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6/13『ソラを翔ける』
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行きつけの神社の境内を歩いていたら、顔の横をなにかが横切った。
気配を追って視線を流したら、その先に鳥の姿が見えた。
大きさはカラスほどだけど全身が黒いわけじゃない。頭から背中にかけて黒っぽく、胸からお腹のあたりに縞模様が見える。
クチバシの色まではちょっと見えないけど……鷹とかそういう、猛禽類っぽいフォルム。
実体があるわけじゃなくて、魂というか、“霊感がないと見えない存在”だ。
千木のてっぺんにとまるその鳥を凝視するけど、種類にあまり明るくないからなんの鳥かは特定できない。
カメラに映ればなんらかのアプリで調べることもできるだろうけど、実体がないから無理だ。
思いついた【カラスくらいの大きさ 猛禽類】というワードで検索したら、出て来たのは【ハヤブサ】だった。
写真と実物 (実体はないけど)を見比べて、おそらくそうであろうと断定する。
ハヤブサは千木の上で周囲を眺め、毛づくろいをしてから空へ戻った。
そのまま上へ、上へ。
遥か上空、見えなくなりそうな高さまで飛んで、姿を変えた。
鳥から、翼を持った四角い箱に。
いまも宇宙を飛び続ける後輩に寄りそい、並んで軌道を流れて行った。
一度、地球外生命体を見たことがある。
その存在も実体がなく、波長が合う人にしか見えていなかった。
大型ターミナル駅近くにある、ガードレールに腰を掛け道行く人を眺めていたときに見かけたその存在。見えない人は気にせずすり抜け、見える人はぶつからないよう避けて歩いていた。
ヒトの姿をしていたけれど、本来は違う見た目なのだろうな、と思った。
肩に乗っている、犬のような猫のような、一瞬あとには鳥に見えるようなあやふやな存在が口を動かしてなにかを伝えていた。それを聞くヒト型の存在はうなずきながら街の景観を楽しんでいた。
その存在はどうやらこの星に観光目的で来ていたようだった。
肩に乗っているのはツアーコンダクターだったのだろう。
波長がたまたま合ったから見えて認識できただけで、他にも見えていない存在が何かしらの目的で来訪してるんだろうなぁと思った。
ハヤブサは宇宙を飛んでいる間、どんな存在とすれ違っただろう。
挨拶を交わし、旅の安全を祈りあっただろうか。
時には速さを競って競争したりしただろうか。
目的地である星に着陸したとき、誰か出迎えてくれただろうか。
まだ誰も出会ったことのない生命体や違う次元の存在が、宇宙のあちらこちらにきっといるはずだ。
なんだか楽しくなって空を見上げた。四角い箱たちはもう見えない。
ハヤブサは今日も、誰かと一緒に空を飛ぶ。
気配を追って視線を流したら、その先に鳥の姿が見えた。
大きさはカラスほどだけど全身が黒いわけじゃない。頭から背中にかけて黒っぽく、胸からお腹のあたりに縞模様が見える。
クチバシの色まではちょっと見えないけど……鷹とかそういう、猛禽類っぽいフォルム。
実体があるわけじゃなくて、魂というか、“霊感がないと見えない存在”だ。
千木のてっぺんにとまるその鳥を凝視するけど、種類にあまり明るくないからなんの鳥かは特定できない。
カメラに映ればなんらかのアプリで調べることもできるだろうけど、実体がないから無理だ。
思いついた【カラスくらいの大きさ 猛禽類】というワードで検索したら、出て来たのは【ハヤブサ】だった。
写真と実物 (実体はないけど)を見比べて、おそらくそうであろうと断定する。
ハヤブサは千木の上で周囲を眺め、毛づくろいをしてから空へ戻った。
そのまま上へ、上へ。
遥か上空、見えなくなりそうな高さまで飛んで、姿を変えた。
鳥から、翼を持った四角い箱に。
いまも宇宙を飛び続ける後輩に寄りそい、並んで軌道を流れて行った。
一度、地球外生命体を見たことがある。
その存在も実体がなく、波長が合う人にしか見えていなかった。
大型ターミナル駅近くにある、ガードレールに腰を掛け道行く人を眺めていたときに見かけたその存在。見えない人は気にせずすり抜け、見える人はぶつからないよう避けて歩いていた。
ヒトの姿をしていたけれど、本来は違う見た目なのだろうな、と思った。
肩に乗っている、犬のような猫のような、一瞬あとには鳥に見えるようなあやふやな存在が口を動かしてなにかを伝えていた。それを聞くヒト型の存在はうなずきながら街の景観を楽しんでいた。
その存在はどうやらこの星に観光目的で来ていたようだった。
肩に乗っているのはツアーコンダクターだったのだろう。
波長がたまたま合ったから見えて認識できただけで、他にも見えていない存在が何かしらの目的で来訪してるんだろうなぁと思った。
ハヤブサは宇宙を飛んでいる間、どんな存在とすれ違っただろう。
挨拶を交わし、旅の安全を祈りあっただろうか。
時には速さを競って競争したりしただろうか。
目的地である星に着陸したとき、誰か出迎えてくれただろうか。
まだ誰も出会ったことのない生命体や違う次元の存在が、宇宙のあちらこちらにきっといるはずだ。
なんだか楽しくなって空を見上げた。四角い箱たちはもう見えない。
ハヤブサは今日も、誰かと一緒に空を飛ぶ。
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