地味にキツいんだもん。
今のこの状況。
狭い馬車の中でカノンと二人きり。
いや。
正確には二人と一匹。
足元には白虎姿の白王が伏せている。
すでに馬車が走り出して5分くらい経っている、かな?
私の体感的にはそのくらいだ。
その間、カノンは無言で私を睨みつけている。
意外だよね。
顔を見るなりギャーギャー捲し立てられると予想してたんだけどね。
無言です。
そうなると私の方もなかなか口を開くきっかけというか、どう話をすれば良いものかわかんなくなりまして。
同じく無言で睨み返しつつ、頭の中では現実逃避。
しかしいつまでもこのままというわけにもいかない。
兵士長にもらった時間は長くはないのだから。
私が「訊きたいことがあるのだけれど」とようよう口を開くと。
ぷい。
とカノンは顔を反らした。
その横顔に「貴女なんかの質問には答えないわよ!」と書いてある気がする。
ううぬ。
「……っ?きゃっ!」
「あら、白王ダメよ」
まあまあどうしましょう?
使い魔の白虎がアチラ様のお膝にお手をしてしまいましたわ。
虎ですから、とっても手が大きくて爪が鋭くて長いんですの。
それが突然膝に乗ってきたら、怖いでしょうねえ。
なあんてね。
どっかの良いとこ奧さま風に解説してみた。
「なんなのよっ!これ!」
あら、やっと口を開きましたわね。
「何って。白虎様のご子息ですよ。貴女が危害を加えさせた」
「……そんなはずないじゃない!白虎の子供はもっと小さくて弱いはずよ!」
「それはその、色々あって怪我を治したついでに成長したっていうか……」
う~ん、どこまで言っていいものか。
「どういうことなのよ。まさか呪いを……、いえそんなはず」
ボソボソブツブツ。
カノンは半分逃げるように腰を浮かしながら早口に独りごちていた。
私は自分に向けられた言葉ではないことを承知の上で、頷いて見せる。
「まあ、そんなところですわ」
実際には呪い自体は解けてはいないのだけど、ね。
使い魔契約を交わしたことで、白王と私の間には目には見えない繋がりができた。
その繋がりを通して白王には私の無尽蔵に近い量と質のエナが常に流れている。
白王が吸収できるエナは今もそれだけ。
もし今契約を破棄したら、白王はあっという間に元に戻る。
なのでしばらくはこのまんまなんだよね。
いつか白王の呪いが本当に解けて、白王が望むのならすぐに契約を解いて解放するつもりだけど。
「そんなわけ……っ!そんなわけないじゃない!」
「どうして?」
「私にだってムリだったのよ?偽者の貴女に出来るわけがないわ!」
「まるで試したことがあるような物言いですのね?」
おや、まだ質問してもいないのに勝手に答えてくれそうですね。
聞いておきたかったのだ。
カノンは転生者なのか、それとも別の何かなのか。
たぶんこういうことなのかなって思うことはあるんだけど。
やっぱりしっかり確認しておきたいんだよね。
終着地は他の学生たちが戻る王都のすぐお隣。
敷地そのものが一つの街になっている教会本部。
『リグ・リアータ』
サイズ自体は王都の4分の1程度。
東西南北それぞれに門があり、それぞれに四聖獣の石像と祠が祀られている。
住んでいるのは教会関係者とその家族のみ。
街の中心には高い、ものすごく高い塔がそびえていて、それが教会本部である。
エリカの記憶の中には子供の時から数度、礼拝に訪れたものがあって、それによるととにかく高くて真っ白で窓がない。
え?
んな街やらの説明いらんって?
だよね。
私もそう思う。
ちょっと現実逃避してました。
だって地味にキツいんだもん。
今のこの状況。
狭い馬車の中でカノンと二人きり。
いや。
正確には二人と一匹。
足元には白虎姿の白王が伏せている。
すでに馬車が走り出して5分くらい経っている、かな?
私の体感的にはそのくらいだ。
その間、カノンは無言で私を睨みつけている。
意外だよね。
顔を見るなりギャーギャー捲し立てられると予想してたんだけどね。
無言です。
そうなると私の方もなかなか口を開くきっかけというか、どう話をすれば良いものかわかんなくなりまして。
同じく無言で睨み返しつつ、頭の中では現実逃避。
しかしいつまでもこのままというわけにもいかない。
兵士長にもらった時間は長くはないのだから。
私が「訊きたいことがあるのだけれど」とようよう口を開くと。
ぷい。
とカノンは顔を反らした。
その横顔に「貴女なんかの質問には答えないわよ!」と書いてある気がする。
ううぬ。
「……っ?きゃっ!」
「あら、白王ダメよ」
まあまあどうしましょう?
使い魔の白虎がアチラ様のお膝にお手をしてしまいましたわ。
虎ですから、とっても手が大きくて爪が鋭くて長いんですの。
それが突然膝に乗ってきたら、怖いでしょうねえ。
なあんてね。
どっかの良いとこ奧さま風に解説してみた。
「なんなのよっ!これ!」
あら、やっと口を開きましたわね。
「何って。白虎様のご子息ですよ。貴女が危害を加えさせた」
「……そんなはずないじゃない!白虎の子供はもっと小さくて弱いはずよ!」
「それはその、色々あって怪我を治したついでに成長したっていうか……」
う~ん、どこまで言っていいものか。
「どういうことなのよ。まさか呪いを……、いえそんなはず」
ボソボソブツブツ。
カノンは半分逃げるように腰を浮かしながら早口に独りごちていた。
私は自分に向けられた言葉ではないことを承知の上で、頷いて見せる。
「まあ、そんなところですわ」
実際には呪い自体は解けてはいないのだけど、ね。
使い魔契約を交わしたことで、白王と私の間には目には見えない繋がりができた。
その繋がりを通して白王には私の無尽蔵に近い量と質のエナが常に流れている。
白王が吸収できるエナは今もそれだけ。
もし今契約を破棄したら、白王はあっという間に元に戻る。
なのでしばらくはこのまんまなんだよね。
いつか白王の呪いが本当に解けて、白王が望むのならすぐに契約を解いて解放するつもりだけど。
「そんなわけ……っ!そんなわけないじゃない!」
「どうして?」
「私にだってムリだったのよ?偽者の貴女に出来るわけがないわ!」
「まるで試したことがあるような物言いですのね?」
おや、まだ質問してもいないのに勝手に答えてくれそうですね。
聞いておきたかったのだ。
カノンは転生者なのか、それとも別の何かなのか。
たぶんこういうことなのかなって思うことはあるんだけど。
やっぱりしっかり確認しておきたいんだよね。
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書籍をWebより大幅改稿しているため、書籍のラストと連載分が繋がっていません。そのため、続きを第二部として新たに書き直しています。元の連載分については現在読んでいる途中という方もいるかもなので9月末まで残して削除とさせて頂く予定となります。(*年末あたりまで残します。)第二部の部分が書籍からの続きになります!お読み頂いてる方、本をご購入頂いた方ありがとうございます(^-^)
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