【完結】転生ヒロインと転生(?)悪役令嬢は逆ハーエンドを回避したい! 〜R18禁エンドはごめんです!〜

koromachi

文字の大きさ
上 下
97 / 139

雨降って

しおりを挟む
 話が終わり、食堂を出るディミトリをポールとクラリスが見送る。

「あんた、一人で来たのか?」

 ポールが訝しむ。

「一応これでも公子だからね。離れた所に護衛がいるよ。心配してくれてありがとう」

「ふんっ、心配なんか」

「ああ、そうそう。今日ここに来る前にエラリーに会ってね」


「エラリー様のお怪我の様子は?!」

 エラリーという名にクラリスがいち早く反応した。

「良くはなっているようだが、まだ包帯は取れていない。身体を動かすのはキツそうだったね。そんな身体なのに、彼は一人でここに来ようとしていたよ」

「なんだって?!」

「恐らく今回の話を聞いたんじゃないのかな。君達のことをとても心配していたよ」

「あのバカ……!」

「エラリー様はどうされているんですか?!」

 クラリスの問いに、ディミトリはにっこりと笑って答えた。

「安心して。ちゃんとベッドに寝かせてきたよ。心配ならジャンとイメルダ嬢と一緒にお見舞いに行くといい。あの二人は毎日のようにエラリーの元に来ているようだからね」
 
「……」

「……」

 クラリスとポールは再び顔を見合わせた。


 ==========================


「「「「あ……」」」」


 一夜明け、学園に登校したポールとクラリスは校門のところで、久しぶりに登校したウィルとアンソニーとばったり出くわした。

 四人は一瞬気まずそうに顔を見合わせたが、クラリスが精一杯の大声で挨拶した。

「お、おはようございます!ウィル様、アンソニー様!」

「おはよう、クラリス嬢、ポール」

 その声にウィルがフッと笑うと、二人に声をかけた。

「……おはよう」

 ポールは横を向いたまま、小さな声で答える。

「……クラリス嬢、ポール……」

 アンソニーは驚きを隠せず、呆然とした顔で二人の名前を呼ぶ。


「あれー、みんなでこんな所に固まってどうしたのー?」

 と、その後ろからジャンの呑気な声が聞こえてきた。

「おはよう、ウィル、アンソニー。そして、ポール、クラリス嬢、おはよう!」

「皆様、おはようございます」

 ジャンとイメルダがにこにこと挨拶する。

「ああ、おはよう、ジャン、イメルダ嬢」

「おはようございます…!」

 ウィルとクラリスも笑顔で返す。

 ポールとアンソニーだけが、どんな顔をしていいのかわからず、戸惑っていた。

「さ、早く行かないと授業が始まっちゃうよ!」

 ジャンの声に、ひとまず全員でS階へと向かった。



「じゃあ、またお昼休みにね!」

 ジャンが言って、一年生三人と三年生三人が別れた。



「あの、ジャン様、イメルダ様、すみませ……」

「クラリス様、何も謝らないでください」

 教室に入り、ジャンとイメルダにこれまでの態度を謝罪しようとしたクラリスの言葉をイメルダが遮った。

「で、ですが、私はお二人にも失礼な態度を取ってしまって……」

 イメルダがクラリスの手を優しく取り、首を横に振った。

「クラリス様、また一緒に図書館で勉強しましょうね」

「もちろん僕も一緒にね」

 ジャンがイメルダの横から顔を出して、にっこりと笑う。

「……はい!喜んで!」

 クラリスは目尻の涙をそっと拭った。


 =========================


「あ~、その、なんだ、悪かっ……」

 三年生の教室の前で立ち止まったポールが少し顔を赤くしながら、ウィルとアンソニーに頭を下げようとしていた。


「ポール。生徒会室へ行こう」

 ウィルがポールの言葉を遮り、教室を素通りして先へと向かう。

「ウィル様!」

 慌ててアンソニーが後を追い、ポールも口をぽかんと開けたまま、後に続く。

「お、おい、授業はいいのか?お前らは久しぶりの登校なんじゃ……」

「授業よりも大事なことだよ。トニー、鍵を」

 アンソニーが生徒会室のドアを開ける。

 三人が中に入り、ドアを閉めるや否や、ウィルがポールに向かって深く頭を下げた。

「ポール、すまなかった」

 それを見たアンソニーも隣で頭を下げる。

「ポール、本当にすみませんでした」

「謝ってすむ問題ではないだろうが……それでも謝らせて欲しい」

「な、な、な、ちょっと待て!二人が謝る必要はないだろう!聞いたんだよ、全部。あのお節介な公世子から」

「ディミトリ様から?」

 アンソニーが少しだけ顔を上げて、驚いた表情を見せる。

「ああ。わざわざ食堂に一人で来たんだよ。今回のことはウィルもアンソニーも何も知らなかったんだろ?前のことも二人は猛反対してたって聞いたぞ。……なのに、俺が勝手に早とちりして暴走しちまった……すまなかった!」

 ポールが勢いよく頭を下げる。 


 長身の男達が、数秒の間、無言で頭を下げて向かい合った。


「……ふふふ」

「…はは」

「…へへっ」

 そのうち誰からともなく笑い出し、三人は、ひとしきり爆笑した。


「全く、お前らといい、あの公世子様といい、変な奴ばっかりだ」

 ポールが目元をぬぐいながら言う。

「変なのはポール、君も一緒ですよ」

「そうだな。あんなに真正面から王族に噛み付く男はそうそういないぞ」

 ウィルとアンソニーも笑いながら言う。

「ふん。俺達は友達なんだろ。じゃあ、王子様だろうが貴族だろうが関係ないじゃないか」

 少し不貞腐れた様子でポールが横を向く。

「ポール……友人と呼んでくれるんだな。ありがとう」

 ウィルが微笑みながら右手を差し出す。

「ふ、ふん、こちらこそ、だよ!」

 ポールがその手をがっしりと掴んだ。

「私も仲間に入れてください」

 そこにアンソニーの右手が重なった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

何やってんのヒロイン

ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。 自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。 始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・ それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。 そんな中とうとうヒロインが入学する年に。 ・・・え、ヒロイン何してくれてんの?

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

処理中です...