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1/5『シンデレラじゃない私』
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小さい頃から思ってた。シンデレラって結局可愛いから王子様に見初められたんでしょ? って。白雪姫も茨姫もそう。だからもし私が物語の主人公になっても、きっと誰も気に留めない。
本屋で懐かしくなって絵本を手に取ったら、嫌な気持ちまで蘇ってしまった。本を棚に戻し、当初の目的であった漫画を探しに行く途中、何か光った気がして、いつもは行かないコーナーへ足が向く。
気づくと私の手には一箱の……なにこれ。
商品名が異国の文字で読み取れない。裏返したら翻訳文の商品タグが貼られていた。【オラクルカード】という占いの道具らしい。
普段なら絶対買わないけど……まぁいっかって漫画と一緒に会計した。
家に帰って早速開封する。
「わ、きれい」
上部に数字、下部に文字、中央に絵が描かれた縦15センチ、横10センチ程度のカードは眺めるだけで楽しい。
絵柄を全部見て、一番気に入ったカードを中身がないまま置かれていた写真立てに入れて飾る。今になってちょっと高い買い物だったって気がしたけど、お気に入りになったしまぁいいやって満足しながらベッドに横たわり、一緒に買った待望の新刊を読み耽った。
……ん? ここどこ? あ、部屋か。なんか暗いな。あ、あっち光ってる。行ってみよ。
『よぅ』
「誰?」
『お前が飾ったカードだよ』
「あぁ。確かにそんな服装だった気が」
『お前、人間は顔で判断されると考えていたな』
「え? あ、絵本の話?」
『そうだ』
「うん。でも努力してない私も悪いし」
『モテたいか』
「うーん、人生で一回くらいは?」
『そうか。なら叶えてやる』
「え、なんで」
『箱の中は窮屈でな。今もガラスに挟まれてアレだが、暗いよりはマシだ』
「じゃあガラス外すよ」
『そうか』
じゃあ、とその人は持っていた棒を私にかざした。あ、この人魔法使いだったんだ。
『これでいい』
魔法使いは満足げに頷いて『起きたらガラス外し、頼んだぞ』と言い残し光の中へ去って行った。
……夢。にしては記憶鮮明すぎ。起きあがり写真立てを見る。そうそう、この人だった。夢を信じるわけじゃないけど約束は約束だし、とガラスを外して飾り直した。
なにしてんだか。苦笑しながら身支度を整える。
相手の好みの顔に見える魔法を私にかけたと魔法使いは言っていた。鏡で見たらいつもと同じ顔だったけど……本当だったら面白いなと思いつつ登校したら、すれ違う人たちが明らかに私を見てる。
これってまさか魔法のせい?
教室で席に着くや寄って来た男子たちに名前を聞かれて(半年以上同じクラスなのにマジか)って思ったけど、名前を言ったら「別人じゃん」って驚かれた。本当に見る人の好みの顔に見えてるんだ!
それからの私は、めっちゃモテた。
荷物を持つと誰かが運んでくれる。スマホが毎日忙しそうに稼働する。帰る支度中、我先にと寄ってきた男子から遊びの誘いを受ける。その繰り返し。
今日も昨日とは違う男子数人と遊びに行って、家の近くまで送ってもらった。家の前でバイバイして、ドアを閉めるや貼り付けていた笑顔が消える。
モテるのしんどい。向いてない。
ねー魔法使い。私は日課になっている報告を始めた。
モテるってどんなかわかった。かなり体力と気力と精神力を消耗する。誰でもいい訳じゃなくて、私が好きだと思える人に好きって思われたいだけだった。童話の中のお姫様たちは、王子様との需要と供給が一致しただけなんだね。
そう伝えたら、その日の夜、夢の中にまた魔法使いが現れた。
『体験してわかったかい?』
「うん。たくさんの人に好かれるの、嬉しいけど疲れるや」
モテるには素質が必要だと思い知らされた。って言ったら魔法使いは笑って、そして魔法を解いてくれた。これでもう元通り。モテない私、お帰りなさい。
朝、目が覚めていつも通り学校へ。昨日まで良くしてくれてた男子たちは不思議そうに私を見て、一部の人はすぐに私を構わなくなり、他の人たちもやがて離れて行った。
それからの私は、モテなくなった。
だけどなぜか、魔法がかかっていた時と変わらない男子がいた。なぜだか不思議だったけど一緒にいると楽しくて、すぐに惹かれた。
親密さも増したある日、その人から告白された。ずっと前から好きでした、って。
ずっと前って、いつ? って聞いたら、入学した頃からだって。私が急にモテだしたことに焦って勇気を出してくれたって。
でも私、可愛くないよ? って言ったら彼は真面目に、なに言ってんの、めっちゃ可愛いよ、って。
そうか、見る人によっては可愛く見えてるんだ。
そう気づいたらなんだか自信がわいてきて、自分を磨くようになった。そしたらまたモテだしたけど、彼氏いるからってお断りする。
顔は心持ちと努力で変わるんだって知った、高二の夏の話。
本屋で懐かしくなって絵本を手に取ったら、嫌な気持ちまで蘇ってしまった。本を棚に戻し、当初の目的であった漫画を探しに行く途中、何か光った気がして、いつもは行かないコーナーへ足が向く。
気づくと私の手には一箱の……なにこれ。
商品名が異国の文字で読み取れない。裏返したら翻訳文の商品タグが貼られていた。【オラクルカード】という占いの道具らしい。
普段なら絶対買わないけど……まぁいっかって漫画と一緒に会計した。
家に帰って早速開封する。
「わ、きれい」
上部に数字、下部に文字、中央に絵が描かれた縦15センチ、横10センチ程度のカードは眺めるだけで楽しい。
絵柄を全部見て、一番気に入ったカードを中身がないまま置かれていた写真立てに入れて飾る。今になってちょっと高い買い物だったって気がしたけど、お気に入りになったしまぁいいやって満足しながらベッドに横たわり、一緒に買った待望の新刊を読み耽った。
……ん? ここどこ? あ、部屋か。なんか暗いな。あ、あっち光ってる。行ってみよ。
『よぅ』
「誰?」
『お前が飾ったカードだよ』
「あぁ。確かにそんな服装だった気が」
『お前、人間は顔で判断されると考えていたな』
「え? あ、絵本の話?」
『そうだ』
「うん。でも努力してない私も悪いし」
『モテたいか』
「うーん、人生で一回くらいは?」
『そうか。なら叶えてやる』
「え、なんで」
『箱の中は窮屈でな。今もガラスに挟まれてアレだが、暗いよりはマシだ』
「じゃあガラス外すよ」
『そうか』
じゃあ、とその人は持っていた棒を私にかざした。あ、この人魔法使いだったんだ。
『これでいい』
魔法使いは満足げに頷いて『起きたらガラス外し、頼んだぞ』と言い残し光の中へ去って行った。
……夢。にしては記憶鮮明すぎ。起きあがり写真立てを見る。そうそう、この人だった。夢を信じるわけじゃないけど約束は約束だし、とガラスを外して飾り直した。
なにしてんだか。苦笑しながら身支度を整える。
相手の好みの顔に見える魔法を私にかけたと魔法使いは言っていた。鏡で見たらいつもと同じ顔だったけど……本当だったら面白いなと思いつつ登校したら、すれ違う人たちが明らかに私を見てる。
これってまさか魔法のせい?
教室で席に着くや寄って来た男子たちに名前を聞かれて(半年以上同じクラスなのにマジか)って思ったけど、名前を言ったら「別人じゃん」って驚かれた。本当に見る人の好みの顔に見えてるんだ!
それからの私は、めっちゃモテた。
荷物を持つと誰かが運んでくれる。スマホが毎日忙しそうに稼働する。帰る支度中、我先にと寄ってきた男子から遊びの誘いを受ける。その繰り返し。
今日も昨日とは違う男子数人と遊びに行って、家の近くまで送ってもらった。家の前でバイバイして、ドアを閉めるや貼り付けていた笑顔が消える。
モテるのしんどい。向いてない。
ねー魔法使い。私は日課になっている報告を始めた。
モテるってどんなかわかった。かなり体力と気力と精神力を消耗する。誰でもいい訳じゃなくて、私が好きだと思える人に好きって思われたいだけだった。童話の中のお姫様たちは、王子様との需要と供給が一致しただけなんだね。
そう伝えたら、その日の夜、夢の中にまた魔法使いが現れた。
『体験してわかったかい?』
「うん。たくさんの人に好かれるの、嬉しいけど疲れるや」
モテるには素質が必要だと思い知らされた。って言ったら魔法使いは笑って、そして魔法を解いてくれた。これでもう元通り。モテない私、お帰りなさい。
朝、目が覚めていつも通り学校へ。昨日まで良くしてくれてた男子たちは不思議そうに私を見て、一部の人はすぐに私を構わなくなり、他の人たちもやがて離れて行った。
それからの私は、モテなくなった。
だけどなぜか、魔法がかかっていた時と変わらない男子がいた。なぜだか不思議だったけど一緒にいると楽しくて、すぐに惹かれた。
親密さも増したある日、その人から告白された。ずっと前から好きでした、って。
ずっと前って、いつ? って聞いたら、入学した頃からだって。私が急にモテだしたことに焦って勇気を出してくれたって。
でも私、可愛くないよ? って言ったら彼は真面目に、なに言ってんの、めっちゃ可愛いよ、って。
そうか、見る人によっては可愛く見えてるんだ。
そう気づいたらなんだか自信がわいてきて、自分を磨くようになった。そしたらまたモテだしたけど、彼氏いるからってお断りする。
顔は心持ちと努力で変わるんだって知った、高二の夏の話。
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