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3/7『花粉とモテの関連性』
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なぜかこの時期だけモテる。
長年の謎だったんだけどようやくわかった。
花粉のせいで弱ってるからだ。
いつもの私は“シャキシャキ”というか“チャキチャキ”というか。仲の良い友達に言わせると“がさつ”らしい。
言いたいことは言っちゃうし、人のことバンバン叩くしおしゃべりだし。
それが本来の自分だから、そこを否定されちゃうとちょっと悲しい。
親戚に『黙ってれば美人』って言われてガチギレしたこともあるし、そういう、『女の子なんだから』みたいのそろそろやめない? 時代遅れだよと思う。
マスクしてるから気づかないだけで、鼻かみすぎて赤いしボロボロなんだけどなぁ。目元がかわいきゃいいんかね。
でもまぁ、いつもより呼吸が浅いから頭ボーッとするし、ダルくて力を入れるのもおっくうだから、優しくしてもらえるのはありがたいかな。なんてボーッと考えてたら時間が過ぎて行った。
ようやく春が終わって。
私はいつものシャキシャキ、チャキチャキした自分に戻る。そうそう、これこれ。あー、呼吸が楽!
うひょー! って叫びながらむやみに走り回りたい気分だけど、様子がおかしい人だと思われたくないからグッとこらえて学校へ行く。挨拶してきた男子たちは、私がマスクしてないのを見てガッカリしてた。
そうだよ、また“ガサツな私”に元通りだよ。
小学生の私だったら手に持った荷物でビシバシ叩いてたかもだけど、私ももう高校生。頭の中で歯をむき出して『いー!』ってするだけに留まる。なんて大人なんだろう!
軽い足取りで学校の敷地内へ。
右になにかの気配を感じてとっさに鞄でガードしたら、強い衝撃と共に地面に球体が落ちた。
「いって……!」
転がったのはサッカーボール。誰かが蹴ったやつが私めがけて飛んできたらしい。
「おいー」
鞄で避けてなかった頭直撃だよ。あっぶなー!
拾ったボールを蹴り返そうとしたら、飛んできた方向から誰か走ってきた。
「ごめん! ぶつかってない⁈ 大丈夫⁈」
慌てて来たのは見たことない顔。服装からしてサッカー部の人だ。
「うん……鞄は、若干壊れたっぽいけど」
留め具の部分にクリーンヒットしたようで、パカッと開いている。
「うわ! ごめんなさい! あの、それは弁償するので連絡先を……いや、怪我してないかが先か。痛いところとかは?」
「手がちょっと……」
衝撃を吸収したからか少し痺れてる。でも別に、骨が折れたとかそういう感じじゃ……
「!」
手中のボールが地面に落ちる。先輩が私の手を取ったから。
「わ、赤くなってる。ほんとごめん。冷やそう」
「あ、や、だ、大丈夫、です」
いつもなら手を引いて離れるだろうけど、なぜかそれができない。
この人の手、心地いい。
「そう? もしあとから痛くなったりしたら、絶対に言ってね」
「う、うん」
「連絡先……は、いまなにも持ってないから……学年とクラス、教えてもらっていいかな?」
「えっと、二年の……」
私の所属クラスを聞いたその人は自己紹介してボールを回収して、コートに戻っていった。
私はしばらくその場から動けなくて、先輩が去った方向をじっと見ていた。
「おーはよっ。どしたの? ボーッとして」
友人の声で我に返る。
「あ? や。なんでも」
「そ? マスクしないで平気なの? ウルウルしてるけど」
「えっ。ウルウル……してる?」
「してる。まだモテ期続行しそうな感じ」
「そ、そうかな……」
いまの自分は普段の自分と違う。もちろん、花粉症だった自分とも。
初恋
なんて二文字が脳内に浮かぶ。
どうしよう、私。先輩のこと、好きになったかも。
もし私がずっとウルウルの状態でいたら、ずっと“モテ期”のままで、先輩にも好きになってもらえるかな……。
その日を境にまたモテだしたんだけど、先輩以外に優しくされても、感謝するだけでドキドキはしなくて……。
はぁ。
思わず“アンニュイな溜息”が漏れる。
明日は先輩と約束した“新しいカバンを買いに行く”日。
あぁどうしよう。なに着て行こう。メイクとかしたほうがいいかなぁ。あ、でもメイク道具なんてもってない……。
はぁ。
溜息に見かねた友人がやってきた。
「なに? 恋?」
「えっ、う」
「わっかりやすいなー。相談乗らせてよ。そういう話だいすき」
「……茶化さない?」
「茶化すわけないでしょ! とりあえず今日の帰り、どっか寄ろ」
「うん」
そうして、私は幼馴染に初めての恋の相談を持ち掛けることになった。
お小遣いをはたいて服とかメイク道具とかをそろえてレクチャー受けて、いざ出陣。待ち合わせの場所には少し早く着いてしまった。
深呼吸して、記憶を呼び戻す。
花粉の時期の自分を見習って、少しでも可愛く思ってもらえるように。
長年の謎だったんだけどようやくわかった。
花粉のせいで弱ってるからだ。
いつもの私は“シャキシャキ”というか“チャキチャキ”というか。仲の良い友達に言わせると“がさつ”らしい。
言いたいことは言っちゃうし、人のことバンバン叩くしおしゃべりだし。
それが本来の自分だから、そこを否定されちゃうとちょっと悲しい。
親戚に『黙ってれば美人』って言われてガチギレしたこともあるし、そういう、『女の子なんだから』みたいのそろそろやめない? 時代遅れだよと思う。
マスクしてるから気づかないだけで、鼻かみすぎて赤いしボロボロなんだけどなぁ。目元がかわいきゃいいんかね。
でもまぁ、いつもより呼吸が浅いから頭ボーッとするし、ダルくて力を入れるのもおっくうだから、優しくしてもらえるのはありがたいかな。なんてボーッと考えてたら時間が過ぎて行った。
ようやく春が終わって。
私はいつものシャキシャキ、チャキチャキした自分に戻る。そうそう、これこれ。あー、呼吸が楽!
うひょー! って叫びながらむやみに走り回りたい気分だけど、様子がおかしい人だと思われたくないからグッとこらえて学校へ行く。挨拶してきた男子たちは、私がマスクしてないのを見てガッカリしてた。
そうだよ、また“ガサツな私”に元通りだよ。
小学生の私だったら手に持った荷物でビシバシ叩いてたかもだけど、私ももう高校生。頭の中で歯をむき出して『いー!』ってするだけに留まる。なんて大人なんだろう!
軽い足取りで学校の敷地内へ。
右になにかの気配を感じてとっさに鞄でガードしたら、強い衝撃と共に地面に球体が落ちた。
「いって……!」
転がったのはサッカーボール。誰かが蹴ったやつが私めがけて飛んできたらしい。
「おいー」
鞄で避けてなかった頭直撃だよ。あっぶなー!
拾ったボールを蹴り返そうとしたら、飛んできた方向から誰か走ってきた。
「ごめん! ぶつかってない⁈ 大丈夫⁈」
慌てて来たのは見たことない顔。服装からしてサッカー部の人だ。
「うん……鞄は、若干壊れたっぽいけど」
留め具の部分にクリーンヒットしたようで、パカッと開いている。
「うわ! ごめんなさい! あの、それは弁償するので連絡先を……いや、怪我してないかが先か。痛いところとかは?」
「手がちょっと……」
衝撃を吸収したからか少し痺れてる。でも別に、骨が折れたとかそういう感じじゃ……
「!」
手中のボールが地面に落ちる。先輩が私の手を取ったから。
「わ、赤くなってる。ほんとごめん。冷やそう」
「あ、や、だ、大丈夫、です」
いつもなら手を引いて離れるだろうけど、なぜかそれができない。
この人の手、心地いい。
「そう? もしあとから痛くなったりしたら、絶対に言ってね」
「う、うん」
「連絡先……は、いまなにも持ってないから……学年とクラス、教えてもらっていいかな?」
「えっと、二年の……」
私の所属クラスを聞いたその人は自己紹介してボールを回収して、コートに戻っていった。
私はしばらくその場から動けなくて、先輩が去った方向をじっと見ていた。
「おーはよっ。どしたの? ボーッとして」
友人の声で我に返る。
「あ? や。なんでも」
「そ? マスクしないで平気なの? ウルウルしてるけど」
「えっ。ウルウル……してる?」
「してる。まだモテ期続行しそうな感じ」
「そ、そうかな……」
いまの自分は普段の自分と違う。もちろん、花粉症だった自分とも。
初恋
なんて二文字が脳内に浮かぶ。
どうしよう、私。先輩のこと、好きになったかも。
もし私がずっとウルウルの状態でいたら、ずっと“モテ期”のままで、先輩にも好きになってもらえるかな……。
その日を境にまたモテだしたんだけど、先輩以外に優しくされても、感謝するだけでドキドキはしなくて……。
はぁ。
思わず“アンニュイな溜息”が漏れる。
明日は先輩と約束した“新しいカバンを買いに行く”日。
あぁどうしよう。なに着て行こう。メイクとかしたほうがいいかなぁ。あ、でもメイク道具なんてもってない……。
はぁ。
溜息に見かねた友人がやってきた。
「なに? 恋?」
「えっ、う」
「わっかりやすいなー。相談乗らせてよ。そういう話だいすき」
「……茶化さない?」
「茶化すわけないでしょ! とりあえず今日の帰り、どっか寄ろ」
「うん」
そうして、私は幼馴染に初めての恋の相談を持ち掛けることになった。
お小遣いをはたいて服とかメイク道具とかをそろえてレクチャー受けて、いざ出陣。待ち合わせの場所には少し早く着いてしまった。
深呼吸して、記憶を呼び戻す。
花粉の時期の自分を見習って、少しでも可愛く思ってもらえるように。
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