日々の欠片

小海音かなた

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12/12『最新型の万歩計』

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 なんじゃこりゃ。ずいぶん進化してんな、万歩計。
 ドラッグストアの一角で、人形が入ったブリスターパックを手に取った。
 台紙に印刷された商品名の上側に配置された雲型吹き出しみっつ、それぞれに【歩く!】【歌う!】【踊る!】と書かれている。
 確かに人形には球体関節が用いられてるけど……自由に動くのかな?
 私の中に宿る【少年】がワクワクと瞳を輝かせてる。
 台紙裏の説明文を見るが、どんな風に動くのかわからない。
 三千円 (税込)と安くはないけど、万歩計欲しかったし、買ってみる価値ありそうだ。
 二足歩行式のキャラ化された犬、猫、熊の三種類あり、すんごく悩んで熊にした。
 犬猫だと身近すぎて感情移入しすぎて、万が一故障・紛失したら悲しみが大きそうだったからだ。
 帰宅して入浴や夕食を済ませてから開封した。
 そういえば電池ってどうなってんだろ。
 説明書を読んでいたら、カタリと音がした。
『うーん……良く寝たぁ』
 机の上で熊が伸びをしてる。
 えっ! 喋るとか書いてないけど⁈
『あっ、おはよう。あなたはだぁれ? お名前教えて?』
「ひっ、ヒカリ。前嶋、ヒカリ」
『マエジマ、ヒカリ? ヒカリさん! わぁー素敵なお名前! これからよろしくね!』
 熊はコチラへ歩いてきて握手を求めた。
 動きスゴッ! 最新技術スゴッ! 表情変わんないのに声色と仕草で感情がわかる!
 私は人差し指と親指で熊の手を摘み、握手した。プニプニの肉球がキュート♡
『ぼくに名前、付ける?』
「つっ、付ける! えっと……えーっと」
 どうせなら可愛い名前にしたいと悩んでいる間、熊は楽しそうに踊りながら待ってくれた。

 キャラメル―略称はメル―はシステムについて色々教えてくれた。
『ぼくはヒカリさんと一緒に歩いて成長していくの。
 ヒカリさんが歩くと、歩数と距離、ふたつのゲージが増えていくよ!
 総歩数が一定値溜まるとぼくのレベルがアップ。
 溜まった距離ポイントを使うと、ショップでアイテムが買えるんだ。説明書のコードからアクセスしてね!
 ぼくのご飯は太陽や照明の光。電池はいらないよ。ヒカリさんが眠る時はぼくも一緒に眠るから、『おやすみ』って声をかけてね! 『おはよう』の挨拶で起きるよ!
 ぼくが覚えていられる歩数と距離は過去一週間分。それ以上が知りたい場合はアプリと連携してって博士が言ってた。
 たまに二人でお喋りしたり、撫でたり遊んだりしてくれると嬉しいなぁ』
 ちょっと、最後に照れちゃうの可愛すぎるんだが?
『あっ。ぼくだけが歩いてる時の数値は加算されないし、並んで歩けない時やぼくが一緒にいられない場所では、アプリの中のぼくが計数するからスマホを持っててね』
「うん、わかった」
 早速頭を撫でたら、メルは『えへへ』と笑いながら照れた。
 うおー、可愛い! 全種類揃えたくなる! 夢の異種多頭飼いが実現してしまう!
「じゃあ、アプリの登録してみるね」
『うん!』
 メルはまた踊りながら待機してる。
 説明書に載ってるコードをスマホで読み取ってアプリをダウンロードし、新規会員登録を終える。マイページでユーザー名とメルの名前と種族も登録。
 一緒に部屋の中を歩いてみたら、ほぼリアルタイムでアプリに数値が表示された。すごー。
 でも、外でメルを歩かせるのはちょっと危険だ。さして大きくないし、蹴られたり轢かれたりしそう。
「一緒に外行く時は、ポケットか鞄の中が安全かなー」
『そうだね。ぼくたち小さいから、人間の人に気づいて貰えないかも』
「だよね」
 なんて言いながらグッズを閲覧していたら、専用の携帯カバーが売られていた。ポイントだけじゃなくてリアルマネーでも買えるらしい。商売上手!
 アプリではひとつのアカウントで最大6体まで万歩計を登録できるようになっている。
「もしお友達……同機種の万歩計が増えるとどうなるの?」
『経験値はそれぞれが同じだけ貰えるけど、アイテム交換用のポイントはひとり分しか貰えないんだ』
 RPGの経験値と貨幣みたいな感じか。
『ぼくらがなんにんかで一緒にいる時は、ぼくらだけで遊ぶよ。一緒に歌ったり踊ったりゲームしたり』
「なにそれ見たい」
『どんな子たちがいるかはアプリで見れるから、良かったら見てみてね』
 やばい。明日早速ドラストで追加購入してしまいそう。お財布と相談しよう……。
「あ、そろそろ寝なきゃ」
『じゃあぼくも一緒に眠る』
「うん。今日のお布団はタオルで我慢してね」
『なくても大丈夫だよ?』
「お布団で寝てるとこが見たいんだよ」
 そう言ったら、メルは嬉しそうにえへへと笑った。
 ベッドサイドのテーブルにタオルで寝床を作ったら、メルはそこへ横になった。
 おやすみと言い合って、一緒に眠る。
 これから一緒に、たくさん歩こうね!
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