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なんかゲームと違う…(今更?!)

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「えーっと。今日わかったことは……」



 攻略対象その1.
 ウィル。王太子。アリスの婚約者。
 三年生。学園トップの成績を誇る。生徒会長。何でもできる。銀髪、翠眼。長身。キラキラ。

 攻略対象その2.
 エラリー。騎士団長の息子で伯爵家の次男。一年生。ウィルとは幼馴染。剣の腕は学園一。茶髪、瞳は琥珀色。長身。ウィルに比べるとキラキラ控えめ。

 攻略対象その3.
 ジャン。ドットールー侯爵家の嫡男。一年生。医薬学の分野では敵なし。最近自らの商会を立ち上げて、化粧品分野に進出している。金髪、碧眼。身長はそれほど高くなく、アリスより少し高いくらい。やっぱりキラキラ。



「ゲームではこの三人以外にも攻略対象者がいたような気がするけど、自己紹介してくれた人が多過ぎて、正直全員は把握できてない……」

「あ!お昼の時にはいなかったけど、休み時間に挨拶しに来てくれた、ウィル様の側近の方がいたっけ。宰相の息子って言ってたし、多分攻略対象者で間違いないわよね」



 攻略対象その4.
 アンソニー。ハートネット公爵家の嫡男。三年生。宰相の息子でウィルの側近。赤毛、瞳の色はハシバミ色。眼鏡男子。ウィルとジャンの中間ぐらいの身長。第一印象は苦労人。
  


「だけど、今日のお昼の時の様子を見る限り、ウィル様とジャン様はヒロイン(=私だけども!)には興味なさそうだけどなあ。ウィル様なんて、アリス様の反応を引き出す触媒程度にしか私のこと見てなさそう。ジャン様だって、イメルダ様にクリームを渡すための口実に私を使ったようにしか見えなかったけど。あの二人は間違いなく腹黒よね」


 前世での恋愛経験値は0に等しかったが、自分のことより人のことはよく見えるもので、クラリスは案外的確に状況を把握していた。


「エラリー様は……うーん、よくわからないな……フラグ?とやらは立ってないよね……?アンソニー様はクラスも違うし、挨拶以外の接触はなかったし、多分大丈夫だろうけど」

「エラリー様は同じクラスだし、今後全く関わらないわけにはいかないけど……なんとか接触を必要最低限にしないと!」

 平穏な未来のために、クラリスは拳を握りしめて頷いた。

「それにしても、アリス様はどうしてあんなに私によくしてくださるのかしら」


 =================================================


 授業が終わるとアリスに声をかけられ、今日も公爵家の馬車で送ってもらうことになってしまった。おまけに、クラリスの実家の大衆食堂に食べに行きたいと、アリスが言い始め、帰り道にそのまま店に寄ってもらうことに。

 幸い夕食時よりだいぶ早い時間だったため、客はまばらで、アリスにも落ち着いて食事を提供することできた。



「ふふ、さすがのお父さんもびっくりして固まっていたわね」



 高等部に進学して、娘が初めて連れてきた友人が公爵令嬢だったら、それは驚くだろう。
 飾り気のない素朴過ぎる店内に、控えめとはいえ一目で上質だとわかる服を着た大人びた美少女は明らかに不釣り合いだったが、本人は気にする様子もなく、にこやかにクラリスの両親に挨拶した。


「オストロー公爵家が娘、アリスと申します。クラリスさんとは親しくお付き合いさせていただいております。今後ともぜひよろしくお願いいたします」

「これはご丁寧に……うちの娘がお世話になっているようで、ありがとうございます」

 さすがの接客スキルで、クラリスの母もにっこり微笑みを返す。

「……クラリスちゃんと同じ笑顔…!大人になったクラリスちゃんも素敵!推せるわ!」

「あの、アリス様?」

 何やらブツブツ呟きながら下を向いてしまったアリスを心配して、クラリスがアリスの顔を覗き込む。

「……!」

 少し眉を寄せて心配そうにこちらを見上げるクラリスのあまりの可愛さに、危うく昇天しかけたアリスだったが、何とか今世での自分の立場を思い出して、慌てて笑顔で取り繕った。

「わ、私、こちらのお店は初めてですの。ぜひ、クラリスさんのおすすめの料理をいただきたいのだけど、どれがいいかしら?」

「あ、はい!えーっと、私の一番のおすすめは、この『田舎風チキンの煮込み定食』です!チキンがほろほろと柔らかくて、とても美味しいんですよ」

 (く~!クラリスちゃんのこの笑顔だけで、白米五号はいける!)

 内心は、推しを前にした公爵令嬢の皮を被ったオタク以外の何者でもないが、必死で令嬢スマイルを浮かべて優雅に頷く。

「では、それをお願いいたしますわ」

「はい!ありがとうございます!」

 (あ、語彙力……)




「ただいまー」

「あ!お兄ちゃん!今日は早かったのね!」

「ああ、今日は近くで仕入れられたからな。……そちらのお嬢様は……?」 

 一目で貴族とわかるアリスに、フレデリックは少し警戒した眼差しを向ける。

「あ、お兄ちゃん、こちらの方はオストロー公爵家のご令嬢のアリス様よ。学園のお友達で、とてもよくしていただいてるの!」

 フレデリックの顔を見つめて固まっていたアリスが、慌てて自己紹介をする。

「ご、ご挨拶が遅れて失礼いたしました。アリスと申します」

「いや、あ、すみません、こんな店に貴族の方がいらっしゃるのは珍しいから、何かあったのかと思って。俺はクラリスの兄のフレデリックといいます。妹がお世話になってるようで」

 (クラリスちゃんと同じ顔のイケメンがこの世に存在するなんて……!ああ、もう、このお店に住み着きたい!!)

 あまりの推し濃度の高さに、思考回路が地縛霊のそれになっていくアリスだった。
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