225 / 366
8/13『不便を便利に』
しおりを挟む
昔は、左利きを右利きに矯正させられる人が多かったらしい。
無理に右利きにしようとすると、いろいろ障害があるっぽいってわかってやめるようになったんだとか。
でもやっぱり日本ではマイノリティな存在で、左利きだと不便なものやことがたくさんある。
きっと全部右利きの人が作ってるんだろうな、って思いながら、今日も身体をねじらせて改札を通る。さすがに左右に設置できないんだろうし、多数派のほうを取るのもわかる。でもやっぱり、不便なものは不便だし、不満は溜まるのだ。
左利きは天才肌な人が多いとか、そんなのは幻想だ。
利き手が右だろうと左だろうと、勉強しなければ頭が良くなるはずもない。わかってるよ、わかってるけど“左利き神話”にあやかりたいじゃないか。
などとブツブツ考えながら歩いていたら、通り沿いに【左利き専門店】という看板が見えた。
入ってみたら、そこには普段微妙に不便だと感じる道具がいくつも陳列されていた。
天井から吊るされたコーナー案内板は【キッチン】【文房具】【暮らし】のみっつ。
暮らしってなんだ? と移動して見たら、メジャーや扇子、財布などのいわゆる【日用品】だった。
ちょっと我慢すればいいだけなんだけど、それでもやっぱり不便だよな、と感じる道具がたくさん並んでる。その全部が【左利きの人が使いやすいもの】。なんだここ、天国か。一人暮らし始める時に出会いたかった。
使うのにちょっと不便だけど100円 (税別)だしまぁいいか、と妥協して買ったキッチンツールは、しょっちゅう使ってるとやっぱり不満がたまっていく。
しかし全部この店のものに買い替えるには、ちょっと予算オーバーだなぁ……。
とりあえず、一番わずらわしく思っていたハサミを買うことにした。キッチン用と普段使い用の二本。
家に帰っていそいそ開けて、試し切りしてみる。
なんということでしょう! めっちゃめちゃ切りやすい。いままで使ってた右利き用のとは力の入れ方とかが違うから慣れるまでにちょっとかかりそうだけど、それでもいままで使ってた右利き用のとは全然違う。うおー、感動。
雰囲気も接客も良かったし、またあのお店行こう。
そうして、ちょこちょこ買い揃えていった【左利き用道具】は、日々のちょっとした不便や不満を解消してくれた。
結局、改札機や自販機は右利きの人が使いやすいままだけど、日常のささやかなQOLが向上しただけでも儲けものだ。
家にあって不便と感じたものはメモを取り、使用頻度の高いものから買い替えることにした。使わなくなった右利き用の道具は右利きしかいない実家に送ろう。
とメモするために、使わずにしまってた貰い物のメモ帳とペンを取る。
表紙を開いて思った。
まずはメモ帳を買おう……。
無理に右利きにしようとすると、いろいろ障害があるっぽいってわかってやめるようになったんだとか。
でもやっぱり日本ではマイノリティな存在で、左利きだと不便なものやことがたくさんある。
きっと全部右利きの人が作ってるんだろうな、って思いながら、今日も身体をねじらせて改札を通る。さすがに左右に設置できないんだろうし、多数派のほうを取るのもわかる。でもやっぱり、不便なものは不便だし、不満は溜まるのだ。
左利きは天才肌な人が多いとか、そんなのは幻想だ。
利き手が右だろうと左だろうと、勉強しなければ頭が良くなるはずもない。わかってるよ、わかってるけど“左利き神話”にあやかりたいじゃないか。
などとブツブツ考えながら歩いていたら、通り沿いに【左利き専門店】という看板が見えた。
入ってみたら、そこには普段微妙に不便だと感じる道具がいくつも陳列されていた。
天井から吊るされたコーナー案内板は【キッチン】【文房具】【暮らし】のみっつ。
暮らしってなんだ? と移動して見たら、メジャーや扇子、財布などのいわゆる【日用品】だった。
ちょっと我慢すればいいだけなんだけど、それでもやっぱり不便だよな、と感じる道具がたくさん並んでる。その全部が【左利きの人が使いやすいもの】。なんだここ、天国か。一人暮らし始める時に出会いたかった。
使うのにちょっと不便だけど100円 (税別)だしまぁいいか、と妥協して買ったキッチンツールは、しょっちゅう使ってるとやっぱり不満がたまっていく。
しかし全部この店のものに買い替えるには、ちょっと予算オーバーだなぁ……。
とりあえず、一番わずらわしく思っていたハサミを買うことにした。キッチン用と普段使い用の二本。
家に帰っていそいそ開けて、試し切りしてみる。
なんということでしょう! めっちゃめちゃ切りやすい。いままで使ってた右利き用のとは力の入れ方とかが違うから慣れるまでにちょっとかかりそうだけど、それでもいままで使ってた右利き用のとは全然違う。うおー、感動。
雰囲気も接客も良かったし、またあのお店行こう。
そうして、ちょこちょこ買い揃えていった【左利き用道具】は、日々のちょっとした不便や不満を解消してくれた。
結局、改札機や自販機は右利きの人が使いやすいままだけど、日常のささやかなQOLが向上しただけでも儲けものだ。
家にあって不便と感じたものはメモを取り、使用頻度の高いものから買い替えることにした。使わなくなった右利き用の道具は右利きしかいない実家に送ろう。
とメモするために、使わずにしまってた貰い物のメモ帳とペンを取る。
表紙を開いて思った。
まずはメモ帳を買おう……。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
インディアン・サマー -autumn-
月波結
ライト文芸
高校2年のアキが好きなのは、生まれてからずっと一つ歳上の従姉妹・ハルだけだ。ハルを追いかけるアキ、アキを呼びつけるハル。追う、追いかける。
ハルとアキの母親は一卵性双生児で、似ているようで似ていないところもある。
「いとこ同士は結婚できるけど、ハルとアキの結婚は血が濃すぎるかもね」
アキの心は毎日の中でハルを想って揺れる。
奔放なハルはアキを翻弄し続ける。
いつもアキを突然呼びつけるハルには、実は他人には言えない苦しい秘密があり⋯⋯。
まだ本物の恋を知らないハルとアキの、人を好きになる、過程を描きました。滑らかな切なさをお求めの方にお勧めします。
婚活のサラリーマン
NAOTA
ライト文芸
気がつけば36才になっていた私は、婚活を始めた。
アラフォーサラリーマンが、なかなかうまくいかない婚活に奔走する、少しだけハードボイルドなストーリー。
(この小説はカクヨム様、ノベルデイズ様にも投稿させていただいています。)
彼にはみえない
橘 弥久莉
ライト文芸
藤守つばさには、見えてしまうものがある。それは、普通の人はまず見ることのない、いわゆる「幽霊」という類のもの……。隣に住む幼馴染の黒沢斗哉と共に、つばさはさまざまな心霊現象に巻き込まれていく。ある日、学園祭の舞台練習を終えたつばさと斗哉は、忘れ物を取りに、“幽霊が出る”と噂される講堂の地下道へ行くことに。第二実験室に忘れたレポートは見つかるものの、つばさは噂の幽霊に遭遇してしまう。ずっと幼馴染だと思っていた斗哉との関係も、学園祭を機に微妙に変わり初めて……。エピソードⅢからは、霊能力を持つ転校生の神崎嵐も現れて、恋の方は三角関係に突入!?幼馴染ラブ×心霊ホラー×ちょっと笑える、かもしれない長編作品。
奇快雑集
衣谷 孝三
現代文学
これは、筆者が執筆練習のために思い付いた物語をポンポンと書き連ねた、節操のないショートショート作品集である。
恐らく黒歴史となることは間違い無いだろうが、書きたいのだから致し方ない。
無駄にしていい時間のある者は、是非ともこのアイデアの雑木林に足を踏み入れていただきたい。
心を焦がし愛し愛され
しらかわからし
ライト文芸
合コンで出会った二人。
歩んできた人生は全く違っていた。
共通の接点の無さから互いに興味を持ち始めた。
瑛太は杏奈の強さと時折見せる優しさの紙一重な部分に興味を持ち魅力を感じた。
杏奈は瑛太の学童の指導員という仕事で、他人の子供に対し、愛情を込めて真摯に向かっている姿に興味を持ち好きになっていった。
ヘタレな男を人生経験豊富な女性が司令塔となって自他共に幸せに導く物語です。
この物語は以前に公開させて頂きましたが、題名は一部変更し、内容は一部改稿しましたので、再度公開いたします。
100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。
笑顔になれる沖縄料理が食べたくて
なかじまあゆこ
ライト文芸
幼い日お母さんが帰って来なくて公園のベンチに座り泣いていた愛可(あいか)に見知らぬおばさんが手を差し伸べてくれた。その時に食べさせてもらった沖縄ちゃんぽんが忘れられない。
いつもご飯を食べると幸せな気持ちになる愛可。今日も大好きな食堂でご飯を食べていると眉目秀麗な男性に「君をスカウトします」と声をかけられたのだけど。
沖縄料理と元気になれる物語。
どうぞよろしくお願いします(^-^)/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる