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Chapter.59
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攷斗が着替えている間に味見をして料理を仕上げる。
女性にしては背が高い部類に入るひぃなでも腰をかがめることなく使える高さのキッチンは、使い勝手が良く体に負担もかからないので有難い。
(小柄な人だったらずっと背伸びかな。ヒールが高いスリッパとか履けばなんとかなるか)
よもや内装を決める際、一緒に住む相手をひぃなで想定していたとは気付きもしないし、攷斗も言う気はなさそうだ。
「手伝うよー」
着替えから戻ってきた攷斗は、いつもの様子でひぃなに声をかける。
「ありがとー。カウンターの上の物を運んでください」
「了解」
リビング側に回って、攷斗がカウンターの上を確認した。
今日の献立は肉じゃがにほうれん草とベーコンのソテー。しめじの炊き込みご飯に中華風のわかめスープだ。
「あー、今日のごはんも旨そう」
言ったと同時にお腹がグゥっと鳴る。
「反応が素直だよね」
その音が耳に届いていたひぃなが笑う。
「脳と体が直結なんだよね」
「いいと思う。瞬発力ありそう」
手を洗い終えたひぃなが、カウンターに残った皿をテーブルに運ぶ。ソファ横でエプロンを外して
「お待たせしました」
ソファに座り、攷斗に声をかけた。
「いえいえ。では」
手を合わせるのを合図に
「「いただきます」」
二人で声を揃えて、食事を始めた。
先ほどの気まずさはなかったことにして、団らんの時間を過ごす。
もう何年も前から一緒に住んでいるような感覚が、不思議だし気恥ずかしい。そして、愛おしくてたまらなく、もう、手放したくない。
そんな想いを抱きながら、今日も一日を終えた。
* * *
女性にしては背が高い部類に入るひぃなでも腰をかがめることなく使える高さのキッチンは、使い勝手が良く体に負担もかからないので有難い。
(小柄な人だったらずっと背伸びかな。ヒールが高いスリッパとか履けばなんとかなるか)
よもや内装を決める際、一緒に住む相手をひぃなで想定していたとは気付きもしないし、攷斗も言う気はなさそうだ。
「手伝うよー」
着替えから戻ってきた攷斗は、いつもの様子でひぃなに声をかける。
「ありがとー。カウンターの上の物を運んでください」
「了解」
リビング側に回って、攷斗がカウンターの上を確認した。
今日の献立は肉じゃがにほうれん草とベーコンのソテー。しめじの炊き込みご飯に中華風のわかめスープだ。
「あー、今日のごはんも旨そう」
言ったと同時にお腹がグゥっと鳴る。
「反応が素直だよね」
その音が耳に届いていたひぃなが笑う。
「脳と体が直結なんだよね」
「いいと思う。瞬発力ありそう」
手を洗い終えたひぃなが、カウンターに残った皿をテーブルに運ぶ。ソファ横でエプロンを外して
「お待たせしました」
ソファに座り、攷斗に声をかけた。
「いえいえ。では」
手を合わせるのを合図に
「「いただきます」」
二人で声を揃えて、食事を始めた。
先ほどの気まずさはなかったことにして、団らんの時間を過ごす。
もう何年も前から一緒に住んでいるような感覚が、不思議だし気恥ずかしい。そして、愛おしくてたまらなく、もう、手放したくない。
そんな想いを抱きながら、今日も一日を終えた。
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