日々の欠片

小海音かなた

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12/7『不思議なオーナメント』

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 約一年ぶりに開ける箱。
 実家から持ってきたクリスマスツリーは、いまでも私のお気に入りだ。
 うちのオーナメントはちょっと変わっている。12月に箱を開けると目を覚まし、クリスマスが終わると同時に眠りに就く。そんな特殊能力を持っている。
 ツリーを飾り付ける途中、手にした天使が目を開けた。
『……あら、もうそんな時期?』
「あ、お久しぶりです。そうです。12月に入りました」
『そう。じゃあ……またしばらくお仕事しようかしら』
 ちょっとアンニュイなその声を聞くのも約一年ぶりだ。
「お願いします」
 天使がふわりと飛んで、空中を回る。
『配置変えた?』
「そうですね。今年に入ってから模様替えしました。なんか邪魔だったりします?」
『いいえ? 風水を取り入れたのねと思って』
「はい。去年教えてもらったので」
『飛びやすい空気になったわ。体調も回復したの?』
「えぇ」
 去年の今頃、天使は『部屋の空気が重くて飛びづらい』と言っていた。気の滞りがあったのだとか。寒い中換気したり部屋の掃除をしたりしていたら少しマシになったそう。それから定期的に換気と掃除をして、ようやっと模様替えまでできたのが功を奏したらしい。
 謎の体調不良もすっかり良くなり、休日、寝たきりで過ごさなくても良くなった。
『これなら幸運も引き寄せやすいわね』
 顔には出ないけれど嬉しそうな声で天使は言って、部屋を回ってる。
『おーい、こっちもはやく~』
 オーナメントを入れた箱から声が聞こえた。
「ジンジャーブレッドマンさん、お久しぶりです」
 挨拶をしながらクッキーを模したオーナメントを手に取る。
『おう』
「今年も外の景色が見えるあたりでいいですか?」
『うん、ありがとな!』
 窓辺に置いたツリーのてっぺん近くにブレッドマンを飾る。
『おぉ、見える見える』
「テレビも見える位置にしますね」
『助かるわ。去年優勝してたあの芸人たち、いまも活躍してるかい?』
「えぇ。録画してた番組、あとで色々再生しますね」
『悪いね』
 ブレッドマンは窓から見える高速道路を走る車を見るのが好きらしい。
 雪だるまやノームの希望も聞きつつ飾っていくけど、その中にトナカイとサンタクロースはいない。なぜなら……。

 12月24日・深夜。
 コツコツと窓を叩く音が聞こえた。ベッドから起き、上着を羽織って窓を開ける。
『ほぅほぅ、一年ぶりだね』
「お久しぶりです」
『皆も元気にしていたかい?』
『元気だよ』とか『それなりに』とか思い思いの返答をするオーナメントたちを、サンタは嬉しそうに見つめた。
『今年のプレゼントも、去年と同じでいいのかな?』
「はい、お願いします」
『よぅし、いくぞぉ』
 サンタが袋の中から星屑を撒いた。それはツリーを飾るオーナメントと、ソリを引くトナカイたち、そしてサンタ自身にも降り注ぐ。
『これでまた、力が蓄えられたね』
「ありがとうございます」
 オーナメントたちも口々に礼を伝える。
『こちらこそ。キミが願ってくれたおかげで、私たちは自由に動けるようになったんだ。私もようやく、サンタとして活動することができた』
「そういってもらえると、私も嬉しいです」
『うん。じゃあ、私たちは本拠地に戻るとするよ。皆も風邪などひかぬよう、元気でな』
 はーい。
 皆で返事をして、トナカイたちとサンタを見送った。彼らも元は、オーナメントだった。
 私が子供のころ流れ星に願ったことが叶い、生き物の形をしたオーナメントたちが自我を持ち始めたのだ。その力を、サンタは流れ星から授かっていた。

 サンタは私に承認を得て、どこかにあるらしい【サンタとトナカイが集まる場所】へ、トナカイたちを連れて通うようになった。そこで修行を積んで人々に夢を与える仕事に就き、世界中の人に夢や希望を振り撒いている。
 いまは一年を大半をその場所で仲間と一緒に過ごし、クリスマスが終わる前に帰ってきて、皆にまた魔法をかけてくれるようになった。
 小さな身体なのに、与えるものは大きい。

 翌日、クリスマスソングのプレイリストを朝から再生する。食事は私しかできないけど、皆でクリスマスをお祝いするのは楽しい。
 毎年恒例のトーナメント番組も皆と楽しんだ。
「明日の昼間、箱に入れさせてもらいますね」
『はーい』
「今日はカーテン開けておくので、存分にどうぞ」
『ありがとう!』
「こちらこそ、今年もありがとうございました。来年までおやすみなさい」
『お休み!』
『また来年』
『換気と掃除、頑張ってね』
「はーい」
 照明を消して、ベッドに横たわる。
 0時になると同時に、オーナメントたちは眠った。一抹の寂しさと共に、私も眠る。
 明日の昼間ツリーを片づけて、そのまま大掃除するつもりだ。
 また絶対、来年も会えると信じて……。
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