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念願の女子会?

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 クラリスとアリスは、予定の時間よりも早く、王都で話題のカフェに到着した。

 オストロー公爵家の名前を出すと、すぐに最上級の個室に通され、店にあるスイーツ全品が運ばれてくる。種類豊富な一口サイズのスイーツが、女性に大人気のカフェだ。

「さあ、クラリスさんのお好きなものをお好きなだけ召し上がってくださいね」

 先ほどの鬼の形相から一変、これ以上ないというぐらいの笑顔でアリスがクラリスを促した。

「アリス様、ありがとうございます!こんな素敵なお店に来られるなんて、夢みたいです!」

 クラリスが目をキラキラさせて、アリスにお礼を言った。

(うっ、クラリスちゃんの笑顔が眩しい!幸せ!)

「い、いいえ、お礼を言うのは私の方ですわ。以前から来てみたいと思っていたんですけど、なかなか一人では来られなくて」

 アリスが内心の大興奮を隠しながら、にこやかに答える。

「そうなんですね!てっきり、アリス様はウィル様とデートで来られているのかと……ア、アリス様……?」

 ウィルの名前を聞いた途端、アリスの笑顔が凍りついた。

「あの腹黒エロ王子……!!」

「あ、あの、アリス様……?大丈夫ですか?」

 淑女らしからぬ、地獄の底から響いてくるようなアリスの声に、クラリスが困惑する。

「!あ、あら、失礼いたしました。私としたことが。オホホホホ」

 慌てて取り繕うアリスの笑顔に、クラリスは心配そうな目を向けた。

「アリス様……もしかして、ウィル様に何かひどいことをされたのですか……?!もしそうなら、私、ウィル様に抗議してきます!」

 そう言ってすぐにでもウィルの元に向かいそうな勢いのクラリスを前に、アリスは研究室でのことを思い出した。

 ボンッ

 途端にアリスの顔に一気に血が昇る。真っ赤になって俯いたアリスを見て、クラリスは誤解だと素早く悟った。

「アリス様、そのお顔は……嫌なことをされたわけではなかったのですね……?」
 
「い、嫌なことでは……!ただ、実験の邪魔をされたのが許せなくて……え?!私、何を言って……!」

 アリスの顔がこれ以上ないというくらいに真っ赤になり、クラリスは思わず微笑む。

「うふふ、アリス様、可愛い!」

「な、な、何を言って……!可愛いのはクラリスさんですわ!」

「えっ。そ、そんな、アリス様と比べたら私なんて……アリス様みたいにスラリと背が高いわけでもないですし……今日だって本に手が届かなかったせいで……」

 言いながらクラリスも図書室でのことを思い出して、真っ赤になる。恥じらうクラリスを見て、アリスの顔が今度は青くなった。

「ク、クラリスさん!クラリスさんこそ、アンソニー様に何もされてなくって?!まさかハグ以上のことを……?!」

「いいえ!アンソニー様からは、ギュッて……された……だけで……」

「ギュッ?!クラリスちゃんを?!あんっの腹黒エロ従者……!(羨ましい!)」


(え?!今、クラリス『ちゃん』って?)

「ア、アリス様?!」

「あ、し、失礼いたしました。私の大事な推し…お、お友達に不埒なことをしたのかと思うと、つい」

 アリスは慌てて扇子を取り出すと、口元を隠した。

(あ、危ない、危ない!つい素が出てしまうところだったわ!)

 扇子の影でようやく淑女の仮面を被り直したアリスが、前々から聞きたかった質問を投げかけた。

「そういえば、私、クラリスさんの気になる方がどなたなのか、ずっと気になってるんですの」

「ゴホッ」

 アリスの直球に、気を取り直してスイーツを楽しもうとしていたクラリスがむせた。

「もしかして、アンソニー様なんですの……?今日、抱きしめられて嫌ではなかったとか……?」

「抱き……!え、いえ、あの、その……それはですね……」

「大丈夫ですわ!誰にも言いませんから!」

 アリスのギラギラした目に、クラリスは圧倒される。

「あの……今日も、嫌ではなかったんです……アンソニー様は素敵な方ですし、あ、憧れているのは本当なんです……でも……」

「でも?!」

 最早、淑女でも何でもなくなったアリスが前のめりに聞く。

「で、でも、今日、アンソニー様にギュッてされた時に、なぜかポールお兄ちゃんの顔が浮かんで……」

「!!!」

「わ、わたし、ダメですよね!こんな、私なんかが図々しい……!」

 アリスの驚きを非難と受け取ったクラリスが泣きそうな顔になる。

「違いますわ!クラリスさんは、『なんか』じゃありませんわ!」

「アリス様……」

「可愛くて綺麗で優しくて努力家でかっこいい所もあって……世界中の男性(ってか、全人類!)がクラリスちゃ、コホッ、さんを好きになってもおかしくないほどですわ!!」

「ア、アリス様、嬉しいですけど、さすがにそれは褒め過ぎです!」

 クラリスは先ほどとは違う意味で真っ赤になる。

「いいえ、まだまだ言い足りないぐらいです!」

「……あ、ありがとうございます……」

 アリスのあまりの剣幕に、クラリスは少し気圧されながらお礼を言った。

「コホン、で、ですから、クラリスさんがたくさんの男性から好意を向けられるのは何もおかしなことではありませんし、クラリスさんが迷うのもおかしなことではありませんわ。皆さま素敵な方ばかりですものね。いいんですのよ、クラリスさんはそのままで」

 言って、アリスは優雅にお茶を飲んだ。

(そうよ、クラリスちゃんが望むなら逆ハーでも何でもいいのよ!できることなら私が独り占めしたいところだけども!)

「私、ずっと、どうしたらいいかわからなくって……アリス様の今のお言葉に気持ちが少し楽になりました。ありがとうございます!」

 令嬢の仮面の下のアリスの思惑など気づかないクラリスは、感激した様子で涙ぐんだ。



 そんな二人の会話を扉の外で聞いている人間がいたことに、アリスもクラリスも全く気づいていなかった。
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