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お見舞いに行こう(続)
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「皆様、わざわざお見舞いに来ていただき、ありがとうございます。こんな格好ですみません。まだあまり動かないように言われていまして」
「そんなこと気にしないでくださいな。クラリスさんのお顔が見られるだけで十分ですわ」
「そうだよ。クラリス嬢は怪我人なんだからさ、安静にしていないと」
「クラリス様、これはジャン様とエラリー様と一緒にまとめた授業のノートです。もしよかったら参考になさってくださいね」
アリスとジャン、イメルダが口々にクラリスに見舞いの言葉をかける。その後ろでポール、エラリー、アンソニーは誰が一番最初にクラリスの側に行くかで、密かに争っていた。
そんな騒がしい中、クラリスの側についていたフレデリックがアリスに頭を下げた。
「アリス様。ウィリアム王太子殿下からお伺いしました。この度のコモノー男爵親子逮捕には、アリス様のお力添えがあったとか。妹のために色々とご配慮いただき、本当にありがとうございました」
「え!そんな!私は何もしていませんわ!」
アリスの声が高くなる。
「アリス様、私もまだお礼をお伝えできていませんでした。私がアリス様にコモノー男爵達のお話をした後、あの人達がお店に来なくなったのは、アリス様のおかげだったんですね。ありがとうございました。これでもう安心してお店の手伝いをすることができます」
(推しからダブルでお礼を言われるなんて……!!生きてて良かった……!!)
喜びのあまり言葉を失っているアリスの側に、いつの間にかウィルがやって来て、アリスの腰を抱いた。
「?!」
「あ、始まった」
驚きで固まるアリスを無視して、ウィルがキラキラ王子様スマイルでフレデリックを見た。その後ろで、ジャンが楽しそうにニヤニヤしている。
「私の婚約者は有能で友人思いなんだ。今回も彼女の働きかけのお陰で、悪い奴らを捕まえることができて良かったよ」
「はい。本当にありがとうございます。妹だけでなく、私まで王宮でお世話になってしまって……」
フレデリックは生真面目に頭を下げる。
「コモノー男爵親子は逮捕できたとはいえ、クラリス嬢には怪我をさせてしまったからね。騎士団がもっとしっかりしていたら、こんなことにはならなかった。だから、クラリス嬢が元気になるまでは、ここでしっかり療養してもらうよ」
「「ありがとうございます」」
クラリスとフレデリックは感謝の念を込めてキラキラとした瞳でウィルを見つめた。
(私のクラリスちゃんとフレデリック様からそんな目で見つめられるなんて、ズルい!)
思わずアリスはキッとウィルを睨みつけた。そんなアリスの視線を軽く受け止めると、ウィルはアリスに告げた。
「アリス嬢。今日は私とのお茶会の予定だったね。庭に用意させてあるから行こうか」
「お、お茶会……ですか……?」
(え、いや、何言ってんの?そんな予定初耳ですけど!)
「みんなもあまり長居してクラリス嬢を疲れさせないようにね。さ、アリス嬢、行こう」
ウィルはみんなに声をかけると、怪訝そうに見つめるアリスの手を取り、颯爽と部屋を出て行った。
「やれやれ。ウィルも余裕ないよねー」
「ジャン様!」
呆れたように言うジャンをイメルダが慌てて嗜めた。
「はー、ようやくクラリスの顔が見られた。クラリス、調子はどうだ?」
皆がウィルとアリスを見送っている隙に、ポールがすかさずクラリスの側に立つ。
「ポールお兄ちゃん!この間は助けてくれてありがとう!ちゃんとお礼も言えてなくてごめんね」
「おう。あ、これ、クラリスの好きなクランベリーパイ。焼き立てだからうまいぞ」
甘酸っぱい香りがふわっと広がり、クラリスが満面の笑みを浮かべる。
「うわあ!ポールお兄ちゃんのクランベリーパイ、久しぶり!嬉しい!」
「でも、焼き立てって。ポール、お前いつの間に?今日は授業があったんじゃないのか?」
フレデリックがもっともな質問をする。
「へへ。今日は急な腹痛で早退したんだ」
「だから三限目のあと姿が見えなかったんですね。全く君という人は……」
いつの間にかアンソニーがポールの横に立っていて、呆れた声をあげた。
「あ、なんだ、お前、いつの間に!」
「クラリス嬢、先ほどウィル様がおっしゃっていたこと、王宮に務める人間として、私からもお詫びいたします。あなたを守れず、傷つけてしまい、すみませんでした」
右手をお腹にあて、深々と頭を下げるアンソニーに、クラリスとフレデリックが慌てる。
「そんな、アンソニー様のせいではありません!お顔を上げてください!」
「そうです。アンソニー様のおかげで妹も私も、ここでとてもよくしていただいています。謝られるようなことは何もありません」
「そう言っていただけると、気が楽になります」
アンソニーが一転、ウィルにも負けないぐらいのキラキラオーラを出しながら、持ってきた本をクラリスに差し出す。
「これは昨日お渡しした本の続巻です。具合のいい時の暇つぶしにどうぞ」
「まあ!ありがとうございます!昨日いただいた本がとても面白くて、続きが気になっていたんです。嬉しいです!ありがとうございます!」
クラリスが目を輝かせて本を受け取ると、アンソニーはクラリスの片手を取った。
「ところで、先ほど私の名前を間違えていましたよ?」
片目をつぶりながら、クラリスの手を自身の口元に持っていく。
「あ!すみません、つい、その……」
「ん?」
「あ、あの、トニー様……」
「そうです、私の名前を忘れないでくださいね」
にっこり笑ってクラリスの手の甲に軽く口付けを落とす。と、隣で石化していたポールがハッと気づくと、慌ててクラリスからアンソニーを引き剥がした。
「そんなこと気にしないでくださいな。クラリスさんのお顔が見られるだけで十分ですわ」
「そうだよ。クラリス嬢は怪我人なんだからさ、安静にしていないと」
「クラリス様、これはジャン様とエラリー様と一緒にまとめた授業のノートです。もしよかったら参考になさってくださいね」
アリスとジャン、イメルダが口々にクラリスに見舞いの言葉をかける。その後ろでポール、エラリー、アンソニーは誰が一番最初にクラリスの側に行くかで、密かに争っていた。
そんな騒がしい中、クラリスの側についていたフレデリックがアリスに頭を下げた。
「アリス様。ウィリアム王太子殿下からお伺いしました。この度のコモノー男爵親子逮捕には、アリス様のお力添えがあったとか。妹のために色々とご配慮いただき、本当にありがとうございました」
「え!そんな!私は何もしていませんわ!」
アリスの声が高くなる。
「アリス様、私もまだお礼をお伝えできていませんでした。私がアリス様にコモノー男爵達のお話をした後、あの人達がお店に来なくなったのは、アリス様のおかげだったんですね。ありがとうございました。これでもう安心してお店の手伝いをすることができます」
(推しからダブルでお礼を言われるなんて……!!生きてて良かった……!!)
喜びのあまり言葉を失っているアリスの側に、いつの間にかウィルがやって来て、アリスの腰を抱いた。
「?!」
「あ、始まった」
驚きで固まるアリスを無視して、ウィルがキラキラ王子様スマイルでフレデリックを見た。その後ろで、ジャンが楽しそうにニヤニヤしている。
「私の婚約者は有能で友人思いなんだ。今回も彼女の働きかけのお陰で、悪い奴らを捕まえることができて良かったよ」
「はい。本当にありがとうございます。妹だけでなく、私まで王宮でお世話になってしまって……」
フレデリックは生真面目に頭を下げる。
「コモノー男爵親子は逮捕できたとはいえ、クラリス嬢には怪我をさせてしまったからね。騎士団がもっとしっかりしていたら、こんなことにはならなかった。だから、クラリス嬢が元気になるまでは、ここでしっかり療養してもらうよ」
「「ありがとうございます」」
クラリスとフレデリックは感謝の念を込めてキラキラとした瞳でウィルを見つめた。
(私のクラリスちゃんとフレデリック様からそんな目で見つめられるなんて、ズルい!)
思わずアリスはキッとウィルを睨みつけた。そんなアリスの視線を軽く受け止めると、ウィルはアリスに告げた。
「アリス嬢。今日は私とのお茶会の予定だったね。庭に用意させてあるから行こうか」
「お、お茶会……ですか……?」
(え、いや、何言ってんの?そんな予定初耳ですけど!)
「みんなもあまり長居してクラリス嬢を疲れさせないようにね。さ、アリス嬢、行こう」
ウィルはみんなに声をかけると、怪訝そうに見つめるアリスの手を取り、颯爽と部屋を出て行った。
「やれやれ。ウィルも余裕ないよねー」
「ジャン様!」
呆れたように言うジャンをイメルダが慌てて嗜めた。
「はー、ようやくクラリスの顔が見られた。クラリス、調子はどうだ?」
皆がウィルとアリスを見送っている隙に、ポールがすかさずクラリスの側に立つ。
「ポールお兄ちゃん!この間は助けてくれてありがとう!ちゃんとお礼も言えてなくてごめんね」
「おう。あ、これ、クラリスの好きなクランベリーパイ。焼き立てだからうまいぞ」
甘酸っぱい香りがふわっと広がり、クラリスが満面の笑みを浮かべる。
「うわあ!ポールお兄ちゃんのクランベリーパイ、久しぶり!嬉しい!」
「でも、焼き立てって。ポール、お前いつの間に?今日は授業があったんじゃないのか?」
フレデリックがもっともな質問をする。
「へへ。今日は急な腹痛で早退したんだ」
「だから三限目のあと姿が見えなかったんですね。全く君という人は……」
いつの間にかアンソニーがポールの横に立っていて、呆れた声をあげた。
「あ、なんだ、お前、いつの間に!」
「クラリス嬢、先ほどウィル様がおっしゃっていたこと、王宮に務める人間として、私からもお詫びいたします。あなたを守れず、傷つけてしまい、すみませんでした」
右手をお腹にあて、深々と頭を下げるアンソニーに、クラリスとフレデリックが慌てる。
「そんな、アンソニー様のせいではありません!お顔を上げてください!」
「そうです。アンソニー様のおかげで妹も私も、ここでとてもよくしていただいています。謝られるようなことは何もありません」
「そう言っていただけると、気が楽になります」
アンソニーが一転、ウィルにも負けないぐらいのキラキラオーラを出しながら、持ってきた本をクラリスに差し出す。
「これは昨日お渡しした本の続巻です。具合のいい時の暇つぶしにどうぞ」
「まあ!ありがとうございます!昨日いただいた本がとても面白くて、続きが気になっていたんです。嬉しいです!ありがとうございます!」
クラリスが目を輝かせて本を受け取ると、アンソニーはクラリスの片手を取った。
「ところで、先ほど私の名前を間違えていましたよ?」
片目をつぶりながら、クラリスの手を自身の口元に持っていく。
「あ!すみません、つい、その……」
「ん?」
「あ、あの、トニー様……」
「そうです、私の名前を忘れないでくださいね」
にっこり笑ってクラリスの手の甲に軽く口付けを落とす。と、隣で石化していたポールがハッと気づくと、慌ててクラリスからアンソニーを引き剥がした。
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