【完結】転生ヒロインと転生(?)悪役令嬢は逆ハーエンドを回避したい! 〜R18禁エンドはごめんです!〜

koromachi

文字の大きさ
上 下
87 / 139

時間との戦い(続)

しおりを挟む
 ヤイミーから事の次第を聞いたアンソニーとポールは愕然とした。

「っ、くそっ!俺が側を離れたばっかりに……!」

 ポールは唇を噛み、拳を壁に叩きつけた。

「……ポール、落ち着いて。君のせいではありません。ひとまず、私はすぐに陛下にお知らせしてきます。君はヤイミー嬢と一緒にジャン達に話をしておいてください」

「あ、ああ、わかった……!ウィルにも知らせるのか?」

「ウィル様には……」

 アンソニーはアリスと踊るウィルを見た。今まで見たことのないような、幸せそうな笑顔を浮かべている。

「……今はまだお伝えしない方がいいでしょう。パーティーが終わるまでは騒ぎにならないようにしましょう」

 アンソニーの言葉にポールは頷いた。



「な、何?!クラリス嬢が攫われた?!」

国王が驚きの声をあげた。

「はい。今はエラリーが一人で後を追っているようです。陛下、すぐに騎士団を!」

「うむ。アラン、参加者に知られないように、急ぎ騎士団と特務部隊に知らせろ。元より出入口は一つに絞ってあるからな。出入りする人間の確認を徹底させろ。共犯者がまだ中にいるやもしれん」

「はっ!」

「アンソニー、お前はパーティーを早目に終わらせる段取りをつけろ。くれぐれも参加者には知られないように。騒ぎに乗じて共犯者に逃げられては困る」

「かしこまりました!」

「それから、ディミトリ公世子を呼んでくれ」

「はっ」



 ディミトリもまた、ダンスの誘いに列をなす令嬢達の相手に疲れ果てていた。

「ディミトリ様。少しお話しが」

「アンソニー!ああ、もちろん!」

 アンソニーに声をかけられ、助かったとばかりに令嬢達の輪から抜け出す。

「ふう。王国でも公国でも、女性は積極的だね」

 アンソニーに笑顔で話しかけるディミトリだったが、アンソニーの顔に浮かぶ焦りを見て、すぐに真面目な表情になった。

「国王陛下がお呼びです」

「陛下が?」

 二人は足早に国王の元に向かう。


「ディミトリ公世子。お楽しみのところ呼び立てしてすまない」

「とんでもない。むしろ助かりましたよ。それで、何か問題でも?」

「ああ。実は、我が国の民がこの会場から拐かされた。これより我が騎士団は全力でその救出にあたる」

「……民が誘拐された?もしやクラリス嬢が……?」


 ディミトリは、パーティーが始まってすぐにウィル達から紹介された、美しい少女のことを思い浮かべた。


「申し訳ないが、エリザベス公女の護衛には最低限の人数しかさけない。公女の身の安全の確保は公国側にお願いしたい」




 王宮主催のパーティーにも関わらず警備が手薄になっていたのは、ブートレット公国から無理矢理やってきたエリザベスのせいだった。

 ディミトリ宛に来た招待状を盗み見たエリザベスは、侍女に紛れてこっそりとディミトリについてきていたのだ。

 パーティー前日に王国に到着した後、ドヤ顔でディミトリの前に姿を現したエリザベスを見て、ディミトリは頭を抱えた。

 公国からはディミトリのための、最低限の護衛しか連れてきておらず、公女の護衛は王国の騎士団にお願いするしかなかった。

 おまけにエリザベスがじっとしておらず、王宮内はおろか、王都中をフラフラ出歩いていたため、結構な数の騎士をその護衛に当てざるを得なかったのだ。



「……わかりました。すぐに妹を捕まえて部屋に閉じ込めてきます。騎士達はすぐに解放いたしますので」

「話が早くて助かる。礼を言う」

「おやめください。元はと言えば、我々公国側の落ち度なのですから」

 頭を下げようとする国王を制して、ディミトリはアンソニーを振り返った。

「エリザベスを確保したら、私も捜索に加わろう。後で詳しいことを教えてくれ」

 アンソニーが頷くのを確認して、ディミトリは急ぎ足でパーティー会場を後にした。


 ===========================


 (!見つけた!あの馬車だ!)

 一人、誘拐犯の後を追っていたエラリーは、前を走る馬車に気づき、スピードを上げて追いつこうとした所で、ハッと踏みとどまった。

 (あの馬車にクラリス嬢が乗っているのは間違いなさそうだが……いかんせん、敵の人数がわからない。会場からそのまま出てきたから今の俺は丸腰だし、相手が複数で帯剣していれば分が悪い)

 剣術だけでなく、体術にも自信のあるエラリーだったが、敵の情報がない中に飛び込んでいくのは、いくら何でも無謀に思えた。

 (だが、急がなければクラリス嬢の身が危ない。くそっ、どうすればいい?!)

 馬車に気づかれないよう、夜闇に乗じて後を追いながら、エラリーは必死で考えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の男運が最悪で婚約破棄をしたいのに、現れたのは王子様でした?

かがみもち
恋愛
⭐️完結! 読んで下さった皆様本当にありがとうございました😭🙏✨✨✨  私には前世の記憶がある。  前世では波乱万丈、苦労も多く、その理由は借金、酒、女とだらしのない元旦那の存在だった。  この異世界転生を優雅に謳歌するため、私の人生を狂わす恐れのある婚約は破棄したい。  なのに、婚約者は絵に描いたようにモテまくる金髪蒼眼の王子様。に加えて、やけに親切なミステリアスな仮面の青年も現れて。  互いに惹かれ合いながらも、底知れない呪いに絡み取られていく主人公たちの結末はーー……。 ※エピソード整理ができてなくて、まったり進行で申し訳ないです。 そのうち書き直したいなと思っていたり。。 2章からは比較的事件?が勃発致します🙇‍♀️💦💦 ※お目汚しで大変恐縮ではありますが、表紙やら挿絵、小ネタ的なモノをつけてます……。笑 落書きみたいなもので恐縮です。。苦手な方は薄目で閉じてくださいますと幸いです……。← ※一人称の練習も含んでいます。読みづらい、違和感などあれば教えて頂けますと大変参考になります。よろしくお願い致します。 ※よく迷走しているので題名やらが謎にバッサリチョコチョコ変わったりする場合があります……滝汗  ご指摘、ご感想、ご意見など頂けましたら大変喜びます……(*´꒳`*)  どうぞよろしくお願い致します。

❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!    「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」   これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。   おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。 ヒロインはどこいった!?  私、無事、学園を卒業できるの?!    恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。   乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。 裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。 2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。   2024年3月21日番外編アップしました。              *************** この小説はハーレム系です。 ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。 お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)        *****************

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

ヤンデレ悪役令嬢は僕の婚約者です。少しも病んでないけれど。

霜月零
恋愛
「うげっ?!」  第6王子たる僕は、ミーヤ=ダーネスト公爵令嬢を見た瞬間、王子らしからぬ悲鳴を上げてしまいました。  だって、彼女は、ヤンデレ悪役令嬢なんです!  どうして思いだしたのが僕のほうなんでしょう。  普通、こうゆう時に前世を思い出すのは、悪役令嬢ではないのですか?  でも僕が思い出してしまったからには、全力で逃げます。  だって、僕、ヤンデレ悪役令嬢に将来刺されるルペストリス王子なんです。  逃げないと、死んじゃいます。  でも……。    ミーヤ公爵令嬢、とっても、かわいくないですか?  これは、ヤンデレ悪役令嬢から逃げきるつもりで、いつの間にかでれでれになってしまった僕のお話です。 ※完結まで執筆済み。連日更新となります。 他サイトでも公開中です。

88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう

冬月光輝
恋愛
 ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。  前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。  彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。  それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。  “男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。  89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。

処理中です...