4 / 19
1章 はじまり
04 対話と彼の不思議な対応
しおりを挟む
彼が起き上がったことに気付かなかった俺のミスで、その近くで鎧なんて叩いたことが悪かったのだろう。不意打ちで抵抗する間もなかった。
「さてと、オレはお前にいくつか聞きたいことがある。まずはどうやってここに来た?」
彼に手と足を紐で固く縛られているので、逃げ出すことはは不可能。しかし彼から対話を持ちかけてくれているのだから、これに乗らない手はない。
「ここには気づいたら居たとしか言えないな。こことは違う世界と思われる場所にいたけど、気付けばここにいた」
「違う世界……」
彼は驚いたように目を開くと少しだけ頬が緩んだように見えたんだが、恐ろしいことを考えてなんてないよな?
ちなみに手鏡についてはまだ彼を信頼するには足りないから教えるつもりはない。どのみち拷問でもされたら教えるだろうけど、帰るためにも絶対に関係ある手段だと思うから。
「次の質問だ。ここで何をしていた」
人の家の台所で。と不満そうな顔がこちらを見ている。
「俺がこの部屋でしてたのは情報収集だ。ここが知ってる世界か比較するためにも情報が必要だった。だから、申し訳無いけどあんたの事も少し知った。それと、あんたの体には血があまり付いてないだろう。俺が拭いた、その時に見てる。名前的には肉体再生術だっけ?」
「お前…、血を拭いてくれたのは感謝する。それと違う世界から来たのも信じよう。それを知っているということは、お前は書室の文字が読めたということだからな。お前、ニホンジンだな」
「!?!!」
俺のことを知っている、というわけじゃないみたいだけどあからさまにあのメモ帳は日本語のようだったし母国語だということもあったから普通に読めたんだけど。それがこの世界に無い文字だったりして。
「その顔は図星のようだ。次の質問は、台所で何を作っていたか」
「何を?そりゃ台所を借りたのは悪かったと思ってるけど、腹が減ってたし……。俺が作ったのはなんちゃって豚汁だよ」
その答えを聞いて彼は驚いたなんてものではなく、嬉しそうに抱きついてきた。
それに対して俺は近い、筋肉が近い、埋もれるっ!と鼻をスーハースーハーさせて頭がくらっと来ていたが、彼が謎の喜びを見せていることがとても気になった。
しかし聞かなくても良いような気がしているのは、先程感じた家族のような、もしくはそれに似た感情を何故か持っているからか。彼が喜んでいる姿でなんとなく落ち着いた。
「縄、ほどいてくれる?」
「ほどこう、お前の作った料理を食べながら話をしよう」
彼は先程見せた警戒心のカタマリのような表情が無くなったように見え、ほどいてくれているのを見て、彼に「ありがとうございます」と言った。
「なら、撫でて」
「俺のが年下ですよ?」
「オレ父さん居ない。それは知ってるだろ?あの部屋に入ったんだから、でも話したり見たことはあるんだよ。その時の一番良い記憶の雰囲気と同じ感じがするから……撫でて」
なるほど!意味わからん!よく分からないけどこんな筋肉野郎の頭を撫でても良いと、俺に対して少なからず好意を持っていると、やるしかないよな。
しかし頭を撫でるなんて姪っ子とかしかしたこと無いからな。その時と同じような感じで良いだろうか。
声に出してばれなければ、撫でられて不快そうじゃなければ大丈夫だろう。
「それじゃ、失礼して……………………」
「落ち着く……あぁ、親父みたいだ」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
ずっと撫で撫でしてることも叶わず彼は納得すると台所に向かっていく。俺はその後ろを付いていくか悩んだが、あの体格から逃げられることもないし、と料理を暖め直したりと食器を用意するなり手伝えることはあると、後ろを付いていくことにした。
「さてと、オレはお前にいくつか聞きたいことがある。まずはどうやってここに来た?」
彼に手と足を紐で固く縛られているので、逃げ出すことはは不可能。しかし彼から対話を持ちかけてくれているのだから、これに乗らない手はない。
「ここには気づいたら居たとしか言えないな。こことは違う世界と思われる場所にいたけど、気付けばここにいた」
「違う世界……」
彼は驚いたように目を開くと少しだけ頬が緩んだように見えたんだが、恐ろしいことを考えてなんてないよな?
ちなみに手鏡についてはまだ彼を信頼するには足りないから教えるつもりはない。どのみち拷問でもされたら教えるだろうけど、帰るためにも絶対に関係ある手段だと思うから。
「次の質問だ。ここで何をしていた」
人の家の台所で。と不満そうな顔がこちらを見ている。
「俺がこの部屋でしてたのは情報収集だ。ここが知ってる世界か比較するためにも情報が必要だった。だから、申し訳無いけどあんたの事も少し知った。それと、あんたの体には血があまり付いてないだろう。俺が拭いた、その時に見てる。名前的には肉体再生術だっけ?」
「お前…、血を拭いてくれたのは感謝する。それと違う世界から来たのも信じよう。それを知っているということは、お前は書室の文字が読めたということだからな。お前、ニホンジンだな」
「!?!!」
俺のことを知っている、というわけじゃないみたいだけどあからさまにあのメモ帳は日本語のようだったし母国語だということもあったから普通に読めたんだけど。それがこの世界に無い文字だったりして。
「その顔は図星のようだ。次の質問は、台所で何を作っていたか」
「何を?そりゃ台所を借りたのは悪かったと思ってるけど、腹が減ってたし……。俺が作ったのはなんちゃって豚汁だよ」
その答えを聞いて彼は驚いたなんてものではなく、嬉しそうに抱きついてきた。
それに対して俺は近い、筋肉が近い、埋もれるっ!と鼻をスーハースーハーさせて頭がくらっと来ていたが、彼が謎の喜びを見せていることがとても気になった。
しかし聞かなくても良いような気がしているのは、先程感じた家族のような、もしくはそれに似た感情を何故か持っているからか。彼が喜んでいる姿でなんとなく落ち着いた。
「縄、ほどいてくれる?」
「ほどこう、お前の作った料理を食べながら話をしよう」
彼は先程見せた警戒心のカタマリのような表情が無くなったように見え、ほどいてくれているのを見て、彼に「ありがとうございます」と言った。
「なら、撫でて」
「俺のが年下ですよ?」
「オレ父さん居ない。それは知ってるだろ?あの部屋に入ったんだから、でも話したり見たことはあるんだよ。その時の一番良い記憶の雰囲気と同じ感じがするから……撫でて」
なるほど!意味わからん!よく分からないけどこんな筋肉野郎の頭を撫でても良いと、俺に対して少なからず好意を持っていると、やるしかないよな。
しかし頭を撫でるなんて姪っ子とかしかしたこと無いからな。その時と同じような感じで良いだろうか。
声に出してばれなければ、撫でられて不快そうじゃなければ大丈夫だろう。
「それじゃ、失礼して……………………」
「落ち着く……あぁ、親父みたいだ」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
ずっと撫で撫でしてることも叶わず彼は納得すると台所に向かっていく。俺はその後ろを付いていくか悩んだが、あの体格から逃げられることもないし、と料理を暖め直したりと食器を用意するなり手伝えることはあると、後ろを付いていくことにした。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
半身転生
片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。
元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。
気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。
「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」
実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。
消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。
異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。
少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。
強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。
異世界は日本と比較して厳しい環境です。
日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。
主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。
つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。
最初の主人公は普通の青年です。
大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。
神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。
もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。
ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。
長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。
ただ必ず完結しますので安心してお読みください。
ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。
この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる