68 / 69
Chapter.68
しおりを挟む
熱っぽい鹿乃江の唇を、紫輝が受け入れた。
静かな室内に小さく水音が漂う。
永遠とも一瞬ともつかない時間を経て唇を離し、
「すき……」
紫輝を見つめて鹿乃江がぽつりと言う。
紫輝は目を細めて鹿乃江の頬を撫で、顔を引き寄せてもう一度深く唇を重ねた。
離した唇から熱い吐息が漏れる。
紫輝は鹿乃江の身体を起こすと、自分も起き上がって座り直し、
「……もう限界っす……」
苦しそうに呟くと、ソファから降りて鹿乃江を抱え上げた。
「ひゃっ」
突然の浮遊感に鹿乃江が小さく叫んで、紫輝の首元にしがみつく。危ないのがわかるから、下手に動くこともできない。
「し、紫輝くん」
「はい」
「自分で歩けるから」
「それはわかってますよ」
「テレビ、電気、点けっぱなし」
「そのうち勝手に消えます」
言いながら笑って、寝室のドアを開ける。
「紫輝くん」
突然の展開に動転した様子で駄々をこねるように呼びかけるが、紫輝は答えない。そのままベッドに鹿乃江をおろして、ゆっくり押し倒した。
「嫌なことしたら、止めてください」
疑問形ではないその言葉に、まっすぐで真摯な視線に、強い意志が込められている。
強く脈打つ鼓動に甘い期待が混じりあって、どうにかなりそうだ。
抵抗なんて、するわけない。
雨粒のように降り注ぐキスと甘い言葉、それからの紫輝の行動を、鹿乃江はすべて、受け入れた。
* * *
静かな室内に小さく水音が漂う。
永遠とも一瞬ともつかない時間を経て唇を離し、
「すき……」
紫輝を見つめて鹿乃江がぽつりと言う。
紫輝は目を細めて鹿乃江の頬を撫で、顔を引き寄せてもう一度深く唇を重ねた。
離した唇から熱い吐息が漏れる。
紫輝は鹿乃江の身体を起こすと、自分も起き上がって座り直し、
「……もう限界っす……」
苦しそうに呟くと、ソファから降りて鹿乃江を抱え上げた。
「ひゃっ」
突然の浮遊感に鹿乃江が小さく叫んで、紫輝の首元にしがみつく。危ないのがわかるから、下手に動くこともできない。
「し、紫輝くん」
「はい」
「自分で歩けるから」
「それはわかってますよ」
「テレビ、電気、点けっぱなし」
「そのうち勝手に消えます」
言いながら笑って、寝室のドアを開ける。
「紫輝くん」
突然の展開に動転した様子で駄々をこねるように呼びかけるが、紫輝は答えない。そのままベッドに鹿乃江をおろして、ゆっくり押し倒した。
「嫌なことしたら、止めてください」
疑問形ではないその言葉に、まっすぐで真摯な視線に、強い意志が込められている。
強く脈打つ鼓動に甘い期待が混じりあって、どうにかなりそうだ。
抵抗なんて、するわけない。
雨粒のように降り注ぐキスと甘い言葉、それからの紫輝の行動を、鹿乃江はすべて、受け入れた。
* * *
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……
百谷シカ
恋愛
カメロン侯爵家で開かれた舞踏会。
楽しい夜が明けて、うららかな朝、幼馴染モイラの部屋を訪ねたら……
「えっ!?」
「え?」
「あ」
モイラのベッドに、私の婚約者レニー・ストックウィンが寝ていた。
ふたりとも裸で、衣服が散乱している酷い状態。
「どういう事なの!?」
楽しかった舞踏会も台無し。
しかも、モイラの部屋で泣き喚く私を、モイラとレニーが宥める始末。
「触らないで! 気持ち悪い!!」
その瞬間、私は幼馴染と婚約者を失ったのだと気づいた。
愛していたはずのふたりは、裏切り者だ。
私は部屋を飛び出した。
そして、少し頭を冷やそうと散歩に出て、美しい橋でたそがれていた時。
「待て待て待てぇッ!!」
人生を悲観し絶望のあまり人生の幕を引こうとしている……と勘違いされたらしい。
髪を振り乱し突進してくるのは、恋多き貴公子と噂の麗しいアスター伯爵だった。
「早まるな! オリヴィア・レンフィールド!!」
「!?」
私は、とりあえず猛ダッシュで逃げた。
だって、失恋したばかりの私には、刺激が強すぎる人だったから……
♡内気な傷心令嬢とフェロモン伯爵の優しいラブストーリー♡
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる