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10/26『クイズ! なんという英単語でしょうか?』
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お昼の長い休み時間に、アルファベットチョコレートに刻まれた文字で英単語を作り、ごちゃ混ぜにして渡して、なんて単語を作ったか当てるというゲームを友達と二人でやっていたら、片想い中の永春(ナガハル)くんが近づいてきた。
「お、チョコだ。いーなー」
「んー、いまねぇ、これの中の文字で英単語作って混ぜて渡して、作った英単語を当てられたら全部もらえるってのやってんの」
「へぇ、俺も食べたいからなんか問題出してよ」
「いーよー。じゃあお題は【永春に向けたメッセージ】ね」
私の気持ちを知ってるミライちゃんが私に目配せをした。
いやいやいや無理無理無理!
目で訴えるけどミライちゃんは知らんぷりして、袋の中からチョコを見繕って永春くんに渡す。
「みっつ⁈」
「E、M、Nね、なんでしょー」
「MEN」
「せいかーい」
ミライちゃんが平たい拍手を送る。
「なんだよ“MEN”って」
「男らしいね! って」
「ぜってー違う単語あるわ」
「じゃあ次、詩香(シイカ)の番~」
「えっ、えっと、えっと……」
誰にも見られないように隠しながら選別し、渡した8個のチョコレートに刻まれた文字は“Y・E・O・I・V・U・O・L”。
渡したあとにだいぶ後悔したけどもう遅い。永春くんは手の中でチョコをコロコロ転がして文字を確認してる。
「んん~? 多いとわかりづらいな」
私たちが使ってるチョコで散らかった机じゃなく、近くの机に並べ始めた。
気づくかな。いや、気づいてほしくないな。いまからやっぱナシしちゃダメかな。
猛烈に激しく動く心臓。気絶しそうなくらいの緊張。
チョコを並べ終えた永春くんは一瞬止まって、すぐにチョコをかき集め、制服のポケットに突っ込んだ。
「ちょいちょい、正解かわかってないのに」
「わかったけど、わかったから」
次に続く言葉を飲み込んだらしい永春くん。伝わったらしいとわかった私。
どちらもが同時に黙り込んだら、察しのいいミライちゃんがふふんと笑った。
「ほい」
散らばったチョコを集めて袋に入れて、ミライちゃんが永春くんに渡す。
「……じゃあ、俺から、近松に問題」
私たちに背を向けた永春くんが、手近な机にチョコを出し、文字を確認しながら選別してる。
「はい」
両掌に持たされたチョコは5個。“O・E・O・M・T”。
こ、これって、これって……!
慌てて永春くんを見たら、昼休みの終わりを報せるチャイムが鳴った。
「あとで、時間ちょうだい」
「……うん」
永春くんはチョコの袋をミライちゃんに返して、自分の席に戻った。私たちも同じようにして、午後の授業を受けるけど、正直それどころじゃない。
どう組み替えても同じ文面になるあの5個のチョコのことが、頭の中をグルグル駆けていた。
放課後になって、私たちは解放された屋上の片隅で風の音に紛れながら答え合わせをしていた。
お互いの正解を改めて口にして、改めて永春くんから告白してもらった。
私たちは恋人同士になったのだ!
嬉しくて、いつもの景色が輝いて見える。勇気出して良かった。ミライちゃんにもお礼いわなきゃ。
もらったチョコ、もったいなくて食べられないって言ったら、何個でもあげるから溶けないうちに食べてよ、だって。
その言葉が甘すぎて、私がとろけそうになったよ。
「お、チョコだ。いーなー」
「んー、いまねぇ、これの中の文字で英単語作って混ぜて渡して、作った英単語を当てられたら全部もらえるってのやってんの」
「へぇ、俺も食べたいからなんか問題出してよ」
「いーよー。じゃあお題は【永春に向けたメッセージ】ね」
私の気持ちを知ってるミライちゃんが私に目配せをした。
いやいやいや無理無理無理!
目で訴えるけどミライちゃんは知らんぷりして、袋の中からチョコを見繕って永春くんに渡す。
「みっつ⁈」
「E、M、Nね、なんでしょー」
「MEN」
「せいかーい」
ミライちゃんが平たい拍手を送る。
「なんだよ“MEN”って」
「男らしいね! って」
「ぜってー違う単語あるわ」
「じゃあ次、詩香(シイカ)の番~」
「えっ、えっと、えっと……」
誰にも見られないように隠しながら選別し、渡した8個のチョコレートに刻まれた文字は“Y・E・O・I・V・U・O・L”。
渡したあとにだいぶ後悔したけどもう遅い。永春くんは手の中でチョコをコロコロ転がして文字を確認してる。
「んん~? 多いとわかりづらいな」
私たちが使ってるチョコで散らかった机じゃなく、近くの机に並べ始めた。
気づくかな。いや、気づいてほしくないな。いまからやっぱナシしちゃダメかな。
猛烈に激しく動く心臓。気絶しそうなくらいの緊張。
チョコを並べ終えた永春くんは一瞬止まって、すぐにチョコをかき集め、制服のポケットに突っ込んだ。
「ちょいちょい、正解かわかってないのに」
「わかったけど、わかったから」
次に続く言葉を飲み込んだらしい永春くん。伝わったらしいとわかった私。
どちらもが同時に黙り込んだら、察しのいいミライちゃんがふふんと笑った。
「ほい」
散らばったチョコを集めて袋に入れて、ミライちゃんが永春くんに渡す。
「……じゃあ、俺から、近松に問題」
私たちに背を向けた永春くんが、手近な机にチョコを出し、文字を確認しながら選別してる。
「はい」
両掌に持たされたチョコは5個。“O・E・O・M・T”。
こ、これって、これって……!
慌てて永春くんを見たら、昼休みの終わりを報せるチャイムが鳴った。
「あとで、時間ちょうだい」
「……うん」
永春くんはチョコの袋をミライちゃんに返して、自分の席に戻った。私たちも同じようにして、午後の授業を受けるけど、正直それどころじゃない。
どう組み替えても同じ文面になるあの5個のチョコのことが、頭の中をグルグル駆けていた。
放課後になって、私たちは解放された屋上の片隅で風の音に紛れながら答え合わせをしていた。
お互いの正解を改めて口にして、改めて永春くんから告白してもらった。
私たちは恋人同士になったのだ!
嬉しくて、いつもの景色が輝いて見える。勇気出して良かった。ミライちゃんにもお礼いわなきゃ。
もらったチョコ、もったいなくて食べられないって言ったら、何個でもあげるから溶けないうちに食べてよ、だって。
その言葉が甘すぎて、私がとろけそうになったよ。
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