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独壇場
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「それで、トマスはどこに?」
「トマス様はセベール様の奥様の研究室にいらっしゃいました」
「何?!」
「セベールの奥方の研究室だと…?!」
ミミの報告に、国王と宰相が呆れた声を上げた。
「トマス様はセベール様の奥様の助手をさせられています。何でも、セベール様が戻る前にその部屋を出たら、修道院にいる妹の命の保証はないと言われたとかで」
「……セベールめ……」
「……戻ってきたら懲罰ものですな」
頭を抱える国王と宰相を横目に、アンソニーがミミを問いただす。
「セベール殿の居場所はわかっているのか?」
「いえ、まだわかー」
「陛下!見つかりました!」
騎士団長であるキンバリー伯爵の大声が、ミミの言葉を遮った。
「クラリス嬢が見つかったんですか?!」
誰よりも早く、アンソニーが反応する。
「まだ姿は確認できていませんが、恐らく間違いないかと。乗り捨てられた馬車の近くに、エラリーが乗っていった馬が繋がれていました」
「その場所は?!」
「元メッシー伯爵家の別邸です。町外れにあり、無人になっていた屋敷です」
「陛下、父上、私は騎士団と一緒にそこへ向かいます!」
「私も行こう」
国王の返事も待たず、アンソニーとディミトリは広間を飛び出した。
「陛下、愚息が申し訳ございません」
アンソニーの父の宰相が国王に頭を下げる。
「問題ない。それより、騎士団長、セベールもそこにいるのか?」
「それはまだ確認が取れていませんが、可能性はあるかと。……我が息子が勝手をして申し訳ございません。この件が片付きましたら、私ともどもどんな処罰でもお受けいたします」
キンバリー伯爵も深々と頭を下げた。
「その方のせいではない。セベールは立派な大人だ。奴の行為は奴の責任で償ってもらう。ひとまず、今はクラリス嬢の救出に全力をあげよ!」
「はっ!」
============================
「そ、それ以上近づいたら、この娘の命はないぞ!」
元メッシー伯爵家の別邸では、セベールと悪党達が対峙していた。まだ意識の戻らないクラリスを盾にし、ボスがセベールを牽制する。
「おやおや。そのでかい図体がそんなか細い少女で隠せるとでも?悪いことは言わない。優しく言っているうちにその娘を離した方がいいよ」
「何をっ!おい、お前達、早く馬車の準備をしろ!」
「「「へ、へいっ!」」」
ガンッ、ガンッ、ガンッ
ボスの命令で手下達が外へ出ようと振り向いた時、連続で鈍い音がして男達がドサッと倒れる。
「逃すわけがないだろう」
その後ろには、エラリーが木刀を手にして荒い息を吐いていた。
「俺を倒した木刀が役に立つとはな。これで残るのはお前だけだ。今すぐにクラリス嬢を離せ」
怒気を孕んだエラリーの低い声に、ボスはひるみながらもエラリーの方を振り向いて怒鳴る。
「う、うるさい!娘の首をへし折られたくなければ、近づくな!」
クラリスの細い首に、大男の太い腕が絡んだ、その時だった。
「あ……?」
男の首から血飛沫が飛んだ。
何が起きたのかわからないという顔で男がゆっくりと左に倒れかかる。
エラリーは木刀を投げ捨て、男の腕からクラリスを奪い取った。
ドンッ
ボスの巨体が床に倒れた後も、その首からは血飛沫が吹き出し続けていた。
「殺したのか?!」
「まだ死んではいないけどね。まあ、動脈を切ったから失血死するのは時間の問題だね」
にこにこと微笑みながらセベールが答える。
「兄上……」
「ん……」
エラリーが呆然とセベールを見つめた時、クラリスが身じろぎした。
「!クラリス嬢!大丈夫か!」
「ん……エラリー様……?」
「ああ、意識が戻ったんだな!よかった……!」
エラリーは腕の中のクラリスをひっしと抱きしめた。
「え……?!エラリー様………?!」
クラリスは何が起きているのかわからず焦るが、エラリーはその腕を緩めない。
「よかった……貴女が無事で本当によかった……」
「……え、ええと、いったい何が…」
まだ状況が把握できないクラリスが真っ赤になりながら問いかける。
「私の優秀な弟がいち早く君の救出に駆け付けたんだよ」
エラリーが答えるよりも先にセベールがにこやかに告げる。
「いや、俺一人では助けられなかった。兄上のおかげだ」
「え?!お二人は兄弟なんですか?!」
全く似ていない二人にクラリスが驚きの声を上げた時、それまで部屋の隅で震えていた貴族の男が叫んだ。
「な、なぜだ!なぜ、その女には薬が効いていない?!」
「薬なら効いていたじゃないか。彼女は先ほどまで意識を失っていたよ」
セベールが男に向き直る。
「あ、あの薬は強力な媚薬だったはずだ!その女は目覚めたら自分から肌をさらして男に擦り寄って行くと……うぎゃああ!!」
いつの間に移動したのか、セベールが男のそばにいた。その手は男の指を掴んでいる。
「その話は、後ほど地下牢でゆっくり聞かせてもらうよ。今はご婦人の前だからね。これ以上指を折られたくなければ黙っていることだね」
男に優しく言い聞かせ、握っていた指を離すと、セベールはエラリーに殴られて転がっている手下達を素早く縛りあげた。
「坊や達は拘束するまでもなさそうだが、念のために縛っておこうかな」
セベールが楽しそうにそう言った時、外がにわかに騒がしくなり、屋敷のドアが乱暴に開けられた。
「クラリス嬢!エラリー!」
「騎士団のご到着だね」
アンソニーの声にセベールはにっこり微笑んだ。
「トマス様はセベール様の奥様の研究室にいらっしゃいました」
「何?!」
「セベールの奥方の研究室だと…?!」
ミミの報告に、国王と宰相が呆れた声を上げた。
「トマス様はセベール様の奥様の助手をさせられています。何でも、セベール様が戻る前にその部屋を出たら、修道院にいる妹の命の保証はないと言われたとかで」
「……セベールめ……」
「……戻ってきたら懲罰ものですな」
頭を抱える国王と宰相を横目に、アンソニーがミミを問いただす。
「セベール殿の居場所はわかっているのか?」
「いえ、まだわかー」
「陛下!見つかりました!」
騎士団長であるキンバリー伯爵の大声が、ミミの言葉を遮った。
「クラリス嬢が見つかったんですか?!」
誰よりも早く、アンソニーが反応する。
「まだ姿は確認できていませんが、恐らく間違いないかと。乗り捨てられた馬車の近くに、エラリーが乗っていった馬が繋がれていました」
「その場所は?!」
「元メッシー伯爵家の別邸です。町外れにあり、無人になっていた屋敷です」
「陛下、父上、私は騎士団と一緒にそこへ向かいます!」
「私も行こう」
国王の返事も待たず、アンソニーとディミトリは広間を飛び出した。
「陛下、愚息が申し訳ございません」
アンソニーの父の宰相が国王に頭を下げる。
「問題ない。それより、騎士団長、セベールもそこにいるのか?」
「それはまだ確認が取れていませんが、可能性はあるかと。……我が息子が勝手をして申し訳ございません。この件が片付きましたら、私ともどもどんな処罰でもお受けいたします」
キンバリー伯爵も深々と頭を下げた。
「その方のせいではない。セベールは立派な大人だ。奴の行為は奴の責任で償ってもらう。ひとまず、今はクラリス嬢の救出に全力をあげよ!」
「はっ!」
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「そ、それ以上近づいたら、この娘の命はないぞ!」
元メッシー伯爵家の別邸では、セベールと悪党達が対峙していた。まだ意識の戻らないクラリスを盾にし、ボスがセベールを牽制する。
「おやおや。そのでかい図体がそんなか細い少女で隠せるとでも?悪いことは言わない。優しく言っているうちにその娘を離した方がいいよ」
「何をっ!おい、お前達、早く馬車の準備をしろ!」
「「「へ、へいっ!」」」
ガンッ、ガンッ、ガンッ
ボスの命令で手下達が外へ出ようと振り向いた時、連続で鈍い音がして男達がドサッと倒れる。
「逃すわけがないだろう」
その後ろには、エラリーが木刀を手にして荒い息を吐いていた。
「俺を倒した木刀が役に立つとはな。これで残るのはお前だけだ。今すぐにクラリス嬢を離せ」
怒気を孕んだエラリーの低い声に、ボスはひるみながらもエラリーの方を振り向いて怒鳴る。
「う、うるさい!娘の首をへし折られたくなければ、近づくな!」
クラリスの細い首に、大男の太い腕が絡んだ、その時だった。
「あ……?」
男の首から血飛沫が飛んだ。
何が起きたのかわからないという顔で男がゆっくりと左に倒れかかる。
エラリーは木刀を投げ捨て、男の腕からクラリスを奪い取った。
ドンッ
ボスの巨体が床に倒れた後も、その首からは血飛沫が吹き出し続けていた。
「殺したのか?!」
「まだ死んではいないけどね。まあ、動脈を切ったから失血死するのは時間の問題だね」
にこにこと微笑みながらセベールが答える。
「兄上……」
「ん……」
エラリーが呆然とセベールを見つめた時、クラリスが身じろぎした。
「!クラリス嬢!大丈夫か!」
「ん……エラリー様……?」
「ああ、意識が戻ったんだな!よかった……!」
エラリーは腕の中のクラリスをひっしと抱きしめた。
「え……?!エラリー様………?!」
クラリスは何が起きているのかわからず焦るが、エラリーはその腕を緩めない。
「よかった……貴女が無事で本当によかった……」
「……え、ええと、いったい何が…」
まだ状況が把握できないクラリスが真っ赤になりながら問いかける。
「私の優秀な弟がいち早く君の救出に駆け付けたんだよ」
エラリーが答えるよりも先にセベールがにこやかに告げる。
「いや、俺一人では助けられなかった。兄上のおかげだ」
「え?!お二人は兄弟なんですか?!」
全く似ていない二人にクラリスが驚きの声を上げた時、それまで部屋の隅で震えていた貴族の男が叫んだ。
「な、なぜだ!なぜ、その女には薬が効いていない?!」
「薬なら効いていたじゃないか。彼女は先ほどまで意識を失っていたよ」
セベールが男に向き直る。
「あ、あの薬は強力な媚薬だったはずだ!その女は目覚めたら自分から肌をさらして男に擦り寄って行くと……うぎゃああ!!」
いつの間に移動したのか、セベールが男のそばにいた。その手は男の指を掴んでいる。
「その話は、後ほど地下牢でゆっくり聞かせてもらうよ。今はご婦人の前だからね。これ以上指を折られたくなければ黙っていることだね」
男に優しく言い聞かせ、握っていた指を離すと、セベールはエラリーに殴られて転がっている手下達を素早く縛りあげた。
「坊や達は拘束するまでもなさそうだが、念のために縛っておこうかな」
セベールが楽しそうにそう言った時、外がにわかに騒がしくなり、屋敷のドアが乱暴に開けられた。
「クラリス嬢!エラリー!」
「騎士団のご到着だね」
アンソニーの声にセベールはにっこり微笑んだ。
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