117 / 139
念願の女子会?
しおりを挟む
クラリスとアリスは、予定の時間よりも早く、王都で話題のカフェに到着した。
オストロー公爵家の名前を出すと、すぐに最上級の個室に通され、店にあるスイーツ全品が運ばれてくる。種類豊富な一口サイズのスイーツが、女性に大人気のカフェだ。
「さあ、クラリスさんのお好きなものをお好きなだけ召し上がってくださいね」
先ほどの鬼の形相から一変、これ以上ないというぐらいの笑顔でアリスがクラリスを促した。
「アリス様、ありがとうございます!こんな素敵なお店に来られるなんて、夢みたいです!」
クラリスが目をキラキラさせて、アリスにお礼を言った。
(うっ、クラリスちゃんの笑顔が眩しい!幸せ!)
「い、いいえ、お礼を言うのは私の方ですわ。以前から来てみたいと思っていたんですけど、なかなか一人では来られなくて」
アリスが内心の大興奮を隠しながら、にこやかに答える。
「そうなんですね!てっきり、アリス様はウィル様とデートで来られているのかと……ア、アリス様……?」
ウィルの名前を聞いた途端、アリスの笑顔が凍りついた。
「あの腹黒エロ王子……!!」
「あ、あの、アリス様……?大丈夫ですか?」
淑女らしからぬ、地獄の底から響いてくるようなアリスの声に、クラリスが困惑する。
「!あ、あら、失礼いたしました。私としたことが。オホホホホ」
慌てて取り繕うアリスの笑顔に、クラリスは心配そうな目を向けた。
「アリス様……もしかして、ウィル様に何かひどいことをされたのですか……?!もしそうなら、私、ウィル様に抗議してきます!」
そう言ってすぐにでもウィルの元に向かいそうな勢いのクラリスを前に、アリスは研究室でのことを思い出した。
ボンッ
途端にアリスの顔に一気に血が昇る。真っ赤になって俯いたアリスを見て、クラリスは誤解だと素早く悟った。
「アリス様、そのお顔は……嫌なことをされたわけではなかったのですね……?」
「い、嫌なことでは……!ただ、実験の邪魔をされたのが許せなくて……え?!私、何を言って……!」
アリスの顔がこれ以上ないというくらいに真っ赤になり、クラリスは思わず微笑む。
「うふふ、アリス様、可愛い!」
「な、な、何を言って……!可愛いのはクラリスさんですわ!」
「えっ。そ、そんな、アリス様と比べたら私なんて……アリス様みたいにスラリと背が高いわけでもないですし……今日だって本に手が届かなかったせいで……」
言いながらクラリスも図書室でのことを思い出して、真っ赤になる。恥じらうクラリスを見て、アリスの顔が今度は青くなった。
「ク、クラリスさん!クラリスさんこそ、アンソニー様に何もされてなくって?!まさかハグ以上のことを……?!」
「いいえ!アンソニー様からは、ギュッて……された……だけで……」
「ギュッ?!クラリスちゃんを?!あんっの腹黒エロ従者……!(羨ましい!)」
(え?!今、クラリス『ちゃん』って?)
「ア、アリス様?!」
「あ、し、失礼いたしました。私の大事な推し…お、お友達に不埒なことをしたのかと思うと、つい」
アリスは慌てて扇子を取り出すと、口元を隠した。
(あ、危ない、危ない!つい素が出てしまうところだったわ!)
扇子の影でようやく淑女の仮面を被り直したアリスが、前々から聞きたかった質問を投げかけた。
「そういえば、私、クラリスさんの気になる方がどなたなのか、ずっと気になってるんですの」
「ゴホッ」
アリスの直球に、気を取り直してスイーツを楽しもうとしていたクラリスがむせた。
「もしかして、アンソニー様なんですの……?今日、抱きしめられて嫌ではなかったとか……?」
「抱き……!え、いえ、あの、その……それはですね……」
「大丈夫ですわ!誰にも言いませんから!」
アリスのギラギラした目に、クラリスは圧倒される。
「あの……今日も、嫌ではなかったんです……アンソニー様は素敵な方ですし、あ、憧れているのは本当なんです……でも……」
「でも?!」
最早、淑女でも何でもなくなったアリスが前のめりに聞く。
「で、でも、今日、アンソニー様にギュッてされた時に、なぜかポールお兄ちゃんの顔が浮かんで……」
「!!!」
「わ、わたし、ダメですよね!こんな、私なんかが図々しい……!」
アリスの驚きを非難と受け取ったクラリスが泣きそうな顔になる。
「違いますわ!クラリスさんは、『なんか』じゃありませんわ!」
「アリス様……」
「可愛くて綺麗で優しくて努力家でかっこいい所もあって……世界中の男性(ってか、全人類!)がクラリスちゃ、コホッ、さんを好きになってもおかしくないほどですわ!!」
「ア、アリス様、嬉しいですけど、さすがにそれは褒め過ぎです!」
クラリスは先ほどとは違う意味で真っ赤になる。
「いいえ、まだまだ言い足りないぐらいです!」
「……あ、ありがとうございます……」
アリスのあまりの剣幕に、クラリスは少し気圧されながらお礼を言った。
「コホン、で、ですから、クラリスさんがたくさんの男性から好意を向けられるのは何もおかしなことではありませんし、クラリスさんが迷うのもおかしなことではありませんわ。皆さま素敵な方ばかりですものね。いいんですのよ、クラリスさんはそのままで」
言って、アリスは優雅にお茶を飲んだ。
(そうよ、クラリスちゃんが望むなら逆ハーでも何でもいいのよ!できることなら私が独り占めしたいところだけども!)
「私、ずっと、どうしたらいいかわからなくって……アリス様の今のお言葉に気持ちが少し楽になりました。ありがとうございます!」
令嬢の仮面の下のアリスの思惑など気づかないクラリスは、感激した様子で涙ぐんだ。
そんな二人の会話を扉の外で聞いている人間がいたことに、アリスもクラリスも全く気づいていなかった。
オストロー公爵家の名前を出すと、すぐに最上級の個室に通され、店にあるスイーツ全品が運ばれてくる。種類豊富な一口サイズのスイーツが、女性に大人気のカフェだ。
「さあ、クラリスさんのお好きなものをお好きなだけ召し上がってくださいね」
先ほどの鬼の形相から一変、これ以上ないというぐらいの笑顔でアリスがクラリスを促した。
「アリス様、ありがとうございます!こんな素敵なお店に来られるなんて、夢みたいです!」
クラリスが目をキラキラさせて、アリスにお礼を言った。
(うっ、クラリスちゃんの笑顔が眩しい!幸せ!)
「い、いいえ、お礼を言うのは私の方ですわ。以前から来てみたいと思っていたんですけど、なかなか一人では来られなくて」
アリスが内心の大興奮を隠しながら、にこやかに答える。
「そうなんですね!てっきり、アリス様はウィル様とデートで来られているのかと……ア、アリス様……?」
ウィルの名前を聞いた途端、アリスの笑顔が凍りついた。
「あの腹黒エロ王子……!!」
「あ、あの、アリス様……?大丈夫ですか?」
淑女らしからぬ、地獄の底から響いてくるようなアリスの声に、クラリスが困惑する。
「!あ、あら、失礼いたしました。私としたことが。オホホホホ」
慌てて取り繕うアリスの笑顔に、クラリスは心配そうな目を向けた。
「アリス様……もしかして、ウィル様に何かひどいことをされたのですか……?!もしそうなら、私、ウィル様に抗議してきます!」
そう言ってすぐにでもウィルの元に向かいそうな勢いのクラリスを前に、アリスは研究室でのことを思い出した。
ボンッ
途端にアリスの顔に一気に血が昇る。真っ赤になって俯いたアリスを見て、クラリスは誤解だと素早く悟った。
「アリス様、そのお顔は……嫌なことをされたわけではなかったのですね……?」
「い、嫌なことでは……!ただ、実験の邪魔をされたのが許せなくて……え?!私、何を言って……!」
アリスの顔がこれ以上ないというくらいに真っ赤になり、クラリスは思わず微笑む。
「うふふ、アリス様、可愛い!」
「な、な、何を言って……!可愛いのはクラリスさんですわ!」
「えっ。そ、そんな、アリス様と比べたら私なんて……アリス様みたいにスラリと背が高いわけでもないですし……今日だって本に手が届かなかったせいで……」
言いながらクラリスも図書室でのことを思い出して、真っ赤になる。恥じらうクラリスを見て、アリスの顔が今度は青くなった。
「ク、クラリスさん!クラリスさんこそ、アンソニー様に何もされてなくって?!まさかハグ以上のことを……?!」
「いいえ!アンソニー様からは、ギュッて……された……だけで……」
「ギュッ?!クラリスちゃんを?!あんっの腹黒エロ従者……!(羨ましい!)」
(え?!今、クラリス『ちゃん』って?)
「ア、アリス様?!」
「あ、し、失礼いたしました。私の大事な推し…お、お友達に不埒なことをしたのかと思うと、つい」
アリスは慌てて扇子を取り出すと、口元を隠した。
(あ、危ない、危ない!つい素が出てしまうところだったわ!)
扇子の影でようやく淑女の仮面を被り直したアリスが、前々から聞きたかった質問を投げかけた。
「そういえば、私、クラリスさんの気になる方がどなたなのか、ずっと気になってるんですの」
「ゴホッ」
アリスの直球に、気を取り直してスイーツを楽しもうとしていたクラリスがむせた。
「もしかして、アンソニー様なんですの……?今日、抱きしめられて嫌ではなかったとか……?」
「抱き……!え、いえ、あの、その……それはですね……」
「大丈夫ですわ!誰にも言いませんから!」
アリスのギラギラした目に、クラリスは圧倒される。
「あの……今日も、嫌ではなかったんです……アンソニー様は素敵な方ですし、あ、憧れているのは本当なんです……でも……」
「でも?!」
最早、淑女でも何でもなくなったアリスが前のめりに聞く。
「で、でも、今日、アンソニー様にギュッてされた時に、なぜかポールお兄ちゃんの顔が浮かんで……」
「!!!」
「わ、わたし、ダメですよね!こんな、私なんかが図々しい……!」
アリスの驚きを非難と受け取ったクラリスが泣きそうな顔になる。
「違いますわ!クラリスさんは、『なんか』じゃありませんわ!」
「アリス様……」
「可愛くて綺麗で優しくて努力家でかっこいい所もあって……世界中の男性(ってか、全人類!)がクラリスちゃ、コホッ、さんを好きになってもおかしくないほどですわ!!」
「ア、アリス様、嬉しいですけど、さすがにそれは褒め過ぎです!」
クラリスは先ほどとは違う意味で真っ赤になる。
「いいえ、まだまだ言い足りないぐらいです!」
「……あ、ありがとうございます……」
アリスのあまりの剣幕に、クラリスは少し気圧されながらお礼を言った。
「コホン、で、ですから、クラリスさんがたくさんの男性から好意を向けられるのは何もおかしなことではありませんし、クラリスさんが迷うのもおかしなことではありませんわ。皆さま素敵な方ばかりですものね。いいんですのよ、クラリスさんはそのままで」
言って、アリスは優雅にお茶を飲んだ。
(そうよ、クラリスちゃんが望むなら逆ハーでも何でもいいのよ!できることなら私が独り占めしたいところだけども!)
「私、ずっと、どうしたらいいかわからなくって……アリス様の今のお言葉に気持ちが少し楽になりました。ありがとうございます!」
令嬢の仮面の下のアリスの思惑など気づかないクラリスは、感激した様子で涙ぐんだ。
そんな二人の会話を扉の外で聞いている人間がいたことに、アリスもクラリスも全く気づいていなかった。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
【完結】なぜか悪役令嬢に転生していたので、推しの攻略対象を溺愛します
楠結衣
恋愛
魔獣に襲われたアリアは、前世の記憶を思い出す。 この世界は、前世でプレイした乙女ゲーム。しかも、私は攻略対象者にトラウマを与える悪役令嬢だと気づいてしまう。 攻略対象者で幼馴染のロベルトは、私の推し。 愛しい推しにひどいことをするなんて無理なので、シナリオを無視してロベルトを愛でまくることに。 その結果、ヒロインの好感度が上がると発生するイベントや、台詞が私に向けられていき── ルートを無視した二人の恋は大暴走! 天才魔術師でチートしまくりの幼馴染ロベルトと、推しに愛情を爆発させるアリアの、一途な恋のハッピーエンドストーリー。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラや攻略不可キャラからも、モテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました
みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。
日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。
引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。
そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。
香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください
空飛ぶひよこ
恋愛
正式名称「乙女ゲームの悪役令嬢(噛ませ犬系)に転生して、サド心満たしてエンジョイしていたら、ゲームのヒロインが鬼畜女装野郎だったので、助けて下さい」
乙女ゲームの世界に転生して、ヒロインへした虐めがそのまま攻略キャラのイベントフラグになる噛ませ犬系悪役令嬢に転生いたしました。
ヒロインに乙女ゲームライフをエンジョイさせてあげる為(タテマエ)、自身のドエス願望を満たすため(本音)、悪役令嬢キャラを全うしていたら、実はヒロインが身代わりでやってきた、本当のヒロインの双子の弟だったと判明しました。
申し訳ありません、フラグを折る協力を…え、フラグを立てて逆ハーエンド成立させろ?女の振りをして攻略キャラ誑かして、最終的に契約魔法で下僕化して国を乗っ取る?
…サディストになりたいとか調子に乗ったことはとても反省しているので、誰か私をこの悪魔から解放してください
※小説家になろうより、改稿して転載してます
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる