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11/27『組み上がるカンケイ』
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ギュルルン、ドルルン。
青い空に機械の音が溶けていく。
ギュルルン、ドルルン。
庭に敷いたレジャーシートの上で家具が組み上がっていく。
組み立てる私を縁側から見守るピンク髪の男子に笑いかけた。
「電動ドライバー、マジ便利だね」
「でしょ? だから言ったじゃん、早く買えって」
「いや、使う機会そんななくない?」
「あるっしょ。これからリフォームしてくんでしょ?」
「リフォームってほど大げさじゃないもん。ちょっと大掛かりな模様替えしようかなって」
「でもオレが都合よく毎回ソレ貸せるとも限らねぇし」
「そうだけどー」
それにかこつけて会いたいっていう乙女心を分かってよ、って冗談めかして言えたら良かったけど、そんなの言ったらめんどくせって言われそうで言えない。
ピンク色の髪に派手な服。その見た目でチャラいって言われがちだけど、ホントは真面目なの知ってるから……冗談めかして告ったりしたら、あっさりスルーされそう。
大型家具屋に行く時も車出してくれたし、自前の工具箱持ってきて貸してくれたし、怪我したら危ないからっていまも見守ってくれてるけど、その優しさが私だけに向けられたものじゃないのも知ってるから……。
「いたっ」
考え事してたら、家具のパーツに爪を引っ掛けてしまった。
「だいじょぶ?」
縁側からこちらにやってくる彼。
「爪割れちゃった」
「自爪?」
「スカルプ。修復できるかな」
「それ以上割れたら危ねぇから、先そっちケアしてきな。こっちやっとくから」
「ごめん。ありがとう」
「いいってことよ」
優しいなぁ。そういうとこだよ。そういうとこがホントにさー……。
「すき」
想いが積もって溢れ出して、止める間もなく口から零れた。
声になってしまったことに気づいて、聞こえていないことを祈ったけど彼は目を丸くしてこちらを見ていた。
「……オレ?」
気持ちを咎められた気がした。
「……そうだよ。ほかにいないでしょ……」
「マジか……」
あ……まちがえた。
なんでかそう思った。この関係が終わっちゃうって。だったらちゃんと伝えて、ちゃんと……ケリをつけないと。
「……好きだよ。工具だって、あんたに借りたらあんたに会えるから……買わなかったんだもん」
鼓動が強くなりすぎて、指の先まで響いてる。これでもう会えなくなっちゃうのかなって考えてたら、彼が手の甲で口元を隠した。
あれ? なんか思ってた反応と違う。
彼は電動ドリルを置いて、手についた汚れを服で払って、照れながらこちらを見た。
「そういうのは、こっちから言わせてよ」
ピンクの髪が太陽の光に透けてキラキラしてる。頬の赤みは、髪の色が反射してるのか、それとも……。
「好きです。オレと、お付き合いしてください」
まちがえてたのまちがえてた。振られるかと思ったの勘違いだった。
「ぜひ、お願いします」
差し出された手に手を乗せたら、彼が嬉しそうに私を抱きしめてくれた。
「あー、ビビった。危うく間違えるとこだった」
「まちがえた、って私も思った」
「振られると思ったっしょ」
「うん。私だけに優しくしてくれてるんじゃないのわかってたし」
「それな。良く言われるんだわ。八方美人だから、いざってとき困んよって」
「勘違いされるからって?」
「そう」
「まさにしてたしね」
「あぶねーあぶねー。今後気を付けるわ」
「うん。私けっこうヤキモチ焼きだからね」
「知ってる」
身体を離して二人で笑い合う。
「となると、手伝うのも遠慮しなくていいってわけだ」
「遠慮してたんだ」
「あんまズカズカこられてもヤじゃない? 実家だし、一人暮らしなんだしさ」
「好きじゃない人を家にあげたりしないよ」
「そっか」
「だからもっと頻繁に来てくれていいよ」
「うん、怪我されたらコトだし、来るわ。なんならオレも住みやすい家にリフォームしちゃったりなんかして」
「ホント⁈」
きっと冗談で言ったであろう彼の言葉に、私の瞳が輝いた。
「……そんな顔したら、転がり込んで一緒に住んじゃうよ?」
「いいよ。元々一人には広すぎるんだから」
「そっか」
「うん」
そう言って、二人で空を見上げた。
両親は今頃、空の上で仲良くやっているだろうか……っていやいや。
「海外に移住したってだけで生きてるけどね⁈」
「だってまだ飛行中でしょ?」
「今日の夕方着って言ってたかな」
「着陸したら報告しなきゃ。娘さんをくださいって」
「文字通り飛んで帰ってきちゃうよ」
「じゃあもちっと先かな。とりあえず日が暮れないうちにあれ組み上げようぜ」
「う、うん」
そういうことあっさり言うから、勘違いされちゃうんだよ。
家具を組み立てる彼を横で見守る。
寂しいかもと思ってた初めての一人暮らしは、案外楽しくなりそうで安心した。
青い空に機械の音が溶けていく。
ギュルルン、ドルルン。
庭に敷いたレジャーシートの上で家具が組み上がっていく。
組み立てる私を縁側から見守るピンク髪の男子に笑いかけた。
「電動ドライバー、マジ便利だね」
「でしょ? だから言ったじゃん、早く買えって」
「いや、使う機会そんななくない?」
「あるっしょ。これからリフォームしてくんでしょ?」
「リフォームってほど大げさじゃないもん。ちょっと大掛かりな模様替えしようかなって」
「でもオレが都合よく毎回ソレ貸せるとも限らねぇし」
「そうだけどー」
それにかこつけて会いたいっていう乙女心を分かってよ、って冗談めかして言えたら良かったけど、そんなの言ったらめんどくせって言われそうで言えない。
ピンク色の髪に派手な服。その見た目でチャラいって言われがちだけど、ホントは真面目なの知ってるから……冗談めかして告ったりしたら、あっさりスルーされそう。
大型家具屋に行く時も車出してくれたし、自前の工具箱持ってきて貸してくれたし、怪我したら危ないからっていまも見守ってくれてるけど、その優しさが私だけに向けられたものじゃないのも知ってるから……。
「いたっ」
考え事してたら、家具のパーツに爪を引っ掛けてしまった。
「だいじょぶ?」
縁側からこちらにやってくる彼。
「爪割れちゃった」
「自爪?」
「スカルプ。修復できるかな」
「それ以上割れたら危ねぇから、先そっちケアしてきな。こっちやっとくから」
「ごめん。ありがとう」
「いいってことよ」
優しいなぁ。そういうとこだよ。そういうとこがホントにさー……。
「すき」
想いが積もって溢れ出して、止める間もなく口から零れた。
声になってしまったことに気づいて、聞こえていないことを祈ったけど彼は目を丸くしてこちらを見ていた。
「……オレ?」
気持ちを咎められた気がした。
「……そうだよ。ほかにいないでしょ……」
「マジか……」
あ……まちがえた。
なんでかそう思った。この関係が終わっちゃうって。だったらちゃんと伝えて、ちゃんと……ケリをつけないと。
「……好きだよ。工具だって、あんたに借りたらあんたに会えるから……買わなかったんだもん」
鼓動が強くなりすぎて、指の先まで響いてる。これでもう会えなくなっちゃうのかなって考えてたら、彼が手の甲で口元を隠した。
あれ? なんか思ってた反応と違う。
彼は電動ドリルを置いて、手についた汚れを服で払って、照れながらこちらを見た。
「そういうのは、こっちから言わせてよ」
ピンクの髪が太陽の光に透けてキラキラしてる。頬の赤みは、髪の色が反射してるのか、それとも……。
「好きです。オレと、お付き合いしてください」
まちがえてたのまちがえてた。振られるかと思ったの勘違いだった。
「ぜひ、お願いします」
差し出された手に手を乗せたら、彼が嬉しそうに私を抱きしめてくれた。
「あー、ビビった。危うく間違えるとこだった」
「まちがえた、って私も思った」
「振られると思ったっしょ」
「うん。私だけに優しくしてくれてるんじゃないのわかってたし」
「それな。良く言われるんだわ。八方美人だから、いざってとき困んよって」
「勘違いされるからって?」
「そう」
「まさにしてたしね」
「あぶねーあぶねー。今後気を付けるわ」
「うん。私けっこうヤキモチ焼きだからね」
「知ってる」
身体を離して二人で笑い合う。
「となると、手伝うのも遠慮しなくていいってわけだ」
「遠慮してたんだ」
「あんまズカズカこられてもヤじゃない? 実家だし、一人暮らしなんだしさ」
「好きじゃない人を家にあげたりしないよ」
「そっか」
「だからもっと頻繁に来てくれていいよ」
「うん、怪我されたらコトだし、来るわ。なんならオレも住みやすい家にリフォームしちゃったりなんかして」
「ホント⁈」
きっと冗談で言ったであろう彼の言葉に、私の瞳が輝いた。
「……そんな顔したら、転がり込んで一緒に住んじゃうよ?」
「いいよ。元々一人には広すぎるんだから」
「そっか」
「うん」
そう言って、二人で空を見上げた。
両親は今頃、空の上で仲良くやっているだろうか……っていやいや。
「海外に移住したってだけで生きてるけどね⁈」
「だってまだ飛行中でしょ?」
「今日の夕方着って言ってたかな」
「着陸したら報告しなきゃ。娘さんをくださいって」
「文字通り飛んで帰ってきちゃうよ」
「じゃあもちっと先かな。とりあえず日が暮れないうちにあれ組み上げようぜ」
「う、うん」
そういうことあっさり言うから、勘違いされちゃうんだよ。
家具を組み立てる彼を横で見守る。
寂しいかもと思ってた初めての一人暮らしは、案外楽しくなりそうで安心した。
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