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波乱の歓迎会(続)
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アーゴク侯爵令嬢であるブリトニーは、人生でこれまでにないほど、鼻高々だった。
見目麗しい隣国の王太子と、その王太子に負けないほど美しい公爵令息が、ブリトニーだけをみつめながら、後に付き従っているのだ。
(ふふ、あのモーブ公爵令嬢の顔ったら!本当に見ものだったわ。ソノータ侯爵令嬢だって、いつも自分が一番みたいな顔をしているけど、今日ばかりはそうもいかなかったみたいね!)
ライバル令嬢達の悔しそうな顔を思い出し、小鼻を膨らませると、ブリトニーは侯爵家が抑えている休憩室に二人を案内した。
「ウィリアム王太子殿下、ハートネット公爵令息、こちらがアーゴク侯爵家の休憩室になります」
得意げな顔を必死に隠しながら、ドアを手で指し示す。
アンソニーがスッと前に出ると、ドアを押し開き、ブリトニーを先に通す。
「どうぞ、アーゴク侯爵令嬢」
「まあ、ありがとうございます!」
アンソニーに微笑まれて顔を赤くした(らしい)ブリトニーがドアをくぐろうと背を向けた隙に、アンソニーはさっと室内に目を走らせた。
(うちの影以外に隠れている刺客はいないようだな)
「ウィル様、どうぞ」
室内の安全を確認し、アンソニーはウィルを先に通した。敢えてドアは閉めないまま、アンソニーもウィルに続く。
「あら、どうしてドアをお閉めにならないの?」
「一対一ではないとはいえ、こんなに美しいレディーと男二人が密室にいたとなると、どのような心ない噂が広まるかわかりませんからね」
ブリトニーの疑問に、ウィルがキラキラスマイルで答える。
「まあ!ウィリアム殿下ったら!美しいレディーだなんて!嫌ですわ!」
全く嫌そうじゃない声で言いながら、ブリトニーは身をよじる。
(本当はこの部屋でのやり取りが廊下によく聞こえるようにだけどね)
(アーゴク侯爵といい、この令嬢といい、決して頭が切れる方ではなさそうですが、黒幕はやはり夫人の方ですかね?)
ウィルとアンソニーは目で会話をしていた。
「失礼いたします」
そこに、赤ワインのボトルとグラスを持った侍従がやって来て、一礼すると、テーブルの上にグラスを並べ始めた。
ワインの栓は予め抜いてあり、三人のグラスに半分ずつくらいワインを注ぐと、また一礼して去って行った。
「あ、ドアは開けたままで大丈夫ですよ」
部屋を出る際に開け放したドアを閉めようとしたが、アンソニーが笑顔で止めた。
侍従は少し困ったような顔をしたが、アンソニーの笑顔の圧に負けて、そのまま去って行った。
「確かブートレット公国は、十六歳からお酒が飲めるんでしたね」
「ええ。私も先月十六歳になったので、もうお酒を飲んでも大丈夫なんです」
ウィルの問いにブリトニーがドヤ顔で答え、グラスを手にする。
「さあ、お二人ともグラスをお持ちになって。乾杯いたしましょう」
「あ、その前に失礼。プワゾー、毒味を頼むよ」
「はっ」
どこから現れたのか、性別も年齢も不詳な使用人がサッとウィルのグラスを手に取った。
それを見たブリトニーは一瞬呆気に取られたが、すぐに顔色を変えて抗議した。
「そ、そんな、毒味だなんて、必要ありませんわ!王太子殿下は我がアーゴク侯爵家をお疑いになるんですの?!」
ブリトニーのキンキン声が響く。その声は廊下まで届き、慌ててアーゴク侯爵夫妻が飛んできた。
「ブ、ブリトニー!どうしたんだ、大きな声を出して」
「だってお父様!王太子殿下が、我が家の用意したワインの毒味を使用人に命じられたから!」
「な、何っ?!ウィリアム殿下は、我が侯爵家が信用ならないと仰るのか!」
顔を赤くしたり、青くしたりと忙しいアーゴク侯爵の横で、夫人がわざとらしく泣き崩れる。
「まあ、こんな仕打ちって!隣国からのお客様を歓迎しようと特別に取り寄せたワインでしたのに」
アンソニーは三文芝居に内心苦笑しながら、アーゴク侯爵に自身の前にあるワイングラスを差し出した。
「王太子であるウィリアム殿下が、飲食前に毒味を依頼することは当然のことです。そんなに疑われるのがお嫌なら、侯爵ご自身で潔白を証明されてはいかがでしょう」
「い、いや、わしは医師から酒を止められていて……」
「では、侯爵夫人、お願いいたします」
「え、わ、私はもともとお酒は飲めないんです!」
「では、先ほど我々と乾杯しようとしていたアーゴク侯爵令嬢なら、お飲みになられますよね?」
アンソニーは穏やかだが、有無を言わせない声で、侯爵家族を追い詰める。
「わ、私は、お酒はまだ……」
「おや、先ほど、十六歳になったからお酒が飲めると嬉しそうに話していたようだが。あれは嘘だったということかな?」
ウィルはわざと不思議そうに問いかける。
「え、いえ、あれは……!」
ブリトニーは何も言い返せずに、ブルブル震え始めた。
その時。
「はあ。もうよい。もう存分にわかった」
「ほんと、ウィリアム達の言った通りだったんだ」
呆れたような声が廊下から聞こえたかと思うと、ブートレット大公とディミトリ公世子が廊下の暗がりから姿を現した。
見目麗しい隣国の王太子と、その王太子に負けないほど美しい公爵令息が、ブリトニーだけをみつめながら、後に付き従っているのだ。
(ふふ、あのモーブ公爵令嬢の顔ったら!本当に見ものだったわ。ソノータ侯爵令嬢だって、いつも自分が一番みたいな顔をしているけど、今日ばかりはそうもいかなかったみたいね!)
ライバル令嬢達の悔しそうな顔を思い出し、小鼻を膨らませると、ブリトニーは侯爵家が抑えている休憩室に二人を案内した。
「ウィリアム王太子殿下、ハートネット公爵令息、こちらがアーゴク侯爵家の休憩室になります」
得意げな顔を必死に隠しながら、ドアを手で指し示す。
アンソニーがスッと前に出ると、ドアを押し開き、ブリトニーを先に通す。
「どうぞ、アーゴク侯爵令嬢」
「まあ、ありがとうございます!」
アンソニーに微笑まれて顔を赤くした(らしい)ブリトニーがドアをくぐろうと背を向けた隙に、アンソニーはさっと室内に目を走らせた。
(うちの影以外に隠れている刺客はいないようだな)
「ウィル様、どうぞ」
室内の安全を確認し、アンソニーはウィルを先に通した。敢えてドアは閉めないまま、アンソニーもウィルに続く。
「あら、どうしてドアをお閉めにならないの?」
「一対一ではないとはいえ、こんなに美しいレディーと男二人が密室にいたとなると、どのような心ない噂が広まるかわかりませんからね」
ブリトニーの疑問に、ウィルがキラキラスマイルで答える。
「まあ!ウィリアム殿下ったら!美しいレディーだなんて!嫌ですわ!」
全く嫌そうじゃない声で言いながら、ブリトニーは身をよじる。
(本当はこの部屋でのやり取りが廊下によく聞こえるようにだけどね)
(アーゴク侯爵といい、この令嬢といい、決して頭が切れる方ではなさそうですが、黒幕はやはり夫人の方ですかね?)
ウィルとアンソニーは目で会話をしていた。
「失礼いたします」
そこに、赤ワインのボトルとグラスを持った侍従がやって来て、一礼すると、テーブルの上にグラスを並べ始めた。
ワインの栓は予め抜いてあり、三人のグラスに半分ずつくらいワインを注ぐと、また一礼して去って行った。
「あ、ドアは開けたままで大丈夫ですよ」
部屋を出る際に開け放したドアを閉めようとしたが、アンソニーが笑顔で止めた。
侍従は少し困ったような顔をしたが、アンソニーの笑顔の圧に負けて、そのまま去って行った。
「確かブートレット公国は、十六歳からお酒が飲めるんでしたね」
「ええ。私も先月十六歳になったので、もうお酒を飲んでも大丈夫なんです」
ウィルの問いにブリトニーがドヤ顔で答え、グラスを手にする。
「さあ、お二人ともグラスをお持ちになって。乾杯いたしましょう」
「あ、その前に失礼。プワゾー、毒味を頼むよ」
「はっ」
どこから現れたのか、性別も年齢も不詳な使用人がサッとウィルのグラスを手に取った。
それを見たブリトニーは一瞬呆気に取られたが、すぐに顔色を変えて抗議した。
「そ、そんな、毒味だなんて、必要ありませんわ!王太子殿下は我がアーゴク侯爵家をお疑いになるんですの?!」
ブリトニーのキンキン声が響く。その声は廊下まで届き、慌ててアーゴク侯爵夫妻が飛んできた。
「ブ、ブリトニー!どうしたんだ、大きな声を出して」
「だってお父様!王太子殿下が、我が家の用意したワインの毒味を使用人に命じられたから!」
「な、何っ?!ウィリアム殿下は、我が侯爵家が信用ならないと仰るのか!」
顔を赤くしたり、青くしたりと忙しいアーゴク侯爵の横で、夫人がわざとらしく泣き崩れる。
「まあ、こんな仕打ちって!隣国からのお客様を歓迎しようと特別に取り寄せたワインでしたのに」
アンソニーは三文芝居に内心苦笑しながら、アーゴク侯爵に自身の前にあるワイングラスを差し出した。
「王太子であるウィリアム殿下が、飲食前に毒味を依頼することは当然のことです。そんなに疑われるのがお嫌なら、侯爵ご自身で潔白を証明されてはいかがでしょう」
「い、いや、わしは医師から酒を止められていて……」
「では、侯爵夫人、お願いいたします」
「え、わ、私はもともとお酒は飲めないんです!」
「では、先ほど我々と乾杯しようとしていたアーゴク侯爵令嬢なら、お飲みになられますよね?」
アンソニーは穏やかだが、有無を言わせない声で、侯爵家族を追い詰める。
「わ、私は、お酒はまだ……」
「おや、先ほど、十六歳になったからお酒が飲めると嬉しそうに話していたようだが。あれは嘘だったということかな?」
ウィルはわざと不思議そうに問いかける。
「え、いえ、あれは……!」
ブリトニーは何も言い返せずに、ブルブル震え始めた。
その時。
「はあ。もうよい。もう存分にわかった」
「ほんと、ウィリアム達の言った通りだったんだ」
呆れたような声が廊下から聞こえたかと思うと、ブートレット大公とディミトリ公世子が廊下の暗がりから姿を現した。
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