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第二部
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色々なことがあった校外授業の日から、一週間が経った。
特に大きな怪我もなく王都のオルディス侯爵邸に無事帰宅した私だけれど……。
「……頭痛い。セ○ス、バファ○ンでもいいからないものかしら」
私、日生楓ことエリカ・オルディスは自室のベッドの上でウンウン唸っている。
『ヒール』の魔法を使えば楽になるのに。
せっかく聖属性という癒やしの魔法を使えるレア属性持ちだというのに、今の私は使えない。
いえ、使用を禁止されている。
我がオルディス侯爵家の主治医によって。
「セ○ス、でございますか?」
寝込んでいる私の代わりに猫二匹(一匹は実は別物だけど)の前に餌皿を出したリリーナが私の言葉を聞きとめて首を傾げる。
私はギクッとしつつも「そ、そう。他国で最近開発された鎮痛剤なんですって。以前ファンクラブの先輩に教えて頂いたのだけど良く効くらしくて」適当なことを言って笑顔でごまかした。
「まあ、でしたら取り寄せてはいかがですか?」
なるほど、天下のオルディス侯爵家。
実在するのなら探して取り寄せられるかもね。
実在するのならだけれど。
「いえ、いいわ。希少な薬だというし、そこまで辛いわけでもないから……」
と、いうかホントに探されても困る。
私が適当なデタラメを言ったことがバレるじゃないか。
校外授業から家に帰宅してすぐ、私は熱を出して寝込んだ。
一週間が経つけれど、熱は下がりつつあるものの頭痛とめまいがとれない。
とはいえそれもずいぶんマシにはなっているから、あと数日もあれば起き上がれるようにはなるだろう。
学園に登校できるまでには、一週間ほどといったところだろうか?
まあ、10日後には這ってでも行くけどね。
何故なら校外授業で起きた魔物の襲撃事件--そのせいで延期となっていた演劇部の定期公演『二人の王女』が10日後に行われるからだ。
この舞台を生で見るために最後の最後、カノンに首を絞められながらも火事場の馬鹿力で生き延びたようなもの。何が何でも見に行きますとも!
いざとなれば禁止されている治癒魔法を使ってでもね!!
魔法の使用が禁止されているのにはちゃんとわけがある。だけど背に腹は変えられません!
あとでまた寝込んだとしてもマリア様たちの舞台を見れるなら後悔はしない。
私はそう決意してベッドの中でグッと握り拳を作る。
魔物の襲撃があった砦に戻った時、私は散々治癒魔法を使いまくった。
その時は少しだるいくらいだったんだよね。
けれども魔力量的には問題なかったとしても、慣れない魔法の大量行使はしっかりと私の身体に負担をかけていたらしい。
家に帰ったその夜には高熱に襲われた。
たぶん38℃くらいは軽く越えていたと思われる。
この世界に詳細な熱が計れるほどの体温計はないから実際のところはわからないが。
私の体感温度は38℃越えだったのだ。
主治医がいうには精神的な疲れもあるらしい。
色々あったのだからと。
あー、まーねー。
ありましたよね。そりゃもう色々と。
他人には言えないこともね。
それを言うなら校外授業だけじゃなくて、それ以前から。色々と、ね。
それはもう私が日生楓という日本人からエリカ・オルディスというゲームの悪役令嬢になったことからして、色々の一つと言うもので。
特に大きな怪我もなく王都のオルディス侯爵邸に無事帰宅した私だけれど……。
「……頭痛い。セ○ス、バファ○ンでもいいからないものかしら」
私、日生楓ことエリカ・オルディスは自室のベッドの上でウンウン唸っている。
『ヒール』の魔法を使えば楽になるのに。
せっかく聖属性という癒やしの魔法を使えるレア属性持ちだというのに、今の私は使えない。
いえ、使用を禁止されている。
我がオルディス侯爵家の主治医によって。
「セ○ス、でございますか?」
寝込んでいる私の代わりに猫二匹(一匹は実は別物だけど)の前に餌皿を出したリリーナが私の言葉を聞きとめて首を傾げる。
私はギクッとしつつも「そ、そう。他国で最近開発された鎮痛剤なんですって。以前ファンクラブの先輩に教えて頂いたのだけど良く効くらしくて」適当なことを言って笑顔でごまかした。
「まあ、でしたら取り寄せてはいかがですか?」
なるほど、天下のオルディス侯爵家。
実在するのなら探して取り寄せられるかもね。
実在するのならだけれど。
「いえ、いいわ。希少な薬だというし、そこまで辛いわけでもないから……」
と、いうかホントに探されても困る。
私が適当なデタラメを言ったことがバレるじゃないか。
校外授業から家に帰宅してすぐ、私は熱を出して寝込んだ。
一週間が経つけれど、熱は下がりつつあるものの頭痛とめまいがとれない。
とはいえそれもずいぶんマシにはなっているから、あと数日もあれば起き上がれるようにはなるだろう。
学園に登校できるまでには、一週間ほどといったところだろうか?
まあ、10日後には這ってでも行くけどね。
何故なら校外授業で起きた魔物の襲撃事件--そのせいで延期となっていた演劇部の定期公演『二人の王女』が10日後に行われるからだ。
この舞台を生で見るために最後の最後、カノンに首を絞められながらも火事場の馬鹿力で生き延びたようなもの。何が何でも見に行きますとも!
いざとなれば禁止されている治癒魔法を使ってでもね!!
魔法の使用が禁止されているのにはちゃんとわけがある。だけど背に腹は変えられません!
あとでまた寝込んだとしてもマリア様たちの舞台を見れるなら後悔はしない。
私はそう決意してベッドの中でグッと握り拳を作る。
魔物の襲撃があった砦に戻った時、私は散々治癒魔法を使いまくった。
その時は少しだるいくらいだったんだよね。
けれども魔力量的には問題なかったとしても、慣れない魔法の大量行使はしっかりと私の身体に負担をかけていたらしい。
家に帰ったその夜には高熱に襲われた。
たぶん38℃くらいは軽く越えていたと思われる。
この世界に詳細な熱が計れるほどの体温計はないから実際のところはわからないが。
私の体感温度は38℃越えだったのだ。
主治医がいうには精神的な疲れもあるらしい。
色々あったのだからと。
あー、まーねー。
ありましたよね。そりゃもう色々と。
他人には言えないこともね。
それを言うなら校外授業だけじゃなくて、それ以前から。色々と、ね。
それはもう私が日生楓という日本人からエリカ・オルディスというゲームの悪役令嬢になったことからして、色々の一つと言うもので。
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