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4章 俺はどうやら可哀想な人のようです。

17 無惨な姿の五十貝大輝

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俺は魔法で身体を強化してゼアルに突っ込む。

「正面から堂々となんていいじゃねえか。魔法使いらしからぬとこだな」

俺は拳をゼアルに向けて突っ込む。それを手のひらで軽く受け止められた。

「勢いだけ、それ以外は認めれねぇ」

受け止められた拳を握られて上に放り投げられた。

「そんなものか?」


ため息をつく姿も様になる。なんだか、もっと見ていたい。こんなとこで吐き捨てられるように見捨てられるのはやだなぁ。

足掻く。

拳に魔力をのせて小さく魔法を唱える。

見えない足場を作り出して跳んだ。

左腕を構えた時に力があまり入らなかった。それもそのはずだ。狼に噛まれて痛みこそ少なかったもののそれなりに血を流している。体の血が不足しかけているのだ。

そんな不安定な状態で魔法を行使したため、拳に乗せた魔力も意識して保てなくなっていた。

アドレナリンにて、興奮して忘れ去られていたものを今取り戻した。

「おいおい、急にどうしたよ。おい、なあ!」

ゼアルは初め楽しませてくれそうな五十貝大輝を見て胸を踊らせた。しかしどうだろう、今の五十貝大輝にはそれを感じさせるような余韻が無い。

それに対して怒りが荒ぶる口調となって現れた。もういい、期待したことに間違いを感じた。

「消えろ」

ゼアルの丸太のような腕が綺麗に五十貝大輝の鳩尾に刺さりかけたとき、それは何かに阻まれた。

体のバランスも不安定になり、勢いだけで何も出来ずに落ちていく。そんな姿の五十貝大輝に一撃を狙った場所に打ち込むのは、容易かった。

「ぁ」

意図しない。意識だけが保てない。

体に穴が開いてる気がする。

あの鬼に対して感じた恐怖。

体をピクピクと痙攣させて地面に落ちて倒れている。

「か……は、ぅ……はは……」

息ができないと、もがく。

「たった一撃、たったの一発。それだけで止まる枷。甘すぎる。温くて臭い食う気にもならねえ情に、お前の立ち入りを禁止する」

心底失望したような目を向けている。

立ち入りを禁止する。

そう言われたとき、体が何かに吸い込まれるように後ろへ引っ張られる。

雑木林を抜けて、枝や葉で体を傷つけながら放り出された先は、自分が殺していた狼たちの亡骸の上だった。

漂う死臭に、吐き気を感じながらも、立ち上がることができず、横になりながらひたすら吐いて、吐いて、吐いていた。それは吐くものが無くなるまで続いたのだった。






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