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6/3『ポンコツロボット』
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ボクはポンコツロボット。その名の通りポンコツだ。
商品名が【ポンコツロボット・ロボ夫くん】だから、むしろポンコツでないとダメなのだ。
ボクには弟と妹がたくさんいる。名前はみんな【ロボ夫くん】か【ロボ子さん】。
大量生産品かと思いきや、老朽化したり破損したもの、中古品や廃棄品を組み合わせて作られた一点もの。
資材不足が叫ばれる昨今に誕生した、リサイクルを目的としたおもちゃ。それがボクら。
ありあわせの部品で作られた唯一無二の存在として、国内外から高く評価されている。
最近では一体分の材料が集められた【オリジナルポンコツロボ作成キット】も販売されて、ハンドメイダーやモデラ―の間で話題になっているらしい。
自宅で出た廃材を組み合わせて作るオリジナルの【ポンコツロボ】も生まれて、ボクの知らないところでもたくさんの弟、妹が誰かの家族や友達になってるんだとか。
今日も【ポンコツ工房】で弟、妹が生み出されていく。ボクはそれを、棚の上から眺めてニコニコしている。
「ふむー」
棚の近くにある机に向かう人が、声と吐息を同時に吐いた。
「やっぱり“1号”に敵うものを作るのは難しいなー」
そう言って、ボクを見る。
「なんですかね、ビギナーズラックみたいなのがあるんですかね」
首をかしげるのは“お弟子さん”。ボクの生みの親である創造者 (父さん)の弟子だ。
「一発目の情熱みたいのがあるのかもなぁ。自分でもよくわからないけど」
「手が慣れると、技術的には上達するけど、でもなーって感じですよね」
「そうそう。そう考えると、最初の一歩ってのは大事なんだよなぁ」
「むしろここまで流行るとも思ってなかったですけどね」
「ホントだよ。最初は散々だったしさ」
「“ガラクタロボット”ってね」
「ポンコツとガラクタじゃ全然意味が違うっちゅーの。な」
「いや、僕調べましたけど、正しい意味」
「俺も」
父さんとお弟子さんが笑う。
「いまじゃ生産追いつかないくらいだもんなー」
父さんが壁際に置かれたモニターを見た。画面には個人情報がズラリ。全部【ポンコツロボット】の注文者だ。
「キットの販売始めてから、だいぶラクになったじゃないすか」
「不本意だけど仕方ないねー。よし、完成」
父さんが新しくできた【ロボ子】を見つめてうなずいた。
「こっちもできました。どうです?」
「うん、いいんじゃない? キミに似ていい男」
父さんの言葉にお弟子さんが照れ笑いを浮かべる。
「ちょっと休憩しない?」
「あ、じゃあ、僕コーヒー淹れます」
「ありがとう。それ終わったらキミも油さして、指の関節調整しようか」
「あざす」
お弟子さんは父さんの前にコーヒーカップを置いて、背中を向け座った。
「はい失礼」
背中側の服をめくると、四つのねじでとまった背板をはずして中の歯車を点検する。
「1号も動けるタイプにすれば良かったなー」
「それじゃ【ポンコツロボット】誕生しなかったと思いますよ? 僕みたいな大きさじゃ、さすがにたくさんは売れなかったでしょうし」
「確かに」
「まぁあとは、1号を改造して、あの大きさのまま動けるようにするー、とかですかね。多分、僕と同じように魂入れは成功しているようですし」
「声帯がないから喋れないだけってこと?」
「おそらく」
「はい、背中オーケー。次、指見せて」
「はい」
お弟子さんは椅子の上で反転して、手を差し出した。
「じゃあ、声帯だけでも先に付けるかなぁ」
「喋るようになったら、すぐに動いてほしくなりますって」
「そうだよなー。仕事の合間に部品作り進めるかぁ」
「僕も手伝います。“初めての弟”と、早く会話してみたいです」
「うん、じゃあ、無理だけはしないように計画を進めて行こう」
「はい」
父さんと、“お弟子さん”こと0号兄さんがボクを見てニコリと笑った。
ボクも早く兄さんみたいに動けるロボットになって、父さんのお手伝いが出来るように頑張ろう。
商品名が【ポンコツロボット・ロボ夫くん】だから、むしろポンコツでないとダメなのだ。
ボクには弟と妹がたくさんいる。名前はみんな【ロボ夫くん】か【ロボ子さん】。
大量生産品かと思いきや、老朽化したり破損したもの、中古品や廃棄品を組み合わせて作られた一点もの。
資材不足が叫ばれる昨今に誕生した、リサイクルを目的としたおもちゃ。それがボクら。
ありあわせの部品で作られた唯一無二の存在として、国内外から高く評価されている。
最近では一体分の材料が集められた【オリジナルポンコツロボ作成キット】も販売されて、ハンドメイダーやモデラ―の間で話題になっているらしい。
自宅で出た廃材を組み合わせて作るオリジナルの【ポンコツロボ】も生まれて、ボクの知らないところでもたくさんの弟、妹が誰かの家族や友達になってるんだとか。
今日も【ポンコツ工房】で弟、妹が生み出されていく。ボクはそれを、棚の上から眺めてニコニコしている。
「ふむー」
棚の近くにある机に向かう人が、声と吐息を同時に吐いた。
「やっぱり“1号”に敵うものを作るのは難しいなー」
そう言って、ボクを見る。
「なんですかね、ビギナーズラックみたいなのがあるんですかね」
首をかしげるのは“お弟子さん”。ボクの生みの親である創造者 (父さん)の弟子だ。
「一発目の情熱みたいのがあるのかもなぁ。自分でもよくわからないけど」
「手が慣れると、技術的には上達するけど、でもなーって感じですよね」
「そうそう。そう考えると、最初の一歩ってのは大事なんだよなぁ」
「むしろここまで流行るとも思ってなかったですけどね」
「ホントだよ。最初は散々だったしさ」
「“ガラクタロボット”ってね」
「ポンコツとガラクタじゃ全然意味が違うっちゅーの。な」
「いや、僕調べましたけど、正しい意味」
「俺も」
父さんとお弟子さんが笑う。
「いまじゃ生産追いつかないくらいだもんなー」
父さんが壁際に置かれたモニターを見た。画面には個人情報がズラリ。全部【ポンコツロボット】の注文者だ。
「キットの販売始めてから、だいぶラクになったじゃないすか」
「不本意だけど仕方ないねー。よし、完成」
父さんが新しくできた【ロボ子】を見つめてうなずいた。
「こっちもできました。どうです?」
「うん、いいんじゃない? キミに似ていい男」
父さんの言葉にお弟子さんが照れ笑いを浮かべる。
「ちょっと休憩しない?」
「あ、じゃあ、僕コーヒー淹れます」
「ありがとう。それ終わったらキミも油さして、指の関節調整しようか」
「あざす」
お弟子さんは父さんの前にコーヒーカップを置いて、背中を向け座った。
「はい失礼」
背中側の服をめくると、四つのねじでとまった背板をはずして中の歯車を点検する。
「1号も動けるタイプにすれば良かったなー」
「それじゃ【ポンコツロボット】誕生しなかったと思いますよ? 僕みたいな大きさじゃ、さすがにたくさんは売れなかったでしょうし」
「確かに」
「まぁあとは、1号を改造して、あの大きさのまま動けるようにするー、とかですかね。多分、僕と同じように魂入れは成功しているようですし」
「声帯がないから喋れないだけってこと?」
「おそらく」
「はい、背中オーケー。次、指見せて」
「はい」
お弟子さんは椅子の上で反転して、手を差し出した。
「じゃあ、声帯だけでも先に付けるかなぁ」
「喋るようになったら、すぐに動いてほしくなりますって」
「そうだよなー。仕事の合間に部品作り進めるかぁ」
「僕も手伝います。“初めての弟”と、早く会話してみたいです」
「うん、じゃあ、無理だけはしないように計画を進めて行こう」
「はい」
父さんと、“お弟子さん”こと0号兄さんがボクを見てニコリと笑った。
ボクも早く兄さんみたいに動けるロボットになって、父さんのお手伝いが出来るように頑張ろう。
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