日々の欠片

小海音かなた

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9/7『絶滅危惧種』

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「増えたら害獣とか害虫とか言って駆除するくせに、減りすぎたら今度は種の保存とか言って守ろうとするのなんなん? そういうのする生き物って、ただ驕り高ぶってるだけじゃんね。仲間が排除されるのを見て辛い思いしながらなんとか生き残ったら今度は捕らえられて……捕獲されるほうの身にもなれっての。な」
「ほんそれー。いくら十分な生活環境作るっつわれても、監視されるわ強要されるわでマジ迷惑~」
「そんなのを人間(俺ら)もやってたとか、ゾッとする」
「えー、それって一部の人じゃん? ウチ比較的生き物には優しかったし」
「俺もだよ」
『だからこそ、選ばれたのではないですか』
「ありがた迷惑」
「同感」
「逃げずに潔く消えるべきだったな~」
「ねー」
『まぁそうおっしゃらずに』
 窓の外に見える青い星。それはかつて俺らが住んでいた星。

 ある日どこかから侵略してきた“宇宙人”に、知的生命体が【駆除】された。文明を持つ生き物が生まれる前の状態に戻すのが“宇宙人”の目的だった。
 奴らの科学力はすさまじく発達していて、ビルはたった一筋の光線を当てられただけで消え去った。
 宇宙船から降り注いだ光は、知的生命体を一瞬にして土に返した。
 各国の首脳陣はさすがに危機感を抱き、協力して説得・和解を試みたが無駄だった。奴らと俺らの考え方は根本的に違っていたのだ。

 世界の人口が激減したことにより、青い星は変容していった。

 ほどほどに保たれていた環境は急激に悪化。
 俺ら“知的生命体”が青い星の“ウイルス”となることで、青い星は自己治癒力を高めていたのだ。
 このままでは星が死んでしまう。そう考えた奴らは、かろうじて生き残っていた知的生命体を、かろうじて残っていた建物に収容した。そして謝罪した。
 絶滅させるつもりはなかった。これからは種の保存に尽力する。だから繁殖に協力してくれ、と。
 アホか。
 もちろん俺らは猛反発した。今更なに言ってんだ。大事にしていたモノを全部奪われ、壊されたんだぞ。そのうえでそんな強要、受け入れられるわけがないだろ。
 土下座程度で許せるはずもない。もちろん奴らに死んでほしいとも思わない。そんなことしても、亡くなった生き物たちが蘇るわけじゃない。
 奴らに協力なんてできない。たとえ地球が滅びても、だ。

「絶対に協力なんかしたくないんで諦めてください。あんたたちの浅はかな【慈愛】が招いた結果だと、代々伝承していけばいい。大量虐殺したあげく、ひとつの星を滅ぼしましたって」
『そんなぁ』
「あんたと兵士は別の仕事してるってわかるけどさ、許せないわけ。誰があんたに種の保存しろって命令してるかわかんないけど、そいつにもそうやって言っておいて」
『あぁ、だから侵略なんて反対だったんだ……』
「あんたらがあの星で繁殖したらいいじゃん。あんだけ科学力あれば簡単でしょ」
『それでは元の星には戻りません。違う文明が入ることで、より悪い環境になってしまうかもしれない』
「「……」」
『わかってますよぅ、私が言えるような立場じゃないっていうのは』
「……で、俺ら、いつまでこのままなの」
『故郷の星にお戻りいただこうかと思っていたのですが……』
「住めないでしょ、あんな荒廃しちゃってたら」
『そうなんですよね……』
 遠くに見える星は青く輝き、遠目には宝石のように綺麗だ。しかし地上に降りれば瓦礫の山。とてもじゃないけど暮らすことなんてできない。
『いつまでもこの中で過ごすわけにはいかないので、いつかはお戻りいただかないと……』
「「……」」
 さんにんは同時にため息をついて、うなだれた。
 故郷の星はただ、青く美しく輝いていた。
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